現代中国史の闇にスポットを当てる超大作『死霊魂』。
Culture 2020.08.12
漆黒の歴史の生還者に対峙、ワン・ビン執念の証言記録。
『死霊魂』
組織内の私怨や員数合わせでも、「右派」の判が押されれば辺境の再教育収容所へ。大飢饉と重なり、洞穴のねぐらは餓死が日常化。1957年から数年の中国の出来事だ。数少ない生き残りの、風雪に埋もれた記憶が幾層もの声となって呼び合い、響き合う。興に乗って地獄巡りの冒険譚めく語りが、ふと苦しげになる。死者たちの「無言」を背負い、朽ち果てる前に語っておかねば、という強靭な意志。大往生した生還者の棺を、息子らが自力で山頂に運んで土葬するシーンが胸に迫る。収容所跡の野ざらしの人骨と、それは痛切な対照をなす。
*「フィガロジャポン」2020年9月号より抜粋
réalisation : TAKASHI GOTO