Culture 連載

きょうもシネマ日和

伝説の女性グレース・ケリーが下した愛の決断。『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

きょうもシネマ日和

01-main-cinema-141017.jpg

21世紀を代表する女優、ニコール・キッドマンが20世紀の美のシンボルにしてオスカー女優、グレース・ケリーを演じた本作。今年のカンヌ国際映画祭でオープニングを飾り、史上最高といっていい豪華な幕開けだったとか。


グレース・ケリー。みなさんも一度はこの名前を聞いた事があるだろう。1929生まれ、20歳でモデルの仕事をスタートさせ『父』でブロードウェイデビュー。その後、『十四時間』でスクリーンに初登場し、『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』『『喝采』『緑の火』『トコリの橋』で主演、ヒッチコック監督の寵愛を受ける。1955年に『泥棒成金』で主演、カンヌ国際映画祭に出席し、モナコに訪れレーニエ公と出会う。翌年には、婚約発表、そして結婚。

こうして改めて書くと、なんとまぁ華々しい人生、そしてシンデレラストーリーだろう。

そんな彼女が映画になった。予備知識のなかった私は、きっと幼少の頃のグレース・ケリーがレーニエ公のハートを射止めるまでを描いたロマンティックストーリーなのだろうと思っていた......が、物語はなんと結婚から6年後。王室の中で孤立し、苦悩している彼女の姿からスタートする。

まずは気になるストーリーから。


◆ ストーリー

華やかなロイヤルウェディングを挙げたグレース・ケリー。その6年後、遠くアメリカから独り異国へやって来た彼女は、完全に孤立していた。どんな場であろうとも自分の意見をはっきりと言う彼女に対し、夫のレーニエは「立場をわきまえろ」と激しく叱責する。彼女の側近も何かを企んでいるようで信用できず、周りからも元女優のアメリカ人として、よそ者扱いされる。彼女を一躍有名にしたヒッチコックは変わらぬ友情を示すが、内密のはずのハリウッド復帰が漏れる......。グレースが自身のアイデンティティの喪失に苦しむ中、国家の危機が訪れる。孤立無援の状況で、彼女はある一大決心を下す。

02-sab4-cinema-141017.jpg

レーニエ公にはティム・ロス。他にも個性溢れる実力派が勢ぞろい。監督は、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のオリヴィエ・ダアン。


◆ 伝記映画、ではなく人間ドラマ

というわけで、現実は「王子様と結婚しましたとさ、めでたし、めでたし」とはいかないのである。その後、2人の子供をもうけ、母となるも周りに心打ち解ける人物はおらず、最も理解者であるべき夫は、逆に彼女の発言を責めたてる。そんな折の映画主演オファー、かつての楽しさを思いだし、心が揺れる。しかしその夢にも当然のごとく大きな壁が立ちはだかり......。

単なるシンデレラストーリーだと思っていた私は、オープニングからシビアな展開にびっくり。そして、ストーリーが進むにつれ、雲の上のそのまた上の地球外生命体なのでは? と思えるくらい遠かった彼女が一気に身近な存在に。もちろん立場は全く違うのだけれど、周囲のアレコレに振り回され、自分らしくいたいと思っても、それが叶わず寂しい思いをしたり、信頼していた人が急に去ってしまうなんて経験に共感するのは、私だけでないはず。そんな境遇のさ中、自身と家族と国民の幸せの為に、勇気ある決断をした彼女に尊敬、そして人間的魅力を感じずにはいられなかったのだ。

03-sab1-cinema-141017.jpg

かつて来日したこともあるグレース・ケリー。デザインナーの森英恵さんがお気に入りだったとか。


◆ カルティエ、エルメス、シャネルらが全面協力

オリヴィエ・ダアン監督は、モナコの危機に直面し、葛藤し、立ち向かってゆく彼女の生き様をサスペンスタッチで描く。その緊張感の中、私たちをホッと和ませ、楽しませてくれるのは、ウットリするほどエレガントなファッションの数々だ。

主演のニコール自身「衣装にここまでの努力が費やされる映画に出たのは、『ムーラン・ルージュ』以来」と言うほど、細部にまで徹底したこだわりを感じるドレスやジュエリーが次々に登場する。

カルティエは公国の同意のもと、レーニエがグレースに贈った10.48カラットのダイヤモンドの婚約指輪や、結婚の際に贈られたルビーとダイヤモンドのティアラ、ダイヤモンドの3連ネックレスなど、5つのジュエリーを忠実に複製。加えて現代の数々のハイジュエリーも全編通して着用されているので、これはもう必見。

また60年代のファッションをリアルに再現。白の式典用のドレスはランバンの当時のドレスを元に一から作りあげ、シャネルはアンサンブルスーツの作成に参加、エルメスはスカーフやケリーバッグで協力、またスワロフスキーはクリスタルの散りばめられたドレスに協力するなどし、グレースの44もの衣装を作り上げた。それらをニコール・キッドマンが完璧に着こなしている姿は、さすが......の一言。

04-sab3-cinema-141017.jpg

本作の公開に合わせ、オリジナルランチや和菓子など、様々なタイアップが各地で展開されている。詳しくは公式サイトをチェックしてみて。


◆ さいごに

グレース・ケリーといえば、絶世の美女でハリウッドを代表する女優からモナコ公妃になった女性。という印象だけの方も多いだろう。もしくは、ケリーバッグの......あのグレース・ケリーよね、とか? しかし本作では、彼女が公妃になった後の生き様が語られる。その姿を見て思う。100歩、いや、1000歩譲って、現代でも白馬(現代の場合は白いポルシェ?)に乗った王子様がいつかはやってくるとしよう。奇跡的に運命の相手に出逢えたとして、その後も人生は続くのだ。

それに、いつまでも王子様の後ろに乗せてもらえるワケじゃない。王子様を上手に鼓舞したり、時には自分が手綱を握ることだって多々あるのである。そんな時、ひとりの女性としてどんな風に生きていくのか。グレース・ケリーの決断は、たとえ生きるステージが違うとはいえ、充分すぎるほど私たち女性に刺激を与えてくれる。そして、そのエレガントな装い、立ち居振る舞いは"大人の女性"の真の美しさをも教えてくれる。この秋、ぜひ女性に観てもらいたい作品だ。


『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』
監督:オリヴィエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、パス・ヴェガ
http://grace-of-monaco.gaga.ne.jp
10/18(土)より、TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー
(C)2014 - STONE ANGELS

4
Share:
清川あさみ、ベルナルドのクラフトマンシップに触れて。
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
2024年春夏バッグ&シューズ
連載-鎌倉ウィークエンダー

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories