小川洋子が紡ぐ、死者たちに寄り添うレクイエム。
Culture 2019.12.29
小川洋子の7年ぶりの長編小説。
『小箱』
小川洋子著 朝日新聞出版刊 ¥1,650
郷土史資料館にあったガラスの箱には、亡くなった子どもたちの持ち物が保存されている。遺された家族は、成長にあわせて、それを入れ替える。「私」はその管理者だ。足の指の骨で作った風鈴や髪の毛を使った竪琴を耳たぶにかけると、風がそっと奏でていく。密やかな音に耳を澄ます「一人一人の音楽会」。死を悼む行為が、寓話のような語り口でひとつひとつ儀式化されることで、この小説自体がもの言わぬ死者に寄り添う静謐なレクイエムになっている。
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*「フィガロジャポン」2020年1月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI