リリベットは愛称だけどアーチーは?欧米の名付け事情

Culture 2021.07.01

ハリー王子とメーガン夫人は、娘の名前に曽祖母であるエリザベス女王の愛称を選んだ。これからの流行の兆しなのか? フランスをはじめとした欧米の子どもの名前のトレンドについて、『L'Officiel des prénoms(名前年鑑)』の共同著者であるクレール・タバルリー=ペランが分析する。

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愛称を名前にする流行が何を明らかにするのか?photo : Getty Images

6月4日、メーガン夫人ハリー王子は第2子となる女の子を迎え、リリベット・ダイアナと名付けた。彼女のいとこにあたるキャサリン妃ウィリアム王子の子ども達に与えられた、ジョージシャーロットルイというクラシックな名前とはかけ離れたチョイスだ。

この名前は、曽祖母であるエリザベス女王の愛称からインスピレーションを得ている。というのも女王陛下がまだ子どもだった頃、そしてその後は夫であるフィリップ王配にこう呼ばれていたからだ。

愛称や略称、ニックネームを名前に使うことは、欧米ではかなり広まっている現象だ。一方で、たとえニックネームのように思えても、それが忘れ去られていた古い名前の場合もある。メーガンとハリーの長男の名前アーチーもそのケースに当たる。『L'Officiel des prénoms(名前年鑑)』の共同著者であるクレール・タバルリー=ペランが分析する。

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かつての傾向

エリザベスの略称であるリリベットは、英語圏では(まだ)一般的な名前ではない。一方、フランス語読みの「エリザベット」の略称であるリザやエリザは、フランスでは一般的な名前だ。

略称やニックネームを名前にするのは実は新しい傾向ではない。これは古代ローマ帝国時代にまでさかのぼることができる。「彼らには3つの名称がありました。名前、苗字、ニックネームです」と、タバルリー=ペラン。

名前の選択肢が少なかった時代、誰について話しているかを明確にできるニックネームは苗字の起源となった。例えば、オーギュスト(*ラテン語で「立派な」という意味を持つ)はもともと皇帝の名前に並べて使われていた形容詞であった。「それが正真正銘の名前となり、フランスではトップ100に入るほどの人気です」とこの専門家は付け加える。

かつては『至福』を意味するニックネームであったフェリックス、ジャン・ル・バチスト(*フランス語「洗礼者ヨハネ」の意)に由来するジャン=バチストもその例に挙げることができよう。

リリベットと同様の流れでは、マルゴもフランス王妃であったマルグリット・ド・ヴァロワに与えられたニックネームであった。また、イギリスをはじめ英語圏で人気のヴァネッサは、アイルランドの詩人ジョナサン・スウィフトが、エッサというニックネームであった彼の愛するエスター・ヴァナミリーの名前と苗字の略称から作り出した名前である。

これらのニックネームや略称はいま流行している名前の特徴に呼応していると、タバルリー=ぺランは説明する。「名前には本当の意味での創造性があります。人々は必ずしもニックネームを探しているのではなく、どちらかというと現代性や音の響きに関心があり、まさにニックネームの中にある『i』や『a』のような音の響きを好んでいるのです」と指摘する。

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テオ、マックス、そしてトム

いくつかの短い名前は略称のようにも思えるが、実際には古くからある名前だ。例えばラテン語を由来とし、『ライオン』を意味するレオは、レオポルドの起源となり、その反対の順序ではない。

同じようにギリシャ語で『神』を意味するテオは、テオフィルやテオドールなど全ての変形を作り出すためのインスピレーションを与えた。マックストム、さらにゲルマン語が起源の名前であり、アーシバルドのインスピレーション源となったアーチーも実際には古くからある名前として挙げることができる。

その一方で、正真正銘の愛称を由来としている名前もある。例えば男女共通の名前としてフランスでは非常に人気のあるルー。「2020年にはフランスの女の子に与えられる名前の22位でした」とクレール・タバルリー=ペランは明らかにしている。これはルイーズやルイではなく、ケルト語が起源のエルアンやルアンヌから由来している場合が多い。

アレックスに関してはアレクサンドルやアレキシスの略称である。いくつかの略称は国境も超えている。例えばローラは『苦悩』を意味する『dolor』から派生したスペイン語圏の名前ドロレスの略称である。ローラは1980年代にフランスに登場し、2010年には5千人を下らないほどの数になった。

人気の高まっているティアゴは『サン=ジャック』(*フランス後で「聖ヤコブ」の意、スペイン語でサンティアゴ)を意味するサンティアゴの略称だ。やはり男女共通の名前であるチャーリーは、シャルルやシャルロットの略称である。同じように英語圏の影響を受けた名前として、サミュエルのであるサムがある。

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革命暦

「自然が由来のいくつかの名前も、もともとはニックネームでした」とタバルリー=ペラン。例えばポム(*フランス語でりんごの意)は、その名を持つフランスの若手ミュージシャンとともに最前線に戻ってきた。もしくはミルティーユ(ブルーベリー)、アマンディーヌ(アーモンドケーキ)、プリュンヌ(プラム)などもある。

「これらは革命暦から生まれた名前です。フランス革命の際にカトリックの聖人の名前を廃止しようという動きがあり、これらに置き換えられたのは、多くの場合、自然に由来するものでした」とタバルリー=ペランは付け加えている。それ以来、これらの名前は若い親たちの精神の中で熟していったのである。

text : Camille Lamblaut (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuko Tanaka

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