2021年第93回アカデミー賞 アンドラ・デイはアカデミー賞で奇跡を起こすか?

Culture 2021.04.25

黄金の歌声を持つシンガー。アンドラ・デイは、ゴールデン・グローブ賞の最優秀女優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされている。彼女はジャズ界の神話的歌手、ビリー・ホリデイを演じ、世界を驚かせた。

『The United States vs Billie Holiday』トレーラー

すでにその黄金の歌声で人気を博していたソウルシンガーのアンドラ・デイが、映画初出演にして、ゴールデン・グローブ賞映画ドラマ部門の主演女優賞を受賞した。『The United States vs Bille Holiday』(原題、日本未公開)では、彼女の生涯の憧れである伝説のジャズ歌手を演じている。ビリー・ホリデイのニックネーム「レディ・デイ」は、アンドラ自身のステージネームの由来だという。

「主イエス・キリストに感謝します。私はあなたのしもべです。また、私の両親、家族、そして私の初恋の人であり、恋人であるリー・ダニエルズにも感謝したい」と、受賞発表の際には感動いっぱいのスピーチを行った。シャネルのシルクのロングドレスで輝いていた彼女は、ヴィオラ・デイヴィス(「マ・レイニーのブラックボドム」)、ヴァネッサ・カービー(「私というパズル」)、フランシス・マクドーマンド(「ノマドランド」)、キャリー・マリガン(「プロミシング・ヤング・ウーマン」)ら、同部門のベテランぞろいのノミネート者たちにも感謝の言葉を述べた。アンドラ・デイは、1986年のウーピー・ゴールドバーグ以来、グラミー賞を受賞した、史上2人めの黒人女優。現在、アカデミー賞の最優秀女優賞にもノミネートされている彼女を紹介しよう。

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憧れのミュージシャン

彼女の話はまるでおとぎ話のようだ...。本名はカサンドラ・ベイティ。アンドラ・デイは、2010年、ショッピングモールで歌っていた。そこに通りかかったスティービー・ワンダーの妻が、夫にこの発見を報告。そこから、プロデューサーとの出会い、レニー・クラヴィッツの前座出演、スティーヴィー・ワンダーとともにアップル社のCMに出演、そして何より、ファーストアルバム『Cheers to the Fall』(2015年発売)がグラミー賞2部門でノミネート、と、すべてが続いた。スパイク・リーやM・ナイト・シャマランが彼女のためにミュージックビデオを制作し、音楽ファンは、このサンディエゴの歌姫を、アデル、エイミー・ワインハウス、ビリー・ホリデイと比較して熱狂した。

生まれながらの女優

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その歌唱力と徹底的な役作りでビリー・ホリデイを演じたアンドラ・デイ。 photo : Warner Music Japan

2月26日にhulu.comで公開された『Billie Holliday, an affair of State』。リー・ダニエルズ監督がこの映画を撮ろうと決めたとき、彼はアンドラ・デイを念頭においていたわけではない。アンドラの方も、1972年に映画でジャズの伝説を演じたダイアナ・ロスの後を継ぐつもりはなかった。

しかし、『プレシャス』『ザ・バトラー』を手がけた監督と36歳のミュージシャンとの間には、最初の出会いから芸術的な一目惚れがあったと言っていい。彼女は、監督のアプローチに共感している。「理解している人は少ないが、黒人の歴史は意図的に削除され、操作されてきた。今、黒人アーティストたちの手でそれを取り戻すことが必須だ」

このジャズの神話を体現するために、アンドラ・デイは体重を18キロ落とし、タバコを吸って声を変えた。全身をプラダに包み、1940年代に戻って、公民権運動家の人生と闘いを語る。FBIは、彼女の薬物中毒を利用し、警官を潜入させて黙らせようとする。だが潜入警官は彼女の恋人となってしまう。

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尊敬するアクティビスト

1939年、ビリー・ホリデイは「奇妙な果実」という曲で、分離主義のアメリカにおける黒人のリンチを非難する。これが州の怒りに火をつけたことは映画にも描かれている。

アンドラ・デイは、彼女が演じたビリー・ホリデイ同様に、「Rise Up」という曲で主張を展開している。この曲は、4年間のトランプ政権の後、かつてないほど分裂したアメリカにおいて、まさに尊厳とレジリエンスへの賛歌だ。

すでに2015年にミシェル・オバマに招かれてホワイトハウスで歌った彼女は、去る1月のジョー・バイデンの就任式でもこの曲を歌った。この歌は、和解と希望のシンボル。彼女の声は、今も響き続けている。

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映画は残念ながら日本未公開だが、アンドラ・デイ演じるビリー・ホリデイのソウルフルな歌声はサウンドトラックで楽しめる。彼女が歌う「奇妙な果実」は必聴。『ザ・ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ(ミュージック・フロム・ザ・モーション・ピクチャー)』ワーナーミュージック・ジャパン ¥2,200 

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text:Marilyne Letertre (madame.lefigaro.fr)

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