2021年 第74回カンヌ国際映画祭 美しき聖女のスキャンダラスな作品、カンヌで物議。

Culture 2021.07.11

パンデミックによる中止、そして度重なる延期を経て7月6日にフランスで開幕したカンヌ国際映画祭。フランス「Madame Figaro」が現地の様子をレポートします。

<<3日目のレポートはこちら

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レッドカーペット4日目。

7月9日、『Benedetta』の主演女優がレッドカーペットに登場した。スキャンダルの予感漂うポール・バーホーベン監督待望の新作がついにクロワゼットに上陸!

【写真】メンズにも注目!のレッドカーペット4日目。

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レッドカーペットに登場したクロティルド・クロー、ヴィルジニー・エフィラ、ポール・バーホーヘン、ダフネ・パタキア。(カンヌ、2021年7月9日) photo : Getty Images

スキャンダラスな香りに包まれた『Benedetta』は、今回の映画祭のコンペ作品の中でも、最も期待される作品のひとつ。17世紀の修道女の禁断の愛をめぐるこの作品で主演を務めたのはヴィルジニー・エフィラだ。

7月9日のパレ・デ・フェスティバルのレッドカーペットは神秘的な雰囲気に包まれていた。まず、修道院からそのまま出てきたような、フードを被った女性のシルエットが現れる。ヴィルジニー・エフィラではない。ティナ・クナキーだ。赤いリボンを結んだライラック色のドレスに身を包んだティナは、巫女のような神秘的な雰囲気を漂わせる。このまま大聖堂で儀式を執り行えそうな厳粛さだ。

続いて登場したのは、イレーヌ・ジャコブ。クシシュトフ・キェシロフスキ監督の代表作『ふたりのベロニカ』でヒロインを熱演した女優だ。54歳になるイレーヌは映画のリマスター版のプレゼンテーションのためにカンヌを訪れた。本作の演技で一躍脚光を浴びたのは30年前のこと。1991年のカンヌ映画祭では主演女優賞を受賞している。

映画の怪しげな評判に惹かれて、文化大臣ロズリーヌ・バシュロも『Benedetta』上映会場に駆けつけた。大階段の手前でジャーナリストのディディエ・アルーシュのインタビューに応じた大臣は「きな臭い作品のようですね」とコメント。

続いてベレー帽を被った審査員長のスパイク・リー監督とトーニャ・ルイス・リー夫人とともに、審査員団がそろって登場。審査員メンバーのマギー・ジレンホールが、この日さっそく最初の審査員会議が開かれたことを明かした。

しかしドラマシリーズ「ザ・クラウン」の大勢のファンの目は、シーズン3、4でチャールズ皇太子を演じているイギリス人俳優ジョシュ・オコナーに集中。パステルピンクのスーツを着たジョシュの登場で観客は一斉に沸いた。

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黄金の衣に身を包んで

次の瞬間、通りで歓声が上がった。今度こそヴィルジニー・エフィラだ。ディオールのデザインの金のラメ入りケープドレスに身を包み、輝くばかり。厳格な修道服を脱ぎ捨て、しなやかに波打つドレスに身を包んだ彼女は、バーホーベン監督の耳元で何ごとか英語でささやく。

マドンナを思わせる顔立ちの42歳のヴィルジニー。『Benedetta』では、17世紀のトスカーナに実在した、神秘主義とホモセクシャルの罪に問われた修道女ベネデッタ役を演じた。ベネデッタが恋情を抱く若い修道女役には、将来有望なベルギー人女優ダフネ・パタキアが抜擢された。ダフネのほか、クロティルド・クローとオリヴィエ・ラブルダンらの共演者も顔をそろえた。

「この映画は永遠に公開されないのではないかと思った」とヴィルジニーは言う。撮影が行われたのは3年も前だ。2019年に監督が健康を害し、その後にパンデミックが続いたことで、映画の公開は延期された。「映画を観客に届けるまでの2年半、待ちきれない思いだった」と82歳のオランダ人監督は語る。

でも待った甲斐があった、とヴィルジニー。「物語を語る上でこの上なく若々しく自由な映画人」の下で過ごした3カ月の撮影期間はいまも忘れられない、と喜びの表情で語った。

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エスコート役

2019年5月24日、前回のカンヌ映画祭に登場した折、ヴィルジニーはレッドカーペットであわや転倒という事態に見舞われ、周囲をどきっとさせた。原因は解けやすいサンダルの紐。パートナーのカナダ人俳優ニール・シュネデールがさっとひざまずいて紐を結び直し、エスコート役として立派に務めを果たしたのだった。

今夜もその彼がダブルスーツを纏ってレッドカーペットで控えめに彼女を見守っている。上映会場ではヴィルジニーのすぐ後ろに着席。ヴィルジニーは会場の照明が落ちる前に後ろを振り返り、ニールに目配せを送る。順風満帆のカップルだ。聖ヴィルジニーよ、私たちの幸せのために神に祈って!

text : Isabelle Boudet (madame.lefigaro.fr)

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