子どもにディズニーアニメを見せても大丈夫?

特集

ジェンダー化された役柄、性差別主義を反映した登場人物……ディズニーアニメが多くの批判を浴びている。とはいえ、子どもたちからは相変わらず絶大な人気だし、大人になってもディズニー映画をときどき見返すのは楽しいもの。白雪姫とMeToo世代は共存できるのだろうか?ふたりの専門家が答える。

peut-on-encore-regarder-des-disney-2 .jpg白雪姫とMeToo世代は共存できるのだろうか? photo: Getty Images

チャーミングな王子様のキスで生き返った白雪姫は、キスに同意していた? いやしていない。だって意識がなかったのだから。

こう論じるのはアメリカのジャーナリストでフェミニストのジュリー・トリメインとケイティ・ダウドのふたり。彼女たちが問題視するのは、サンフランシスコのディズニーランドでリニューアルオープンした、白雪姫のアトラクションの中の「真実の愛のキス」のシーン。いまのところアトラクションの中止や抗議行動を呼びかける動きは起きていないものの、ディズニーアニメに対して次第に大きくなる批判に、またひとつ声が加わったことになる。批判の筆頭に上がっているのは、性差別の問題だ。

人々の意識とともに社会は変化する。か弱いプリンセスが立派な軍馬にまたがった王子さまに救われる……ハリウッドの伝説的アニメスタジオのおなじみのシナリオに憤慨する人は実際のところ少なくない。そこにひとつの疑問が生まれる。ディズニーアニメは、本当に見続けてもいいのだろうか?臨床心理士で『アニメの精神分析』(1)の著者であるジュヌヴィエーヴ・ジェナティと、フランス国立科学研究センターに所属する社会学者で『男子教育を見直したら?』(2)の著者であるクリスティーヌ・カステラン・ムニエに意見を聞いた。
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――ディズニーアニメのシナリオが社会の進歩とこれほどずれているように見えるのはなぜでしょうか?

クリスティーヌ・カステラン・ムニエディスニーの登場人物は多くの分野、とくに民事的、社会的権利の面で女性の立場が男性に比べて低かった時代に生まれています。ですから、これらのアニメの原作には女性を“支配される存在”と位置づけていた時代の背景が反映されているわけです。ディズニーアニメで男女間に大きな隔たりがあるのもそのためです。

――つまり、ディズニーアニメの登場人物が表現するのは過去の世界ということでしょうか?

クリスティーヌ・カステラン・ムニエ:その通りです。眠れる森の美女、白雪姫、シンデレラ、どのヒロインも王子様に助けてもらう受動的な存在。『シンデレラ』ではさらに、継母と義理の妹たちの描き方を通して、女性は意地悪でライバル意識が強いというイメージが表現されています。これは、女性同士の連帯と行動によって状況を変化させてきた現実の女性たちの姿と相反するもの。

また、男性の登場人物もステレオタイプです。男性たちは王子様か悪者のどちらかで、いずれにせよ強く、戦う権利がある。彼らの立場は明確に序列化されています。その点で言えば、ディズニーの男性の登場人物は多くの場合、社会階級の頂点に属しています。一方、女性は一般的に低い階層に属しており、結婚しない限り、社会的条件は変わりません。

したがって女性たちは美しくなければならないのです。いずれにせよ器量が悪い女性はみな意地悪なので、誰もお嫁に欲しがりません。女性たちが自分の境遇から脱することを可能にするのは美しさなのです。

――ディズニーアニメを子どもたちに見せるのは、子どもたちに性差別的、ジェンダー的な固定観念を植え付けることになるのでしょうか?

ジュヌヴィエーヴ・ジェナティ:私たちは大人の言語と子どもの言語を混同しがちです。そして、誰もが見たものを同じように解釈すると誤解しています。おとぎ話が力を発揮するのはまさにその部分。人はそれぞれ、固有の経験に基づいて、物語の中に違ったものを見ています。それは成長しても同じこと。現実と子どもの想像の世界を混同してはいけません。子どもが関心を向けるものは大人とは違います。
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――でも、女の子がプリンセスを演じ、プリンセスのような格好をするのを見ると、同一化しているアニメの登場人物になろうとしているように思えますが

ジュヌヴィエーヴ・ジェナティ:彼女たちは真似ごとをしているのです。死を演じたり、生きている者を演じたりするのと同じように。「これはごっこよ」と子どもは言いますが、彼らにはおとぎ話と現実の区別がついています。それらを混同するのは健康でない場合です。子どもたちがしていることは模倣にすぎません。登場人物の身体的特徴ではなく、心的特徴に同化しているのです。

ディズニーアニメも他のアニメの多くも、人間関係が「どうやって」構築されるのかという問いを子どもに喚起します。たとえば『白雪姫』では、ライバル関係や自分を傷つけようとする他者の思惑をどう乗り越えるかがテーマ。シンデレラは逆境の中で困難を乗り越える子どもの希望を体現しています。決意するのに相応しい時期が来るのを待ちながら、状況に適応する能力を持った女の子たちです。

――では子どもたちにディズニーアニメを禁止するのは間違っているということですか?

ジュヌヴィエーヴ・ジェナティ:はい。それにディズニーアニメを見てフェミニスト活動家になる人もいます。それこそジェンダーに対する考え方の変化を示す例です。女の子たちがプリンセスを演じるのは、厳しい現実から一瞬自分を解放してくれるからでもあります。

クリスティーヌ・カステラン・ムニエ:少女たちは、年齢にかかわらず、この複雑な時代に生きることの大変さからひと休みするために、そして自由な女の子として、そして将来は解放された女性として生きるために動かさなくてはならないたくさんの事をいったん忘れるために、おとぎ話を必要としているのでしょう。

――ディズニープラスで配信されるアニメのなかには、冒頭に警告メッセージが表示されるものもあります。動画に「不適切なステレオタイプ」が含まれていることをはっきり知らせながらも、「コンテンツを削除するのではなく、議論をすること」を望む、と付け加えています。またこうした警告メッセージが表示されるアニメは、子どものアカウントではなく、成人のアカウントからしかアクセスできないようになっています。これについてはどうすか?

ジュヌヴィエーヴ・ジェナティ:確かに、子どもが見たアニメについて子どもと話し、問題を提起するのは親の責任です。アニメを最初に視聴する時は、大人と一緒に見るべきです。そしてアニメを見て考えたことを子どもに言葉で表現させることが大切です。ですから4歳に満たない子どもにアニメを見せるのはまったく意味がありません。そもそも低年齢の子どもは、長編アニメを最後まで見られるほど集中力がもちませんし、視聴後に議論をする力もまだありませんから。

クリスティーヌ・カステラン・ムニエ両義的なアプローチではありますが、視聴者に責任を持たせることは必要です。実際にこうした発想は、リラックスや娯楽といった概念や、視聴者が求めている受動的な視聴というスタイルと矛盾します。現代は過渡期であり、社会は常に私たちに警戒を呼びかけています。それは疲れることでもあります。闘いを放棄しないために、ときには手放しで生を楽しむことも必要です。ただ距離を取る必要はあります。滑稽な過去が描かれていると知った上で、ディズニーアニメを見ることはできます。歴史の本のようなもの、過去の痕跡のようなものとして。

――スタジオ・ジブリのアニメや漫画など、ディズニー以外にも選択肢はあります。白雪姫やシンデレラを見せるのをいっそやめて、もののけ姫や千尋といった個性的な人物が登場するアニメを見せるのはどうでしょうか?

ジュヌヴィエーヴ・ジェナティ:完全に置き換えてしまうより、どちらも見せるほうがいいと思います。さまざまなものを見せることが大切です。生き方や人間関係を違った視点から描くアニメもあるからです。子どもを豊かな文化環境で育てれば、それだけ多くの選択肢を与えることになります。1本の映画を見ただけで、人種差別主義者や性差別主義者になることは絶対にありません。それはむしろ家族の教育の問題。親の姿勢こそ決定的な要因です。

親が小さな娘に様々なタイプの主人公を見せても、娘自身は白雪姫がいちばん好きという場合もあるでしょう。それを選んだのは、それがいま自分を幸せにしてくれるものだからです。映画は社会を反映していることもあれば、そうでないこともあります。ですから大切なのは現実の人生において何を提示するかです。

クリスティーヌ・カステラン・ムニエ:理想は、多文化的アプローチでしょう。多様性という波を乗りこなしながら、子どもは自分で考え、複雑な社会の中で自分の立ち位置を見つけます。それは子どもたちの教育や幸福の構築という点でも、決して悪いことではありません。子どもたちに伝えること、存在するたくさんのイメージ、学校での社会的文化的なミックス、家庭での生活、それらすべてが絡み合って子どもの人格が作られていきます。幸福の学校とは、想像力と、反応と、大人との意見交換によって作られるものです。

(1)Geneviève Djenati著『Psychanalyse des dessins animés』Pocket出版刊。222ページ、6,95ユーロ
(2)Christine Castelain Meunier著『Et si on réinventait l’éducation des garçons』Nathan出版刊、95ページ、9ユーロ

 

text: Camille Lamblaut(madame.lefigaro.fr)

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