年末年始は海外ドラマ三昧。#02 【海外ドラマ】Apple TV+最注目作は、ポップなコスチューム劇。

Culture 2019.12.02

11月2日に日本でもサービスを開始したApple TV+。注目のオリジナルシリーズは長らく謎に包まれていたが、4本のシリーズのシーズン2の配信がさっそく決定した。そのうちの1本が、歌手で女優のヘイリー・スタインフェルドが19世紀に生きた実在の女性詩人、エミリ・ディキンスンを演じる「ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱~」(1話約30分、全10話)だ。時代ものの詩人の話かあ……と堅苦しく考えることなかれ! これがとびっきりポップで現代的な、Z世代(1990年代後半〜2000年代初頭に生まれた人々の世代)の青春ドラマ風なのだ。

191125-Dickinson_Unit_Photo_02.jpg エミリ・ディキンスンを新解釈で演じるヘイリー・スタインフェルド。エミリの詩にインスパイアされたヘイリーによる主題歌「Afterlife」も要チェック!

「ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~」(2019年~)

のっけから、この風変わりで斬新な世界観は私たちを魅了する。エミリは裕福な家に生まれたが、女性の役割として朝の4時に水汲みに行かねばならない。妹ラヴィニアに今日は姉さんの番だと言われ、エミリは兄オースティンに行かせればいいと言い返す。するとラヴィニアは言う。「無理よ、男の子だから」。エミリは「ほんとやってらんないっ」と不満をあらわにする。この冒頭だけで会話は完璧に現代的であること、またどれほど徹底した男尊女卑の時代にエミリーが生きたかがわかるはず。そしてたたみかけるように、いまどきのZ年代ドラマには欠かせないビリー・アイリッシュを筆頭に現代の音楽が次々と流れる。題材との大胆なミスマッチ感が、本作の大きな魅力だ。

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エミリの幻想の中のセラピスト的な存在である“DEATH”。ラッパーのウィズ・カリファが独特の存在感を発揮。

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大学の講義にもぐりこむために、男装するエミリと親友スーがコルセットを脱いではしゃぐシーンでかかるのは、リゾの「Boys」。親が留守で夜に友達を集めてパーティをしようと盛り上がると、TJRの「We Wanna Party」が鳴り響く。スーと同じベッドに寝ている時に、エミリが彼女の手によって初めて性的な喜びを知るくだりでは、Mitskiの「Your Best American Girl」の美しい旋律が流れる。そこにエミリのモノローグとともに「私は火山を知らない」から始まる詩が、さらさらと金色の文字で画面に浮かび上がっては消えていく。この一連のシークエンスは、19世紀と現代が完璧に融合した、まさに新しい時代の表現といった感じ。

「この時代に女性が詩人だなんてありえない」「男性と同じように大学で勉強するなんてもってのほか」という徹底した旧時代の価値観に、エミリはとことん苦しめられている。だから本作は全編にわたって、わかりやすくフェミニズムのメッセージを発信する。でもそこには悲壮感はなく、深刻になりすぎることはない。エミリが感じる疑問はごく自然でシンプルなものだし、本作の映像表現はどれもが純粋に楽しいものだから。なによりヘイリー自身が持つ伸びやかで、生命力にあふれたポジティブなオーラが、きっとあなたを笑顔にしてくれるはず。

191125-Dickinson_Unit_Photo_11.jpg兄オースティン(エイドリアン・ブレイク・エンスコー、左)と親友スー(エラ・ハント、右)が結婚するという話に、動揺を隠せないエミリ。

「ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~」予告編。

「ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~」

原題/Dickinson
クリエイター/アレナ・スミス
出演/ヘイリー・スタインフェルド、トビー・ハス、ジェーン・クラコウスキー、エラ・ハント、エイドリアン・ブレイク・エンスコーほか
Apple TV+にてシーズン1独占配信中

 

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texte:SACHIE IMA

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