世界戦を目前に恋に落ちたボクサーを、瑞々しく描く。

Culture 2020.01.16

衆目注視の世界戦を控えた、小さな挑戦者の艶めく時間。

『オリ・マキの人生で最も幸せな日』

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フィンランド史上初、ボクシングの世界タイトルマッチが1962年に催される。挑戦者オリ・マキは人のいい元パン屋。トレーニングも減量も容赦ない。とはいえ、『ロッキー』のような熱血スポーツ映画ではない。国を挙げて大騒動の最悪のタイミングで同郷の田舎娘と彼は恋に落ち、一時的に失踪する。国中を裏切るようなやるせなさと、生涯の伴侶を見いだすささやかな幸福感。公私にまたがる両極の気分が、試合当日の時間経過の中でいや増していく。ふたりの睦み合いはきらめく水しぶきのよう。

『オリ・マキの人生で最も幸せな日』
監督・脚本/ユホ・クオスマネン 
2016年、フィンランド・ドイツ・スウェーデン映画 92分
配給/ブロードウェイ
1月17日より、新宿武蔵野館ほか全国にて公開
https://olli-maki.net-broadway.com

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*「フィガロジャポン」2020年2月号より抜粋

réalisation : TAKASHI GOTO

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