美学を持つ人たちの選ぶ、美しい映画。 会いたい人に会えない、いまこそ見たい美しき名作。
Culture 2021.08.27
美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。
インテリアスタイリストの作原文子さんが選ぶのは、ニック・カサベテス監督の『きみに読む物語』。この作品に作原さんが見いだす美しさとは?
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いまだからこそ見つめ直したい、深い愛の奇跡。
『きみに読む物語』
「この作品は、“大切な人のそばにいる”ことに、さまざまな形があることを教えてくれています。人生には悲しみや苦しみがつきものですが、たとえ距離が離れていたり、意思疎通がうまく取れない状況に陥ったりしても、気持ちや心が相手のそばにあれば、奇跡だって起こせる。そんな表現に、美しさを感じました。コロナ禍で日常の“当たり前”がなくなり、会いたい人に会う、行きたい場所へ行くにも、我慢が必要になる経験をしているいま。だからなのか、この作品から、あらためて大切な人へまっすぐに注がれる深い愛情が持つエネルギーや、いつか自分にも訪れるかもしれない試練に立ち向かう勇気のようなものを感じます。そして、ただただ胸がいっぱいになるのです」。妻を愛し続ける誠実な男性をライアン・ゴズリングが好演。映画史上最高とも評されるキスシーンは必見。
『きみに読む物語』
●監督/ニック・カサベテス
●2004年、アメリカ映画
●123 分
作原文子(インテリアスタイリスト)
FUMIKO SAKUHARA
映画美術も手がけ、『私をくいとめて』ではコロナ禍での海外ロケ中止を受け、ローマの部屋まで見事に再現。
FUMIKO SAKUHARA
映画美術も手がけ、『私をくいとめて』ではコロナ禍での海外ロケ中止を受け、ローマの部屋まで見事に再現。
※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋
text: Misaki Yamashita