杉本博司の大規模個展が、初めて京都の美術館で開催。

Culture 2020.06.09

独自の歴史観が導く、人間と非人間の共存。

京都市京セラ美術館開館記念展『杉本博司 瑠璃の浄土』

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『硝子の茶室 聞鳥庵(モンドリアン)』2014年。ヴェルサイユ宮殿での個展で発表された透明な茶室が、一般公開された日本庭園の池に忽然と現れた。

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『OPTICKS』京都市京セラ美術館開館記念展『杉本博司 瑠璃の浄土』展示風景より。

いにしえの時代、6つの大寺院が存在したと伝えられる京都・岡崎の地に建つ京都市京セラ美術館がリニューアルオープン。新館長を務める建築家・青木淳と西澤徹夫によるデザインは、文化財保存の原則を堅牢に保持しながら、芸術と人との距離の「のりしろ」をフレキシブルに広げ、その自由度をダイナミックに拡張した。

こけら落としである杉本博司展は、杉本の数多の個展のなかでも特に潔くテーマ
性を切り出した展示構成となった。「瑠璃の浄土」を主題に仮想の寺を構想した展示空間には、考古学や博物学の埒外にある杉本独自の歴史観が展開されている。「瑠璃」とはラピスラズリーという鉱物固有の群青色、転じて硝子などを表す。古代から人の心を捉えてきたこの不思議な物質の魔力に、杉本自身も深く魅入られてきたという。本展では、光学硝子を用いて色そのものを捉えた『OPTICKS』シリーズを世界初公開。中庭には硝子の茶室がしつらえられた。さらに初公開の三十三間堂『中尊』を含む連作『仏の海』、勾玉、リビアンガラス、イミラック隕石といった考古遺物のコレクションなどで構成される。

時間の概念、人間の知覚と意識、そして世界の起源について問いかけてきた杉本の作品世界。地球規模の危機に直面するいま、奇しくもその考察を通して見つめ直すのは、人間と非人間の共存によってこそ得られる真の平穏だろうか。

※当面の間、前日までの事前予約制。6/18(木)までは京都府民限定。詳細は下記ホームページよりご確認ください。

京都市京セラ美術館開館記念展『杉本博司 瑠璃の浄土』
会期:開催中~10/4
京都市京セラ美術館(京都・岡崎)
営)10時~18時
休)月
料)一般¥1,500
tel:075-771-4334
https://kyotocity-kyocera.museum

*『フィガロジャポン』2020年7月号より抜粋

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réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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