東京とローカル、ふたつの拠点で生きる女性たちの暮らし方。

Culture 2021.03.03

都会での仕事を続けながら、より心地よくいられる場所を求めて多拠点生活を実践する人たちが増えている。自分らしさにこだわるその生き方をお手本に。

NAGANO⇆TOKYO

素直に感情があふれてきて、人間力が高まった。
安藤潤美 / モデル

登山がきっかけで訪れた安曇野の土地に一目惚れし、昨夏に移住した安藤潤美。現在は、ここを拠点に東京や大阪でモデル活動を行い、理想のライフスタイルを送っている。

2102xx-ttd50-12-17.jpg

隣町の木崎湖で友人とピクニック。

「都会は便利だけれど、どこか居心地の悪さを感じていて。のんびりした性格なので、ずっと田舎暮らしに憧れていました」。家の窓からは田園風景と北アルプスが一望でき、湖畔のピクニックや登山など自然を謳歌している。「都会では自分の感情と向き合うことが少なかったのですが、ここではきれい! おいしい! 楽しい! といった感情が素直に出てきて、人間力が高まった気がするんです」。

移住者同士のコミュニティも盛んで、同世代が集まって味噌作りや野沢菜作りなど、ご当地文化を肌で感じている。「近いうちに家庭菜園もやりたい」と目を輝かせる。新天地での発見はまだまだ続きそうだ。

2102xx-ttd50-12-02.jpg

東京のスタジオでの撮影風景。安曇野から東京までは片道約3時間。仕事の時は東京の実家に滞在。

2102xx-ttd50-12-03.jpg

奥上高地の涸沢カールではテント泊をした。

HIROMI ANDO|安藤潤美
宮城県出身。mille management所属。東京で育ち、大阪の生活を経て2019年より長野県・安曇野に移住。現在の物件は市のサイトで探したもの。趣味はキャンプ、発酵食作り。

---fadeinpager---

NAGANO⇆TOKYO

サバイブ力が上がり、自立していることを実感。
槌屋詩野 / Impact HUB Tokyo共同経営者

東京でコワーキングスペースの共同経営者として休むことなく働いてきた槌屋詩野が、パートナーと飯綱高原にカナディアンログハウスを建てたのは2年前のこと。自然豊かだが冬は豪雪の過酷な環境で、ライフスタイルは一変。

2102xx-ttd50-12-04.jpg

飯綱高原の自宅の蓄熱に優れたメイスンリーストーブ。窯の中でシチューや肉を低温調理。

「パソコンとにらめっこするのではなく、人と話し、身体と手を動かすのが仕事だと考えるようになりました。生活のサバイブ力が上がり、自分が自立した女性としての強さがあることを実感しています」。いっぽう東京では情報やトレンドを吸収し、自分も誰かに影響を与えていることを感じるという。

「東京は仕事に行く場所ではなく、みんなに会いに行く場所。移動することで、情報やエネルギーのイン&アウトを楽しんでいます」。今後は3000㎡ある広大な庭にエディブルフォレストを作り、収穫物から食卓を作ることも計画中。人生という森を育成する気持ちで生活する。

2102xx-ttd50-12-06.jpg

雪の日は子どもたちと庭で遊ぶ。

2102xx-ttd50-12-07.jpg

東京のチームと1週間の出来事を報告。

SHINO TSUCHIYA|槌屋詩野
海外でコンサルティングや事業の立ち上げに関わった後、2012年帰国後にImpact HUB Tokyoを設立。事業を作る人たちに伴走している。2児の母親でもある。

---fadeinpager---

MIURAKAIGAN⇆TOKYO

食と環境を考えるための、週末の海の家。
りんひろこ / 料理研究家

3年前にアメリカやヨーロッパの都市を3カ月かけて家族で旅行したりんひろこ。料理研究家の視点で環境と食について多くの気付きを得た経験から、三浦海岸に理想のセカンドハウスを見つけた。

2102xx-ttd50-12-08.jpg

家のすぐ目の前が海。週末に訪れるだけでセラピーに。

「海の見える物件を2年かけて探しました。地球規模で自然回帰の流れがある現在、自分なりに環境問題に取り組むためにも三浦海岸での週末生活を始めました」。平日は東京の自宅で料理教室やレシピ開発の仕事をするが、週末は家族で三浦海岸へ移動。朝市で新鮮な魚を仕入れ、庭で育てた野菜や果実を収穫し、都内から遊びにやってくる友人たちをもてなす。

「手付かずの自然と太陽の恵みを感じられる環境が何よりありがたい。ぼんやり海を眺めているだけで精神が落ち着きます」。将来は自然農法の畑を耕したり、週末カフェも開きたいという。未来の夢に向けてデュアルライフは進行中だ。

2102xx-ttd50-12-09.jpg

三浦海岸の庭で採れたレモン。

2102xx-ttd50-12-10.jpg

東京の仕事場。食養生を研究するうえで、生活からヒントを多く得ている。

HIROKO RIN|りんひろこ
京都で懐石料理を学び、その後、台湾料理、アーユルヴェーダ、薬膳など東洋の食養生の考えをもとにしたおいしく簡単な料理をテレビや雑誌で提案。2児の母。

---fadeinpager---

BANGKOK⇆OKINAWA

自分の世界があればどこで暮らしても楽しめる。
田辺あゆみ / モデル、ari代表

モデルとして世界の都市を行き来してきた田辺あゆみ。現在は10年前に家族で移住した沖縄を拠点に、自ら立ち上げたブランドariの仕事でバンコク、モデル業は東京、と複数の場所で活動している。

2102xx-ttd50-12-11.jpg

バンコクの生地店にて。カラフルなタイシルクに魅せられて2016年にブランドariを立ち上げた。

「もともと移動することに慣れていたので、1カ所に定住するのは苦手なんです」。沖縄の家は広い空と海を見渡せる高台の一軒家。「沖縄で子育てできたのはとてもよかった。ご近所がみんなで子どもの面倒を見てくれるので安心して遊ばせられる。台風や停電は日常茶飯事だから、自然の脅威も肌身で感じるようになりました」。

いまは海外渡航できないため、大好きな多肉植物を育てたり、アトリエに好きなモノを集めて週末だけのショップを開く準備をしながら充電期間を楽しんでいる。「アトリエは大人の秘密基地のようなもの。どこにいても自分の趣味を見つけて楽しむことが、多拠点生活の秘訣です」

2102xx-ttd50-12-12.jpg

広い空と海が開放感あふれる沖縄の自宅にて。

2102xx-ttd50-12-13.jpg

手塩にかけて育てた多肉植物。

AYUMI TANABE|田辺あゆみ
10代からモデルとして活動。16歳で単身渡仏、パリ・コレでも活躍した。2011年に沖縄に移住。16年にタイシルクのファッションブランドariを設立。エナジーモデルエージェンシー所属。1児の母。

---fadeinpager---

TOKYO⇆KAMAKURA⇆HIROSHIMA

ワーク&ライフを緩やかに行き来する心地よさ。
吉田 愛 / 建築家

建築事務所の共同代表を務める吉田愛。地元・広島と東京のオフィスに加え、鎌倉にも拠点を増やした。現在は東京のマンションと鎌倉で半々ずつ暮らす。

2102xx-ttd50-12-15.jpg

庭との一体感を意識してリノベした鎌倉の家。

「もともとワークとライフを分けない生活スタイルでしたが、コロナ禍で自分のための時間が増えました」。広い庭のある鎌倉では自然を身近に感じながら、ご近所とのお付き合いを楽しんでいる。「仕事の合間に庭いじりをしたり、ストーブに鍋をかけながら料理をしたりと、時間の流れがゆっくりになりました。好きな環境に身を置くことは、仕事でもプライベートでも大切。気に入った場所で生活することで新たなコミュニティが生まれ、そこがホームに変わるんです」。

家を設計する時も、室内と屋外を繋ぐ縁側のような中間領域に可能性を感じるという。自身も、仕事と生活の中間地帯に身を置くことの心地よさを体感しているようだ。

2102xx-ttd50-12-14.jpg

広島の家ではレトロな石油ストーブを愛用。

2102xx-ttd50-12-16.jpg

東京では窓の景色を眺めてバスタイム。

2102xx-ttd50-12-01.jpg

仕事の合間に鎌倉の庭のお手入れをすることも。

AI YOSHIDA|吉田 愛
2001年よりSUPPOSE DESIGN。14年より共同主宰。飲食部門プロデュース兼経営、ゲストハウスのディレクションなど、建築を軸に分野を横断して活動。

*『フィガロジャポン』2021年3月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories