初夏の訪れとともに出かけたい、作家性あふれる展覧会4選!

Culture 2021.04.22

寒さが落ち着き、ようやく過ごしやすい季節に。こんな時こそ、心躍る美術館や展覧会に出かけたいもの。鮮やかな世界観や、物静かな彫刻、アーテイストがキュレーションした収蔵品展まで、いま気になる展覧会をピックアップ!

やわらかく解きほぐされるフェミニズムと身体性。

『ピピロッティ・リスト: Your Eye Is My Island─あなたの眼はわたしの島─』

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『色とりどりの幽霊』(ヴィデオ・スチル)2020年(新作)。近年は自然と人間の共生にフォーカス。

スイスを拠点に活躍する1962年生まれのアーティスト、ピピロッティ・リストは、感覚のすべてを刺激するジューシーで色鮮やかな作品で幅広い観客を魅了し、目に見えない力に抑圧される女性たちをエンパワメントしてきた。アルプスの大自然で育った彼女は『長くつ下のピッピ』の主人公から新たな名前と人格を得て、友人のバンドのステージデザインからメディアアートに進む。大きな転機となったのが、1997年のヴェネツィアビエンナーレで若手作家優秀賞を受賞した映像インスタレーションだ。なかでも、空色のワンピースを着た女性が花の形をしたハンマーで通りの車の窓ガラスを楽しげに叩き割っていく代表作『永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に(Ever Is Over All)』は鮮烈だった。男性社会を軽やかに破壊する女性の明るい狂気をユーモラスに描き、1990年代以降のフェミニズムの記念碑的作品となる。当時のインタビューで「私たちはみな生まれながらのフェミニストよ」とさらりと言ったことは忘れがたい。

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『わたしの海をすすって』(ヴィデオ・スチル)1996年。アートシーンに鮮烈に登場した初期の代表作。「血の通ったカメラ」と呼ぶ自身の眼で世界を複層的に捉えてきた。

彼女が探究し続けるジェンダーや身体、女性性、エコロジーをテーマとしたおよそ40点の作品で構成される本展。初期のセンセーショナルな短編や代表作、自然と人間の共生をのびやかに謳う近年の大作や、ベッドで寛ぎ食卓を囲みながら体験する没入型の作品など、約30年間に及ぶ活動の全貌を紹介する。いくつものイメージが重なり合い、世界を多角的にクローズアップする彼女の作品は、次々と顕わになる女性性と身体性を巡る難題をやわらかに解きほぐし、あらためて向き合う瑞々しい視点を示してくれるかもしれない。

『ピピロッティ・リスト: Your Eye Is My Island─あなたの眼はわたしの島─』
会期:開催中~6/13
京都国立近代美術館(京都・岡崎)
営)9時30分~17時(金、土は~20時)
休)月(5/3は開館) 
料)一般¥1,200
tel:075-761-4111
www.momak.go.jp

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英国人作家の視点と遠隔キュレーション。

『ストーリーはいつも不完全……』
『色を想像する』ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展

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相笠昌義『水族館にて』1976年。これまで一度も展示されたことがない作品も、新たな解釈によって日の目を浴びる。

自身の個展延期を受け、同時開催予定だった収蔵品展の遠隔キュレーションを申し出たライアン・ガンダー。寺田小太郎のプライベートコレクションから李禹煥、堂本右美、野又穫らの作品を、彼ならではのひねりの効いた考察と解釈で構成する。

『ストーリーはいつも不完全……』
『色を想像する』ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展
会期:開催中~6/20
東京オペラシティ アートギャラリー(東京・初台)
営)11時~19時
休)月(5/3は開館)
料)一般¥1,000
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.operacity.jp

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自意識の葛藤から打ち立てたビジョン。

『イサム・ノグチ 発見の道』

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『黒い太陽』1967- 69年、国立国際美術館蔵。両親の祖国が敵対した戦争経験から平和への強い願いを込めた作品を残した。

東西間でアイデンティティの葛藤に苦しみ、独自の彫刻哲学を打ち立てたイサム・ノグチ。20代で彫刻家コンスタンティン・ブランクーシと出会い決定的な影響を受け、自然と通底する抽象フォルムが生み出す作品世界を生涯かけて追い求めた。本展ではノグチの日本文化への深い洞察と彫刻芸術の核心に触れる。

『イサム・ノグチ 発見の道』
会期:4/24~8/29
東京都美術館(東京・上野)
営)9時30分~17時30分
休)月(5/3、7/26、8/2、9は開館)
料)一般¥1,900
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://isamunoguchi.exhibit.jp

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旅先がアトリエとなった画家の愛した色彩。

『フジタ─色彩への旅』

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『メキシコに於けるマドレーヌ』1934年、京都国立近代美術館。1920年代に「乳白色の肌」を完成させ、パリ画壇の寵児に。

世界的な画家を夢みて1913年に渡仏した藤田嗣治は、旅した土地の風景や人物、異国の歴史や風俗などに創作のインスピレーションを求めた。旅先の地で、新たなモチーフや群像表現の構図と豊かな色彩による表現を開拓していく。本展では彼の旅と色彩に焦点をあて、その画業の展開と生涯の旅路を紹介する。

『フジタ─色彩への旅』
会期:開催中~9/5
ポーラ美術館(神奈川・箱根)
営)9時~17時 
無休
料)一般¥1,800
tel:0460-84-2111 
www.polamuseum.or.jp

*「フィガロジャポン」2021年6月号より抜粋

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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