Culture 連載

きょうもシネマ日和

本国イタリアで140万人の観客を動員した
『あしたのパスタはアルデンテ』

きょうもシネマ日和

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この週末に、新潟を訪れていた。"日本秘湯を守る会"の会員宿である老舗旅館に泊まり、温泉(露天風呂!)を楽しんだ後に、旅館の夕食を頂いた。
焼き茄子、旬の野菜の煮物、魚の煮つけ、タコの天ぷらなど、どれもおいしかったのだが、何といっても感動的だったのが、お米の味。さすが、新潟、魚沼産コシヒカリの何と甘くて味わい深いこと。「日本人でよかったぁ~」と思う瞬間だった。
(詳しくはmicのブログで )

やはりアメリカ人はおいしいパンを食べると「アメリカ人でよかった~!」と思い、フランス人ならおいしいフランスパンをほおばった時、フランス人であることに感謝するのだろうか?

まだ誰からもそんな話を聞いたことがないのだけれど、何となくイタリア人なら私の気持ちをわかってくれそうな気がする。お米はパスタに変わるけれど。

そして、そのカンは外れていないように思う。

なぜなら本作『あしたのパスタはアルデンテ』では、パスタ製造に力を注いできた老舗パスタ会社の話で、そこにはパスタの味にこだわる主人公の祖母の姿があったから。


南イタリア、プーリア州の伝統的な町レッチェ。カントーネ家は祖母の代からパスタ会社を経営する名門家族。主人公のトンマーゾは一家の末っ子で、ローマに住んでいる。トンマーゾは、ある3つの秘密を家族に打ち明けに故郷へ帰ってきた。そのひとつは、自分がゲイであること。しかし、カミングアウトするはずが思わぬ出来事が起こり、自身がパスタ会社の命運を握るはめになってしまう・・・。


110905mic_02.jpgトンマーゾは3つの秘密を家族に打ち明けようとするが・・・。

本作は、本国イタリアで数々の賞を受賞し、140万人の観客が鑑賞、マドンナなども絶賛したと言われるヒューマンコメディである。

ただ、冒頭でしっかり触れておきながらパスタの存在はさほど大きくない(笑)。
描かれるのは、パスタ一族のドラマなのだ。

兄はパスタ会社を担い手であるやり手なのだが、大きな秘密を抱えている。
主人公も、同じく。姉は結婚するも旦那と父親は微妙な感じ。父親は古い考え方の持ち主で、それゆえ事態はややこしくなってしまう。

そして、物語の鍵を握るのが、パスタ会社を設立した祖母の存在。彼女は消しがたい過去を抱えながら、今回の事件を見守り続ける。

■本作の魅力のひとつ、南イタリア レッチェの街並み

110905mic_03.jpg南イタリアのレッチェの町並みや自然が映画を彩る。

本作では、"主人公トンマーゾがゲイなのを家族が知ったら大事件、父親が知ればただちに勘当される"という背景でストーリーが進んでいくのだが、イタリアはもっとゲイやレズビアンに寛容な国だと思っていたので、驚いた。

ただ、舞台がレッチェという田舎町なのでローマやミラノとは違うのかも知れない。今回、そのレッチェの存在がとてもよい役割を果たしている。
イタリア半島をブーツの形に見立てると、丁度"かかと"の辺りにあるレッチェ。石畳の街並みやバロックの教会やパラッツォ(Palazzo)と呼ばれる大邸宅など、ディープな南イタリアに迷い込んだ気分にさせてくれる。

■ インテリアや食事のシーンも

また、カントーネ家の部屋のインテリアも見ていて楽しい。決して超豪邸ではないのだが、部屋のテーブルやランプなど洗練されたセンスと明るい色づかいは、思わずストーリーそっちのけで見入ってしまう。食事のシーンも然り。ただし意外と短いので登場したときはスクリーンに集中して(笑)

他にも、共同経営者の娘、アルバ(途中、トンマ―ゾといい関係に・・・?)のファッションなど、イタリアらしい華やかさが随所に溢れている。


110905mic_04.jpg共同経営者の娘、アルバ(ニコール・グリマウド)のファッションにも注目。

■手がけたのは期待の実力派監督

監督は、数々の受賞歴を誇るトルコ出身の名匠フェルザン・オズペテク監督。ポスト・アルモドバルとも呼ばれている期待の星。キャストには『輝ける青春』のリッカルド・スカマルチョ、『副王家の一族』のアレッサンドロ・プレツィオージ、『シチリア!シチリア!』のニコール・グリマウドら実力派がそろう。


110905mic_05.jpg主人公トンマーゾを演じるリッカルド・スカマルチョ(右)と兄アントニオを演じるアレッサンドロ・プレツィオージ(左)。
©Fandango2010

個人的には、ゲイが主人公の映画を多々観ているせいか、もう少し主人公の悩みや苦しみを掘り下げて欲しい、周りとの関係性をもう少し掘り下げて欲しい気もしたが、それは見る者の好みに拠るところだろう。終わり方もちょっとビックリだった。

本作のタイトルは『あしたのパスタはアルデンテ』。パスタの堅さは好みが分かれるように映画の好みも人生の好みも、皆それぞれ。
自分好みのテイストで楽しめばいいのね、ということなのだと思う。

『あしたのパスタはアルデンテ』

●監督/フェルザン・オズペテク

●出演/リッカルド・スカマルチョ、ニコール・グリマウド、アレッサンドロ・プレツィオージ

●2010年、イタリア映画

●配給/セテラ・インターナショナル

●113分

●シネスイッチ銀座(Tel. 03-3561-0707)ほかにて公開中。

http://www.cetera.co.jp/aldente/
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