東京都現代美術館の膨大なコレクションを新鮮な視点で。

Culture 2019.04.16

100年におよぶ近現代美術コレクションに見る、日本人のリアル。

『百年の編み手たち ─ 流動する日本の近現代美術 ─ 』

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森村泰昌『肖像(少年1、2、3)』1988年。マネの名画の人物に扮した連作。西洋中心的美術史観への痛烈な皮肉が含まれている。

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加藤泉『Untitled』2013年。エキゾティシズムやプリミティビズムで片付けようとする見方を溶解させるほど、力強い原初的人間観。

 改修を終えて約3年ぶりにリニューアルオープンを迎える、東京都現代美術館。これを記念して同館のコレクションを紹介する大規模な企画展が開催される。コレクションの歴史は約100年前に遡る。大正末年から同時代の美術に注目してきた上野の東京都美術館の収蔵作品およそ3000点が、リニューアルオープンとともに移管され、その後、現在までの収集作品2400点あまりを合わせた約5400点におよぶコレクションで構成されている。

 本展では、1910年代から現在までの日本の美術を「編集的」な視点で読み解き、新たな切り口で再考する。それぞれの時代の「編み手」である作家たちは、否が応でも影響を受けざるをえなかった欧米中心のアートに対する「日本の美術のありよう」と、自身のアイデンティティの拠り所を探求してきた。たとえば、名画や歴史的人物になりすましたセルフポートレートで高く評価される森村泰昌は、その代表的な作家である。いっぽうで、西洋美術史の文脈にかかわらず新しい息吹をもたらす創造性によって、国際的に注目を浴びた作家がいる。土俗信仰の偶像を思わせる裸の幼児のような人物画や彫像により、ハイブリッドな人間観を表現する加藤泉がそうである。

 本展では日本の作家たちの活動を、オーソドックスな美術史の体系や揺るがぬ史観に基づくものではなく、実験的な「編集」を通して、社会と関係を切り結んできた過程と捉えている。たとえそれが「創造的ガラパゴス化」とも言える日本独自の成熟の過程であったとしても、日本人の現在地とリアリティを示唆するならば、私たちは真摯に直視するべきだろう。

『百年の編み手たち ─ 流動する日本の近現代美術 ─ 』

会期:開催中〜6/16
東京都現代美術館(東京・清澄白河)
10時〜18時
休)月(5/6は開館)、5/7
一般¥1,300
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.mot-artmuseum.jp

※『フィガロジャポン』5月号より抜粋

réalisation:CHIE SUMIYOSHI

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