普段よりセックスしてないカップル。それ、普通です。

Culture 2020.04.28

何かと気持ちが落ち着かない外出制限の暮らしで、リビドーにも影響が。活発なセックスライフを送っているカップルよりも、欲望が湧かないことに困っているカップルのほうが多いようだ。精神分析医でセックスセラピストのアラン・エリルが解説する。

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ひとつ屋根の下で暮らしていても、その気にならないカップルが増えている。photo : iStock

新型コロナウイルスの感染拡大で自宅待機を強いられている私たち。前向きに考えてみると、自宅待機生活はカップルにとって理想的な状況のように見える。確かに、お互いの愛情を確かめ合えるし、セックスの機会も自ずと増える。しばらく人と触れ合うことができない一人暮らしや独身者、遠距離カップルにとっては、うらやましく思えるかもしれない。ところが現実はそうシンプルではない。『L'orgasme thérapeutique(オーガズムの治癒力)』の著者である精神分析医でセックスセラピストのアラン・エリルによれば、リビドーを刺激し維持するためには、普段以上の努力と工夫をしなければならないようだ。

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――外出制限と世界的なウイルス感染の脅威で、リビドーも危険にさらされているのでしょうか?

もちろんです。外出制限は世界のルールを変えてしまいました。私たちはいま、1日の大半を職場ではなく自宅で過ごしています。そんな状況は初めてというカップルもいるでしょうし、誰もが精神的に不安定になっています。私の患者にも、「いまは相手の気を引く、気を引かれるといった気分になれない」「24時間顔を合わせながらセクシーな関係を維持するのは難しい」と打ち明ける人が多くいます。

リビドーに必要なのは日常ではなく、非日常。レストランに行く、ヴァカンスやレジャーに出かける、友だちとのパーティ。そんな非日常へのアクセスが制限され禁止された瞬間から、私たちはどっぷりと日常に浸かっているわけです。ときとしてその重みが耐え難いものになる。誘惑もミステリーも意外性もない状況では、パートナーの身体が味気なく感じられてくることも。もちろん、外出制限の影響はカップルによってさまざま。自分専用の空間があるかどうかや、それまでの関係や付き合いの長さにもよります。

――現在のような不安な状況下で、セックスはどのような役割を果たしているのでしょうか?

ここ数週間、外出制限のマイナス効果をはねのけるために、食べる量やお酒の量が増えたという話が増えています。人によってはセックスも同じような役割を果たします。心の不安を外に発散し、塞ぎがちな気分を晴らすためにセックスするわけです。こうした行為は、楽しむ感覚というよりも、機械的で機能的なセックスといえます。とはいえ、外出制限の期間が長くなれば、性行為の回数は減少するでしょう。それまで定期的に性生活を営んでいたカップルの大半で、徐々にセックスレスの傾向が進んで行く。リビドーが高まるには喜びや安心感が必要です。現在はそういった感覚を持ちにくい。不安が増せば増すほど、性欲は低下します。

――外出禁止が実施されて以来、セクスト(性的なテキストやメッセージを送ること)やヌード画像のやりとりが増加し、ポルノサイトやライブ配信へのアクセスが増えるなど、インターネット上にはこれまでになく性的な表現があふれています。これはどうしてでしょう?

一人暮しの人々にとっては、退屈や人と接する機会がないことがストレスの原因になります。他者と直接接触できない状態にあるため、バーチャルな代償を求めるのです。実際に相手の肉体に触れられないので現実の代わりにはなりませんが、ストレスを発散させたり、ファンタズムを描くことにはなります。たとえば離れて暮らすカップルにとっては、遠距離でもエロティックな関係を楽しむ手段になるでしょう。

身体を重ねる代わりに、言葉や写真や遊びを通して、お互いのプライベートな部分を共有するわけです。最新の調査結果を見ると、アダルトグッズの売れ行きも伸びていることがわかります。パートナーがいるいないにかかわらず、マスターベーションは、性欲そのものに関わる行為であると同時に、他者との繋がりを維持するための行為でもあるのです。

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――子どもと一緒に自宅待機生活を送るカップルの場合、テレワークと子どもの間で、どうやってセックスの場所を見つければいいのでしょうか?

マニュアルはありません。それを見つけるのはそれぞれのカップルの仕事です。欲望がない時に、無理をしても何にもなりません。大げさに考えず、ただ話し合えばいいだけです。話し合いは、テレワークをする昼間以外の時間帯に。恋人気分になれる、ふたりきりで過ごす時間帯に気分がのってきているなら、パートナーの好きなように任せてみたり、あるいは逆に、自分に任せてもらってもいい。

言葉も重要です。たとえ一緒に自粛生活を送っていても、エロティックな言葉やセクストを始め、リモートセックスで使われるあらゆる手段も役に立ちます。性は創造的な行為であることを忘れてはいけません。子どもに見られるのが心配ならば、両親の部屋は立ち入り禁止にするとか。詳しい話をする必要はありませんが、親には親だけの時間が必要だということを子どもたちに説明すればいいのです。

――外出制限が解除された後、私たちの性生活はどうなるのでしょうか?

私もまさに同じことを考えていたところです。誰もが一斉にセックスの相手を求め合うようになると考えがちですが、私はそうは思いません。外出制限が解かれた時には、仕事や子どもの学校と同様に、プライベートな生活も再開します。こうして現実に直面した時に具体的な問題が見えてくるでしょう。いっぽうで、性生活はこのまま多様であり続けると思います。この年末に予想される新たなるベビーブームに貢献する人もいれば、さらに創意に富んだアプローチ手段を駆使して恋愛を楽しむ人もいるでしょう。あるいは、それまでのセックスにまた戻るだけという人もいることでしょう。

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texte : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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