『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』がついに公開!

Culture 2020.07.03

雨の匂いや光と交感する、若い俳優たちの多彩な天分。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

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別件に彼女がのぼせ、ふたりのニューヨークの週末計画はご破算に。飴色の朝、雨降る午後、ピアノ弾き語りの部屋。名人ストラーロの撮影シーンにうっとり。

いつもながら冴えない男といい女の、ウディ・アレン84歳のラブコメディです。今回男役に配されたのは、意外やティモシー・シャラメ。しかし、彼はこの役にハマっています。よれっているラルフローレンもティモシーが着れば何かしら違う。俳優としての資質でしょうか。

彼が演じるのは、親が選んだアイビーリーグの大学から落ちこぼれ、自虐ぎみにいわく「田舎の森林大学」に通う青年ギャツビー。教養かぶれの母親に促されて読書やピアノに親しむも、この生粋のニューヨーカーの心に潜むのは、過ぎ去った時代の夢を追い、いまの空虚感をギャンブルや気まぐれで埋める浪費癖です。キャラクターの端々に現れる作家フィッツジェラルドとサリンジャーへの偏愛が、この映画のおもしろさでもあります。

女性陣もキャスティングが素晴らしい。アリゾナ育ちの恋人、アシュレー役にエル・ファニング。記者志望の彼女は、思いがけず意気投合した憧れの映画人たちとめくるめく週末を過ごします。ギャツビーとのデートの約束もすっぽかして。アシュレーに会えず、じりじりと街をさまよう中で彼が出くわす、痛快なほど毒舌なニューヨーク娘チャンにはセレーナ・ゴメス。「嫌い、嫌い、嫌い、好き」というロマンティックコメディの王道は、彼らふたりのサブストーリーが担っています。セレーナとティモシーの辛辣な会話が、作品を牽引しているんです。若い俳優たちが新しい映画の時代を作ってる!

時に天気雨にもなる、ニューヨークの雨の匂いを胸いっぱいに感じます。各々の役のコントラストと光のコントラストが照応し、映画の奥深さを映し出しています。

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ティモシー・シャラメ演じるギャツビー(右)とセレーナ・ゴメス演じるチャン(左)が織りなすサブストーリーも魅力。© 2019 Gravier Productions, Inc.

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ギャツビーの恋人で記者志望のアシュレーを演じるエル・ファニング。© 2019 Gravier Productions, Inc.

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ウディ・アレン監督(右)とティモシー(左)の撮影中のひとコマ。© 2019 Gravier Productions, Inc.

文/北村道子 衣装デザイナー/スタイリスト

1985年、『それから』で映画界入り。以降、『幻の光』(95年)、『あ、春』(98年)ほか、90年代前後の日本映画の先端を担う。著書に『衣裳術《新装版》』、『衣裳術2』(ともにリトルモア刊)。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
監督・脚本/ウディ・アレン
出演/ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウほか
2019年、アメリカ映画 92分
配給/ロングライド
7月3日(金)より、新宿ピカデリーほか全国にて公開
https://longride.jp/rdiny

*「フィガロジャポン」2020年8月号より抜粋

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