月夜のプールで泳ぎましょう 吉村界人×三吉彩花、型破りなふたりがいま思うこと。

Culture 2020.08.26

俳優・吉村界人による連載「月夜のプールで泳ぎましょう」。各回で招くゲストをイメージして吉村が描いた一枚の絵画をきっかけに、ゲスト自身について、またゲストにまつわるテーマについてトークを繰り広げる企画。

最終回のゲストには、阿部純子とダブル主演を務める映画『Daughters』の公開を控える三吉彩花が登場。固定観念を疑うふたりが、いまの日本映画やファッション、自分自身に対して思うこととは。

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ーーお会いするのは初めてですか?

三吉 たまにばったり会うんですよ。初めて見かけた時はセンター街で、私は池田エライザさんと買い物してたんですけど、吉村さんが台本片手に歩いてて。

吉村 うわ! 懐かしい。3、4年くらい前?

三吉 そうですね。ちゃんと話すのは初めてです。だから、事前にウィキペディアで調べました(笑)。失礼なんですけど、年下だと思っていたんですよ。そしたら3つも上!? って(笑)。

吉村 (笑)。僕も三吉さんのことはよく知らなかった。映像も観たことなくて。映画『Daughters』はひと足先に観させてもらいました。そもそも、この映画はなんでトライしようと思ったんですか?

三吉 脚本を読む前に、まず監督の津田さんからありがたいことにオファーをいただいて。津田さんはもともとファッション畑にいた方なので、どんな映画になるんだろうって楽しみでした。台本を読んでみたら、私の好きなフランス映画の感じに近かった。日本はセリフで説明する作品が多いから、台本を読めば人物像がだいたいわかるんですけど、『Daughters』は説明的なセリフが少なくて、仕上がりのイメージができなかったんです。
あと、この作品はとてもライトに、いまの社会問題や、子どもに対する考え方など、今後どういうふうに自分が生きていきたいのかを扱っていて、きちんと考えられる映画だった。そういうメッセージ性のあるストーリーにも惹かれました。

ーー女性特有の嫉妬心がリアルに描写されていたのが印象的です。自分自身、共感するところなどはありましたか?

三吉 私と親友の付き合い方は、わりと男の子っぽいというか、あまりお互い干渉しない感じなんです。でも、お互い小さい頃から仕事をしているということもあって、ターニングポイントで悩んだ時に相談するのはその子。気がついたらいつも一緒にはいるけど、深く干渉はしない関係性です。

吉村 女子って、そんなにずっと一緒にいるものなの?

三吉 私は、この映画のふたりほどの距離感は難しいです。もし親友にルームシェアしよって言われても断りますね。昔からひとり遊びが大好きだったので、ひとりで時間を過ごすのが楽なんです。本読んだり、絵描いたり、木登ったり。
でも、集団が苦手というわけではなくて、大人数で飲みに行ったりするのも好きです。

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吉村 僕もひとりが好き。映画観たり、読書したり、木は登らないけど(笑)。最近は走ってますね。今度撮影する映画があって、その筋トレをしたり。髪が赤いのもそのためで。

三吉 実は私も、一昨年の年末年始は赤髪でした! 年末年始の休みだけ毎年髪を染めてて。派手な髪色の役柄もチャレンジしてみたいです。わりと、黒髪できちんとしてる役が多いので……。

吉村 ちょうど僕も同じようなこと考えてたんです。海外とか、韓国とか、島国以外の人って、真面目と狂気が共存してるじゃないですか、ひとりの中に。それが圧倒的に日本と違いますよね。

三吉 そうですね。日本らしさみたいな感じが強いなと思います。

ーー映画でいうと、どんな作品に衝撃を受けましたか?

三吉 ベタですけど、『エターナル・サンシャイン』。

吉村 ああ、おもしろいよね。

三吉 あの映画も劇中で髪色が変わるじゃないですか。オレンジから青になったりとか。それが背景になじんで美しくて、ストーリーも遮らず、きちんと完結している。海外の作品は、より視野が広くて、いろんな人の人生観とか価値観を描いてる気がします。

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ーー本作のテーマのひとつでもありましたが、自分の中で、少女から大人に変わったのっていつですか?

三吉 写真集の撮影でインドに行った、20歳。私、7歳から仕事をしていて。7歳なんて、このモデルさんになりたい、この雑誌に出たい、CMに出たいなどまだ思っていなくて、映画やドラマに出たいなどのそういう感覚がなかったんです。でも周りの人に助けていただいて、どんどん背中を押していただいて、自分は前で堂々と立っていたらここまで来て……。なのでいまになって、自分が考えること、自分の意見っていうのが全然ないなと。それで、20歳前後で周りに負けてるなと思いました。

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ーーそんな時、インドに行く機会があったと。

三吉 はい。いままでは10代で、中身よりも外見とか、表立って見えているもので成立してきたことが、20代からは実力はもちろん人間性や、パーソナルな部分も重要になる。大人になりたくないような、でもなりたいような。そんな時に、海が広くて、空が高いインドにいて、人生観をゆっくり考えられる1週間を過ごして。インドは、女性が強く逞しく生きている場所だと感じました。
いろんなことに悩むけど死ぬわけではないですし、もっと自分の軸にちゃんと自信を持って、自分を信用して生きていこうと思ったんです。
あとは、運が強いんだなと、きちんと自覚するようにしました。人との繋がりも、仕事の縁も、引き寄せる力を自分は持ってると実感して、それを知ったうえで考えて発信したりすることで、ひとつひとつに意味を感じるようになりました。なのでいまはとても充実しています。

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ーー今回、まだ三吉さんとお話ししたことがない状態で、吉村さんに絵を描いてきてもらいました。どんなイメージで描いたのか教えてください。

吉村 『Daughters』の役柄もありますけど、女性って強いなと思って。出てくる人みんな、男子より強いなって。あとはうるさい、女子って(笑)。激しい。

三吉 激しいはたしかに……。

吉村 大変だな、疲れそうだなって。

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ーー三吉さんにも女性の強さ的なものを感じましたか?

吉村 映像とか写真からはそう感じる。

ーーでは一見、三吉さんは強そうに見える。今日話をしてみて、印象は変わりましたか?

吉村 三吉さんは優しいんだろうなって。

三吉 おお、初めて言われました!

吉村 結構ひとりでいる人って優しいから。誰かといるのがめんどくさいとか、言い方はいろいろあると思うんですけど。でも誰かといたらしんどいとか、自分の好き勝手やれないとかって、それは優しいからだと思うんですよね。まあでも僕占い師じゃないんでイメージね(笑)。

ーー三吉さんは吉村さんに対して、どんな第一印象でしたか?

三吉 それこそパブリックイメージでのみですが、現実や日常にあるものにあんまり興味を示さない方なのかなと。たとえば好きな映画の話や、好きな役者の話とか。なので、今日話してみて意外でした。いい意味で普通だなと。話してる時や、話聞いてる時など、人の目を見て話してくださるので。

吉村 なんだと思ってたんだよ(笑)。

三吉 いやでも、それってとても大事じゃないですか。さっきもずっと話してる時目を見て聞いてくださったから、ああこの人、人の話をちゃんと聞いてくれる方なんだなって。とてもいいなと思いました。

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吉村 三吉さんは、お芝居好きですか?

三吉 はい、とても好きです。

吉村 芝居してる時が好きってことですか?

三吉 芝居をしていることが好きかって言われるとわからないけど、演じる人の人生を考えてる時が好きです。自分の人生の中で、全然違う人の人生を何人も演じるって、三吉彩花としての人生が充実してるな、おもしろいなと思います。
でも、絶対に女優としてずっとやっていくっていうのを固めてるわけではないです。こなしていけるようになって、ときめかなくなったら嫌だな。監督や、作る側もしてみたいです。文章やデザインも好きですし、いろんなことにいっぱい興味があって、ほかにやりたいことがいくらでもあります。それを仕事にできるかと言われたら、それはちょっとわからないですが……(笑)。

吉村 すげえ。僕は楽しいとは思わない。楽しいのは、次の配役を知る時の一瞬くらい。

三吉 でも役者はやりたいんですか?

吉村 うーん、それは難しい……4時間くらいかかります。

三吉 ははは(笑)。でも継続できてるってことは、向いてはいるんだと思います。

ーー最後に、三吉さんも絵を描くと伺ったのですが。

三吉 たまにです、暇な時に。線だけ描いてる日もありますし、文章書いてる日もあります。色いっぱいでぐちゃぐちゃな日もあれば、何かを見ながら描いてる日も。個展や、人に公開しようとは思ってないです。ただ自分の世界だけで完結するために描いてるので、全然うまくないですし、なんでこの時こんなん描いたんだろうっていうのばっかり。

ーー日記のような?

三吉 そうですね。でも、一応飾れるように額に入れたりとかはしているんですけど、誰でも描けるようなものばかりです(笑)。色のチョイスで、その日の気分が出ますね。気分がいい日と、気分が悪い日とで色のチョイスが分かれます。

ーーでは、今日だったら何色ですか?

三吉 (吉村さんの髪を指差す)。ピンクだけ! 今日は一色だけでもいいかもと。絵を描きたいなと思った時、その日見た景色の中でいちばん印象に残ってる色を多めに使うことが多いんですよ。

吉村 ありがとうございます(笑)。

吉村界人
Kaito Yoshimura


1993年生まれ、東京都出身。2014年『ポルトレ PORTRAIT』で映画主演デビュー。18年、第10回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞を受賞。主な代表作に、映画『太陽を掴め』(16年)、『サラバ静寂』(18年)、ドラマ『左ききのエレン』(19年)、『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(20年)など。今後の公開予定に、9月25日より映画『ミッドナイトスワン』、11月20日より映画『滑走路』、12月より映画『無頼』、21年夏に映画『プリテンダーズ』、映画『ジャパニーズスタイル』がある。
三吉彩花
Ayaka Miyoshi


1996年生まれ、埼玉県出身。雑誌「セブンティーン」の専属モデルを経て、現在はモデルのみならず女優として数々のドラマや映画で活躍。主な出演作はドラマ「警視庁・捜査一課長2020」、映画『旅立ちの島唄~十五の春~』(2013年)、『ダンスウィズミー』(19年)、『犬鳴村』(20年)など。9月18日から主演映画『Daughters』が公開のほか、11月6日より『十二単衣を着た悪魔』が公開予定。

 

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photos : ERIKO NEMOTO

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