Things to Do! 2020

河瀨直美と蜷川実花が語る、未来のこと。

特集

2020年以降、どんな世の中を私たちは生きていくのか。2人の女性クリエイターに、これからの未来について話を聞いた。


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河瀨直美
映画監督


1997年に『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞。生まれ育った奈良を拠点に活動する。「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」公式映画監督に就任。

一生懸命考えたり想像しながら、
自分で見つけていく楽しさってあると思う

オリンピック公式映画監督をやって、さまざまなアスリートの方と接する機会をいただいたのですが、彼らが紡ぐ言葉は人生の気概に満ちていて、パワーを貰うことができるんです。身体を動かすと前向きになれますよね。いまの時代、そういう機会は少ないし、社会的な問題が減る糸口にもなるような気がしていて。私自身、マイナースポーツの普及にもっと関わっていきたいと考えています。また、オリンピックやスポーツの振興を通じて、世代間の繋がりが強まったらいいなと思っています。昔はおじいちゃんやおばあちゃんから話を聞いて人生の指針としていたのに、いまは世代が分断しています。2015年公開の映画『あん』は、三世代の繋がりの話を描きました。子どもが小さかった時、地域で「お話の会」というものを企画して主宰しました。子育てが一段落した世代の人が自分の言葉で子どもたちに話を聞かせるものです。視覚に頼るのではなく、人の話を聞き、イメージすることで、読解力や想像力が養われる。最初は落ち着きのなかった子が、そのうちきちんと聞くようになる。世代間の繋がりにもなるので、こういう場は大切だと思います。いまの時代は情報過多です。たとえばテレビは、映像があるのに文字情報も載せる。そして受け手は、処理すべき情報がありすぎて疲れてしまう。足りないくらいのところで、一生懸命考えたり想像したりしながら、自分から見つけていく楽しさってあると思うんです。欧米では美術館がこの役割を担っています。アートが日常生活の延長にあるということは、そういう意味でも大切だと感じます。

編集の拠点をパリに移したこともあり、2019年は1カ月に1回は海外へ行っていました。今年はもっと増えると思います。いまは種を蒔いている時期。ポンピドゥー・センターでの展覧会で初めてインスタレーションをやったのですが、今年はフランスを拠点にヨーロッパでの活動を進めていきたいなと、わくわくしています。フランスに行って感じたのは、私がここ10年近くコツコツ作り続けてきたものが、芸術の都パリで認めてもらったということ。2020年は、これをもっと深く掘り下げていけたらと思っています。芸術は心が豊かになります。芸術に触れて生きる喜びを見いだす──この感覚を、もっと多くの人に抱いてもらいたいと思っています。

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蜷川実花 
写真家・映画監督

木村伊兵衛写真賞ほか受賞多数。個展『蜷川実花展—虚構と現実の間に—』が全国の美術館を巡回中。最新作となるNetflixオリジナルドラマ「FOLLOWERS」が、2/27より世界190カ国で配信中。

何かを選択する時に、
自分を信じきれるだけの努力をする

いまをどれだけ真剣に生きるか、につきると思います。未来は、いまの10分の積み重ねの先にあり、選択肢が違えば、未来も変わる。そのために大切なのは、己をいかに持つかということ。何を大切にして、何をかっこ悪いと思うのかといった“柱”のようなものです。たとえば写真ですが、写すにも写るにも、その人の生き方が現れてきます。たとえば私はフリーペーパー「GO Journal」でパラアスリートを撮影させて頂いているんですが、みなさん何かを乗り越えた強さと存在感があり本当にかっこいい。そのかっこよさ、美しさに、誰もがアッと驚く。「かっこいい」「美しい」というシンプルな事柄は、あらゆる境界を越えていくのだなと、私自身ハッとさせられました。

写真はシャッターを切る自分の感情が優位に立つ部分がありますが、映像はそれに加えて言葉が重要。この2年間で『Diner ダイナー』『人間失格』の2本の映画を製作しました。映像は関わっている人数も多く、出演者やスタッフのみなと言語で繋がっていくので、自分と向き合い、思考を固め、自分の深いところを掘る作業が必要なんです。そこで改めて感じたのは、幸福は人それぞれであるということ。富、地位、家族、容姿……、それらを持っていても、その人が幸せとは限らない。仮に人からは不幸そうに見えていても本人が「私は幸せだ」と思ったら、それがすべてだなと。いまは情報量が増え、振り回されやすい時代。たとえばSNSのフォロワー数、いいね! 数……、さまざまなことが数値化されています。関係ないと思っていても、やはり引っかかってしまう。そういった情報に踊らされないためには、自分の物差しをきちんと持って、取捨選択することが重要だと思います。何が自分にとってかっこよくて、かっこ悪いかを追求して、一歩ふみ出す少しの勇気を持てば狭い世界から飛び出せるはず。何かを選択する時に、自分を信じきれるだけの努力をする。私はそういうふうに生きています。

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Things to Do! 2020
世界はしてみたいコトであふれている。

いよいよ2020年。新しい年にやってみたいこと、目を向けてみたいことがたくさんある。トレンドがガラリと変わるファッションとメイク、新しい旅先や
おいしいレストランの発掘、部屋の模様替え、これから出合う本や映画……2020年という年を楽しみながら、好奇心のままに、まだ見ぬ世界への冒険へと繰り出そう。

 

『フィガロジャポン』2020年3月号より抜粋
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蜷川実花が世界へ発信! リアルで新しい東京の女性像。

interview et texte:AKI MAEKAWA (MIKA NINAGAWA), SATOMI MATSUMARU (NAOMI KAWASE)

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