元気になるエンタメ。#06 「アート・オブ・デザイン」がひも解く、異才たちの思考回路。
Culture 2020.04.28
人々を魅了する作品やプロジェクトは、どのようにして生まれるのか? アーティストやクリエイターの頭の中を探る知的エンターテインメント、「アート・オブ・デザイン」の魅力を解剖。
「アート・オブ・デザイン」(2017年~)
各分野で活躍するアーティストやデザイナー、クリエイターたち。その無限の可能性に満ちた創造性は、いかにして、どのような形で人々の元に届くのか? その思考過程や独自の哲学とは。各話ひとりのアーティストに密着したドキュメンタリーシリーズ「アート・オブ・デザイン」は、誰にとってもこの世界の見方が一変するような、驚きと気付きをもたらしてくれる刺激的な番組だ。
『ドゥ・ザ・ライト・シング』『アミスタッド』から『ルディ・レイ・ムーア』まで、素晴らしい衣装デザインで知られるルース・E・カーター。スパイク・リー監督や俳優サミュエル・L・ジャクソンほか、関係者も登場して衣装の魅力を語る。シーズン2第3話「ルース・カーター:衣装デザイナー」より。
たとえば『ブラックパンサー』でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したルース・E・カーター。衣装デザイナーと一口に言うけれど、独創的で登場人物のキャラクターを表しながらも、控えめで、それが“衣装”であることを感じさせないデザインを生み出すとは、どういうことなのか。時代背景を徹底的に調べ、日常的に往来の人々をよく観察し、イマジネーションを膨らませながら、俳優が着心地の良い服を作る。その秘訣のひとつは“共感力”だとルースは言う。衣装デザインから広がる人間に対する探究心に、単なる“衣装”を超えたデザインの芸術性にあらためて思いを馳せる。
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玩具会社「Heroes Will Rise」を設立したキャス・ホルマンの代表作のひとつ「Geemo(ジーモ)」。大人でも遊んでみたくなる! シーズン2第4話「キャス・ホルマン:遊べるデザイン」より。
キャス・ホルマンが語る「遊べるデザイン」が意味するものとは、世界への批評であり、人類の未来そのものだ。一般的に「おもちゃ」と呼ばれる子どもの遊具を大人は見下しがちだが、子どもたちがいかに創造的で、洗練されていて、自由であるか。ジェンダーやセクシュアリティに対する固定観念や学校教育、既製品に疑問を覚えるキャスの哲学や自分らしさを貫く姿勢、そして「簡単は退屈」をモットーとして挑むデザインの数々から教えられることは多い。
いっぽうで書体デザイナーのジョナサン・ヘフラーのオタク気質、ミクロ単位のこだわりには、思わず顔がほころんでしまう。ひとたびジョナサンの書体デザインへの情熱に触れれば、家にあるありとあらゆる文字をじっくりと見直してみたくなることだろう。
大がかりなインスタレーションで知られるデンマーク生まれのアイスランドのアーティスト、オラファー・エリアソンの作品の数々は、私たちが芸術や世界を理解するための斬新な視点を与えてくれる。シーズン2第1話「オラファー・エリアソン:アートのデザイン」より。
現在配信中のシーズン1&2は、合計で14人のアーティストをフィーチャーしている。その顔ぶれのなかにはよく知る名前もあるだろうし、建築や写真、インテリアや衣装など、興味のある分野に引かれる人もいるだろう。気の向くままに新たな扉を開いてみれば、家にいながらにして小さな宇宙の広がりを感じられるに違いない。
「アート・オブ・デザイン」予告編。
原題/Abstract: The Art of Design
Netflixオリジナルシリーズ
Netflixにてシーズン1~2独占配信中
texte : SACHIE IMA