IQじゃない! 習い事で伸ばすべきは「非認知能力」。

Culture 2021.02.26

From Newsweek Japan

2000年にノーベル経済学賞に輝いたアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士によって注目されるようになった「子ども時代の非認知能力」。IQだけで測定できない知能を伸ばすために、やった方が良いこと・ダメなこととは?

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photo:metamorworks-iStock

子どもが4〜5歳になると多くの家庭が「習い事」を考え始めます。そもそも子どもに習い事をさせる「目的」は何なのでしょうか?「周りの子どもがみんなやっているから」「親がやらせたいから」という他人本意の理由で習い事に参加させても長続きしないことが多いのは周知のことです。

習い事の目的は、「非認知能力の育成」

私の学習塾に通う保護者に聞き取り調査をした所「子どもの可能性を広げるため」という声がいちばん多く聞かれました。しかし、スポーツ、音楽、演劇、アートなど、数ある習い事の全てを経験させることは不可能です。また、色々な分野を経験させたいからと、次々に習い事を変える(やめさせる)ことは、子どもにとって「失敗体験」になり本末転倒です。

私は、習い事の目的は「非認知能力の育成」であると考えています。非認知能力というのは、チャレンジ精神、協調性、粘り強さ、自制心、コミュニケーション力など、知識や技能を習得したり、物事を成し遂げたり、良い人間関係を形成するために不可欠な力の総称で「心の知能指数(EQ)」や「ソフトスキル」とも呼ばれます。

非認知能力が注目されてきた背景に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士の研究があります。これは子ども時代に身につけた非認知能力の高さが、将来の学歴、キャリア形成、経済的な安定度に関係することを明らかにしたものです。

知能(IQ)と非認知能力は車の両輪のような関係です。どちらかに偏っていると車はまっすぐに進むことができません。両方をバランスよく育てることができれば、子どもは学力と人間力を兼ね備えたたくましい人材へと成長していきます。

非認知能力はひとりで机に向かって勉強しているだけでは身につきません。集団の中で周囲の人と力を合わせたり、競争したり、失敗したり、困難を乗り越えたり、共通のゴールに向かって努力を継続する経験が必要です。これを実現するにはスポーツを始めとする「集団の習い事」に参加するのがいちばんなのです。

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集団の習い事が、コミュニケーション力を伸ばす。

日本では子どもの習い事というと、水泳、バレエ、ピアノなど個人で行うものからスタートすることが多いですね。不慣れな集団の中で、まだ技能の未熟な子どもが萎縮したり、いじめの対象になるリスクを避けたいという心理が保護者に働いているのかもしれません。しかし非認知能力を鍛えるという点から考えると「集団の習い事」への参加が望ましいと言えます。

集団活動を通して子どもは仲間とのコミュニケーションを密にしていきます。周囲としっかりコミュニケーションできなければ、チームとしてまとまりを欠き、試合やコンテストで勝つことができません。子どもたちは共通の目標に向かって互いにコミュニケーションを取り合うことの大切さを集団活動から学ぶことができるのです。

近年の情報化によってパソコンやスマートフォンを通して人と関わり合うことが当たり前になりました。さらに小子化や都市化によって、性別や世代を越えた多様な人と親密に関わり合う機会が少なくなりました。社会が急激に変化する中で、人と関わることが苦手、友だちを作ることができない、異性とのコミュニケーションがとれないという子どもが増えています。

これからの社会において子どものコミュニケーション力を鍛えるには「集団の習い事」に参加することが手っ取り早い方法です。この時に大切なのが、習い事が早く上達するように家庭でアシストすること。親が基礎練習に付き合い、子どもが早く上手くなれば、自信が大きくなり、伸び伸びと習い事を楽しめるようになります。

習い事は子ども自身が意欲を持って挑めるものを選ぶことが理想です。ただ年齢の小さい子どもは自分の「強み」や「特性」に気づくことはできませんから、子どもに合いそうな習い事を親が見つけて、紹介してあげてください。そして技能を周囲よりも少しだけ高めてあげて「自信」を大きくしてあげるのです。

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非認知能力を伸ばすポイントは、「長く続けること」

東京成徳大学の夏原隆之助教授が、小学3年生〜中学3年生までの1581人を対象に実施した「子どもの非認知スキルの発達とスポーツ活動との関連性」調査で、スポーツ経験のある子どもは、自制心、忍耐力、目標指向などの非認知能力が未経験者に比べて高いことがわかりました。

また個人スポーツよりも集団スポーツの経験者が非認知能力が高い傾向があること、さらに、スポーツ活動歴が長い子どもほど非認知能力が高くなる傾向があることが分かりました。

この調査はスポーツに限っていますが、非認知能力は、演劇、ダンス、吹奏楽、合唱など、アート系の集団の習い事でも鍛えることができます。どんな習い事に参加しようとも重要なのは「長く続ける」ことです。

習い事をしていれば子どもが「やめたい」と言うこともあるでしょう。でも簡単にやめさせてはいけません。子どもは「続けること」の大切さを理解できていないのです。大人になってから「あの時やめなければよかった」と悔やむ人生ほど後ろ向きなものはありません。

子どもが「やめたい」と言ってきた時は、冷静に「技能」と「やる気」を見極めて、継続するかどうか、賢い判断をしてください。その習い事が明らかに子どもに向いていないのであれば、やめることも選択肢です。習い事で失敗体験や嫌な思いを繰り返しているようでは「自信」は育ちません。

まだ子どもに「やる気」が残っている場合、あるいは、努力次第でその習い事が上手くなる望みがある場合は「やめさせてはいけません」。家庭で親が練習に付き合ったり、個人レッスンを受けさせて、技能を少しでも上達させる努力をしてください。

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ハワード・ガードナー博士の「多重知能理論」とは?

子ども時代を通して集団の習い事に取り組み、共通の目標に向かって仲間たちと切磋琢磨する経験を積むことが、子どもの人間形成に悪いはずがありません。

コツコツ努力する根気強さ、失敗を恐れずチャレンジする精神、仲間と助け合う心、あきらめない忍耐力、プレッシャーに負けない精神力、チームの一員としての責任感、コーチやサポートしてくれる人への感謝心。集団の習い事を通して得られる非認知能力は、子どもの人生をより豊かなものへと導いてくれるはずです。

子どもに合う習い事を見つける方法について、ハーバード大学教授、ハワード・ガードナー博士の「多重知能理論」をご紹介します。ガードナー博士は言います。「人の知能をIQだけで測定することはできない。人間には多重な知能がある。だから人には得意なこと、不得意なことがあるのだ。」

人にはそれぞれ長所や短所があるように、ある知能が強かったり、ある知能が弱かったりします。子どもの優れた知能(長所)を見極め、知能に合ったアプローチ(習い事や勉強方法)をすることで、子どもの才能を大きく伸ばすことができます。ガードナー博士が提唱する「IQ以外の知能」は以下の8つです。

言語・語学知能(言葉への感性が高い)演劇など
倫理・数学的知能(論理的思考、数字への感性が高い)ロボティックスなど
視覚・空間知能(視覚的、空間的認識が得意)レゴリーグなど
身体・運動知能(運動能力が高い)スポーツ全般
音感・リズム知能(音感が優れている)ダンスや音楽など
人間関係形成知能(人と関わることが好き)集団活動全般
自己観察・内省知能(自立心が高い)リーダーシップを発揮できる活動
博物学的知能(環境、自然、動物に関心が高い)スカウト活動など

子どもが普段どんな知能を働かせているのか、どんな分野で才能を発揮できるのか、上記の「8つの知能」を参考に考えてみてはいかがでしょうか。

[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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texte:TORU FUNATSU

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