Culture 連載

きょうもシネマ日和

ジョン・レノンが最も愛した街NYの日々を描く
ドキュメンタリー『ジョン・レノン、ニューヨーク』

きょうもシネマ日和

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ジョン・レノンがもし生きていたら今年で何歳か、あなたは答えられるだろうか。

私の場合・・・「え~っと、オノ・ヨーコさんがおそらく60代?だから、それくらいかなあ・・・。」

こんな返事では、ジョン・レノン、ビートルズファンに怒られてしまいそう。まず、オノ・ヨーコさんは78歳(ビックリ! 信じられない・・・)ジョン・レノンは正しくは71 歳。
そして、本作は彼の"生誕70周年・没後30年"を記念して作られたドキュメンタリーだ。

■ジョン・レノンが愛したNYの日々

ジョン・レノンやビートルズを扱ったドキュメンタリーはこれまでにも数々作られてきた。その中で本作は彼が生涯もっとも愛した街=ニューヨークでの9年間にスポットが当てられている。

ビートルズを解散したジョン、そしてヨーコがイギリスからNYに移り住んだのはベトナム戦争下、反戦運動が広がりを見せる1971年の9月だった。その日からジョンが凶弾に倒れるまでを、オノ・ヨーコの全面的な協力・監修のもと、本人のインタビュー映像はもちろん、数多くの秘蔵映像とともに、ヨーコ自らも当時のことを語っている。

そこには、ジョンが命がけで平和活動を行ってきたその軌跡、彼の音楽活動に関わってきた人々が語るリアルな当時の様子、加熱する平和活動に対しアメリカから国外退去を命じられ、必死に抵抗するジョンの姿、ヨーコとの別れ、そして再会、息子ショーンとの幸福な日々が描かれ、そのテイストがあまりにもナチュラルなので、なんだかジョンを身近に感じて、私はますますジョンの事が好きになってしまった。

■ジョンを支え、愛したオノ・ヨーコ

おそらくビートルズファンや音楽に詳しい方々は、このドキュメンタリーの位置づけをしっかり解説くださるだろう。

なので、あえてここからは、"ビートルズは好きで歌詞カードも読んだりしたし、2年前のホワイトアルバムも買ったけど、詳しいかって言われたら・・・そこまででも・・・"という目線(どんな目線・・・)でご紹介したいと思う。

正直を言うと、私が最も感動したのはオノ・ヨーコという女性の生き様だった。

日本でビートルズのファンを除けば、彼女についてよく知っている女性って、実はそんなに多くないのではないだろうか。"ジョン・レノンの奥さんであり、ショートカットで胸元の谷間が麗しく(←思わず見とれてしまう・・・)サングラスをかけていて、ジョン・レノンの命日には毎年、日本のミュージシャンと一緒にホールで歌っている"もしかしたら、それくらいのイメージしかないかもしれない。
そんな方のために、私はオノ・ヨーコさんは一世代を担ってきたアーティストであることを強調しておきたい。

ジョン・レノンは当時前衛芸術家だった彼女の才能に惚れ込み、音楽も学んでいた彼女と一緒にアルバムを作った(彼女自身も歌っている)。ジョン・レノンが亡くなってからも、平和活動のみならず、数々の芸術活動に没頭し多くの賞を受賞しているのだ。

本作では、そんな彼女が時には偉大なアーティスト、時には繊細な少年、時には手のつけられない酔っ払いだったジョン・レノンをいかに支え愛してきたかがよくわかって、私はストーリーが進むほど、ヨーコの方にに感情移入していた。

決して人には話したくなかったであろうジョンとの出来事についても語っていて(別居した原因について)それはもう女としてはショッキングなのだけど、それ以上におびただしいバッシングにあいながらも、彼から離れず自身の生き方を貫いたオノ・ヨーコという存在が、あまりにも強く胸に残ったのだった。


110805mic_02.jpgジョン・レノンがもっとも愛した街ニューヨークでの9年間にスポットを当てたドキュメンタリー。
©2010 Two Lefts Don't Make A Right Productions, Dakota Group, Ltd. and WNET.ORG
©Bob Gruen/www.bobgruen.com

■未発表テイクや貴重な音源も

もちろん、ジョン・レノンファンにはたまらない、その時期に作られたアルバム収録曲の未発表テイクやデモ・トラックなど貴重な音源をも存分に堪能できる。

マディソン・ガーデン・スクエアでのエルトン・ジョンとジョン・レノンの共演のシーンは、もう私まで鳥肌が立ちそうになったほど。全編、ジョンによるさまざまな楽曲が流れるのだが、そのどれもが(未発表以外)不思議とよく覚えている。それほど知らないうちに、私の人生にジョン・レノンは刷り込まれていることに気付かされ、それはとても幸せなことに感じた。そして見終わった後は、やはりジョン・レノンのアルバムをゆっくり聞き直そうと思った。

本作は、音楽ファンのためだけのドキュメンタリーではない。ジョン・レノンの曲が好き。そんな理由ひとつで観るに値すると思う。私の場合、観終わったら彼の曲に詳しくなっていた、というよりも、彼とヨーコの人生に触れて何だか心が熱く、温かくなった。ちょっぴり夏バテ気味で、ジョンの優しい歌声に触れたいと思ったら、迷わず映画館に足を運んでみたらいいと思う。いろんな意味で元気と気づきがもらえそう。でも、やっぱり思ってしまうのだ。「あぁ、今も生きてくれていたら・・・」と。


『ジョン・レノン、ニューヨーク』
●監督・脚本/マイケル・エプスタイン
●2010年、アメリカ映画
●配給/ザジフィルムズ
●115分
8月13日(土)より、東京都写真美術館ホール(Tel. 03-3280-0099)ほかにて公開。
http://johnlennon-ny.jp/

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