美学を持つ人たちの選ぶ、美しい本。 社会的概念を取り払った時に訪れる、美しき瞬間とは。

Culture 2021.08.26

美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。

映画監督の横浜聡子さんが選んだ1冊はレイモンド・カーヴァー著『大聖堂』。この作品に横浜さんが見いだす美しさとは?


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社会のレッテルを外して起こる、調和と奇跡。

『大聖堂』

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レイモンド・カーヴァー著 村上春樹訳 中央公論新社刊 ¥1,650

「自分の妻の古い友人である視覚障害者の男性が家を訪ねてくる、ある一夜の短い物語。最初はその男性を警戒して足元を見るような接し方をしていた主人公ですが、妻が眠り、ふたりきりになって気まずく思っていると、ある作業を一緒に行うことに。やがて、かつて経験したことのなかった奇跡のような瞬間が突如、訪れる。障害者や健常者、地位といった閉じた社会的概念が取っ払われたところで、ひとりの人間と人間の間に流れる不思議な調和的瞬間が、息をのむほど美しい。簡素な言葉を紡いで構築されているカーヴァーの文章を読んでいると、言葉が感覚にダイレクトに注ぎこまれ、いつの間にか別の場所に来てしまったような感動をいつも覚えます」

横浜聡子映画監督
SATOKO YOKOHAMA
出身地の青森でオールロケを敢行した最新作『いとみち』が6月18日に青森先行、25日に全国で公開。

※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋

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