美しい映像と膨大な台詞で紡がれる、父と息子の物語。

Culture 2019.11.28

父と息子の確執の長旅を、胸に沁みる場へ誘う書物。

『読まれなかった小説』

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作家志望のシナンはトロイ遺跡のそばの故郷に帰り、デビュー作の出版を画策する。だが、地元の顔役らが望むのは郷土愛を謳う本。故郷に必要とされない者の物語など一笑に付されるだけ。『雪の轍』で世界に躍り出たトルコの傑物は、身内にも故郷にもはた迷惑な夢想家の教師の父をシナンの脇に置く。そして、激烈な口論の末、父子が精神的な友だと気付かせる役目を、シナンの「読まれない本」(昔、ニーチェは自著をこう銘した)が果たすという麗しい挿話を用意する。太古と現在を結ぶ夢の遍路のように、果樹や井戸を配置して。

『読まれなかった小説』
監督・共同脚本/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
2018年、トルコ・フランス・ドイツ・ブルガリア・マケドニア・ボスニア・スウェーデン・カタール映画 189分
配給/ビターズ・エンド
11月29日より、新宿武蔵野館ほか全国にて公開
www.bitters.co.jp/shousetsu

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*「フィガロジャポン」2020年1月号より抜粋

réalisation : TAKASHI GOTO

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