ロンドンから、話題のヌード展が横浜にやってくる!

Culture 2018.03.29

西洋美術史を挑発した、裸の身体と人間性へのアプローチ。

『ヌード NUDE−英国テート・コレクションより』

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オーギュスト・ロダン『接吻』(部分)1901–04年。ペンテリコン大理石。「恋愛こそ生命の花」と語ったロダンの情熱が、等身大を超える裸体が絡み合うさまにみなぎっている。

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ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手』「 スイス人物」スケッチブックより。1802年。黒鉛、水彩。

 ロンドンのテート・コレクションの企画による『ヌード』展が世界を巡回し、横浜にやってくる。西洋美術史上、最も普遍的で挑戦的な主題のひとつであるヌードを8章のテーマ別に考察する。本展最大の見どころは、「エロティック・ヌード」の章。海洋の画家ウィリアム・ターナーが密かに描いていた “幻”のヌードは、幼い娼婦と客の密室の行為をさすがの動体視力で活写しつつ、そのデリケートな余韻を詩的に捉えている。オーギュスト・ロダンが騎士と貴婦人の伝説をもとに、数々の女性と浮き名を流した彼自身のエロティシズムの発露を表現した大理石彫刻『接吻』は、等身大以上の大きさで男女の身体が狂おしく絡み合う肉感的表現に圧倒されるはずだ。

 それ以上に強烈な後味を残すのは、女性のアーティストたちによる、デリケートかつ大胆にヌードを扱ったコンセプチュアルな作品たちだ。「肉体を捉える筆触」の章では、ルイーズ・ブルジョアが女性独自の身体性と社会的位置づけを深紅の“染み”で表現したドローイングの鮮烈さに魅了されてしまう。さらに最終章「儚き身体」では、男性社会のステレオタイプな女性像に扮してきたシンディ・シャーマンが、グラビア撮影を終えたばかりのピンクのバスローブを纏ったヌードモデルを演じるセルフポートレートと、リネケ・ダイクストラが出産直後の消耗しきった女性たちのヌードを捉えたシリーズが対比的に展示され、無防備な身体の脆弱さと強さを際立たせている。

 ヌード表現の系譜とともに、生身の身体という“殻”を守りながら、愛でてもてはやし、扱いあぐねてきた人間の意識の変化をも俯瞰している、鋭い批評性に富んだ展覧会だ。

『ヌード NUDE−英国テート・コレクションより』
会期:2018/3/24〜6/24
横浜美術館(神奈川・横浜)
10時〜18時(5/11、6/8は〜20時30分)
休)木(5/3は開館)、5/7
一般¥1,600

●問い合わせ先:
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://artexhibition.jp/nude2018

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*『フィガロジャポン』2018年5月号より抜粋

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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