横尾忠則さんが語る、
『マン・レイ展』の魅力。

Culture 2010.08.16

現在、国立新美術館で開催中の『マン・レイ展~知られざる創作の秘密』。
写真から絵画、彫刻、デッサンまで、多岐にわたる創作のなかから約400点を展示。マン・レイというアーティストの全貌に迫る展覧会だ。

0811news_yokoo_1.jpg『セルフ・ポートレイト』1924年(プリント年不詳) ゼラチン・シルバー・プリント
All Man Ray Works 2010 © Man Ray Trust

日本では写真家としての印象が強いが、絵画や彫刻においても、モダンアートの先駆者として活躍していたマン・レイ。今回の展覧会は、彼の生涯を「ニューヨーク(1890-1921)」、「パリ(1921-1940)」、「ロサンゼルス (1940-1951)」、「パリ(1951-1976)」の4つに区切り、時代に沿ってマン・レイの作品とそのインスピレーション源を展示するという構成。

0811news_yokoo_2.jpg『無題(黄金の唇)』 金

0811news_yokoo_3.jpg『障害物』1920年(1964年)リトグラフ

0811news_yokoo_4.jpg『ことわざ』1944年(1973年)ブロンズ

そのマン・レイの作品のなかでも、特に絵画が好きというアーティストの横尾忠則さん。先日、展覧会場では横尾さんを招いてのトークショーも行われた。その横尾さんに、figaro.jpが独占インタビュー。

――初めてマン・レイの作品に出合ったのはいつ頃ですか?

20代の頃です。

――横尾さんご自身は、80年代以降に"画家宣言"をして、グラフィックデザイナーから画家に転向されました。その頃、マン・レイの活動を意識されていましたか?

マン・レイの自伝、『セルフ・ポートレイト』(文遊社刊)は読んでいました。僕が絵を描き出したのは80年代に入ってからだから、当時日本語版がもう出ていました。

――転向してから、画家への切り替えがうまくできなかった時期があったとおっしゃっていましたが、いちばん大変だったことは?

自分でテーマを持つということが、グラフィックデザイナーのときにはなかったんです。先方がテーマを僕に与えてくれる。でも絵を描くとなると、自分がテーマを持たなければならない。自分のスタイルをつくることにずいぶん時間がかかり、足踏み状態が続きましたね。マン・レイは、写真家ではなく画家として認められたいと切望していた。僕も画家になったのが45歳と遅かったので、いつまでもデザイナーと呼ばれていた。だからマン・レイの葛藤に共感するものがあり、私淑していました。

――マン・レイの作品で、写真と絵画の相乗効果をどのようなところに感じますか。

当時恋人だったモデルのキキ・ド・モンパルナスにアングルの絵をポーズをとらせた『アングルのヴァイオリン』からは、写真をアートのようにしようという姿勢がうかがえます。また、彼のスタジオがあった場所を描いた『フェルー街』は、写真をもとにしたリトグラフ作品。荷車に乗っているのは、彼がつくる立体作品のようにも見えます。でも、相乗効果はもっと内面的なものだと思います。もちろん、同じ人間がつくるわけだから、どこかでつながっている。形のうえで、ひとつの表象として表れていなかったとしても、作品を見ると感じますね。

0811news_yokoo_5new.jpg『フェルー街』1952年(1974年)リトグラフ

――絵画作品には「軽さ」を感じるとおっしゃっていましたが、それはどんな点でしょうか?

身の軽さというのかな。とにかくあの好奇心の持ち方。それから作品の自由さ。ひとつの方法論に縛られず、1作品1作品、違う手法を使っている。軽やかに、無責任にやっているように見えます。アマチュアっぽい魅力がありますね。一方で、彼にとって写真は、むしろ軽くなく、重かったのではないでしょうか。写真は彼の中で気がかりになっていたのだと思います。生活に直結しているから、開放されない部分があったのでしょう。注文に応じる必要もあった。その点絵画に関しては、生活と直結していないから、自由自在にできますよね。彼の墓碑に刻まれた「無頓着、しかし無関心ではなく」。その気楽さが、芸術にとって大事です。僕の場合は、軽いものを目指しながら、重くなってしまいますが(笑)。

――読者に向けて『マン・レイ展』の見所をお願いいたします。

人間マン・レイを知るには、写真だけでは不十分だと思います。彼は総合的に、いろいろなことをやってきたアーティスト。彼のトータルな創作活動を見るためには、ぜひ写真以外の作品にも注目して見てください。

0811news_yokoo_6.jpg爽やかな白いスーツ姿の横尾忠則さん。インタビュー当日、国立新美術館にてトークショーも行われ、大盛況だった。

横尾さん自身は、現在、大阪の国立国際美術館にて『横尾忠則全ポスター展』を開催中。タイトル通り、横尾さんが手がけたポスター全作品を堪能できる貴重な機会だ。


『マン・レイ展~知られざる創作の秘密』

●開催中~9月13日
●国立新美術館(東京・乃木坂)
開)10時~18時(月、水~木、土、日) 10時~20時 (金)
休)火
http://man-ray.com
*9月28日~11月14日は大阪・国立国際美術館へ巡回。


『横尾忠則全ポスター展』

●開催中~9月12日
●国立国際美術館(大阪・中之島)
開)10時~17時(火~木、土、日) 10時~19時(金)
休)月
http://www.tadanoriyokoo.com
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