Culture 連載

Dance & Dancers

注目のアーティスト、川村美紀子にインタビュー。③

Dance & Dancers

に続き、川村美紀子さんインタビュー最終章!

■自分の中のアイドルになりたい。

この春、大学を卒業。就職は、考えなかった。
「会社説明会には行ってみたいと思いました。幕張メッセとかに企業がブースを出して、そこにスーツ姿の学生が集まる、そんな場所でスーツ姿で踊りたかったんです。仲間と"やろう!!"って盛り上がったんですけれど、気が付いたら終わっていました」

今は、イベントにゲスト出演して踊る他、アルバイトで収入を得ている。
「いま、インタビュー録音のテープ起こしのバイトをやっています。経済関係のものが多く、未知なる世界のお話を聞けてよいです。が、それよりなにより、声からその人の姿かたちを想像するのが楽しい。ネット検索すると、あとから偶然、リアルなその人を知ることもあるのですが、想像をあっさり裏切るビジュアルのことが多いんですよね(笑)。」

ハマっているのは、路上パフォーマンス(主に音楽)をしている人のバックで、突然踊りだすこと。
「きっかけは、新宿駅前広場でギターを抱えて歌っている少年でした。一生懸命歌っているけれど誰も足を止めて聞いてくれない。だけど、私と友達のふたりが後ろで踊りはじめたら、人だかりができまして」

以来、そういうシチュエーションに出会うと、踊る。
相手に許可を請うわけではなく突然やるわけだから、迷惑そうな顔をされることもある。
「自分と自分の表現に自信がある人は、ウェルカムな感じなんです。そういう人の場合、いったんできた人の輪は、私たちが踊りをやめてもなくなりはしないんです」

 最近"これからどのように活動していきたいですか"という類の質問をされることが増えた。
「それに対する答えをそろそろ定めなくてはならないのかな、と思うと、最終的に"雑貨屋を開く"というのがあります。それは漠然としたもので、小学生の子供が"いつかは結婚するんだろうな"と言うような感じです。では、近々の目標は何かと問われると、アイドルになりたい。それは皆さんのアイドルと言うことではなくて、自分の中のアイドル=I DOLL。自分で自分を、偶像化していくことです」

"人に見られる"ということに特別な価値は感じない。自分の活動もそこに焦点を置いてはいない。
「見ていただけるのはありがたいのですが、"見て欲しい"と思って創っているわけではないんです」
第一、他人と接するということは川村にとってとても緊張することなのだそうだ。
「だから友達も少ないのでしょうね」

伏目がちに話していた彼女に、視線をぴたりと合わせそう微笑まれると、なんだか胸がきゅんとしてしまった...。

■年明け、赤レンガ倉庫で生まれて初めてのデュオ・パフォーマンス。

さて、来年は年明け早々、新たな展開が川村を待ち受けている。
自身が最優秀新人賞を受賞した横浜ダンスコレクションEX、その2013での海外フェスティバル交流プログラムで、新作を発表するのだ。しかも、"海外交流プログラム"と銘打ってあるとおり、今回はフィンランドの期待の若手ダンサーとの共同制作となる。
「これまで、ひとりで創って踊ってきたので、誰かと共同で、というのは全く初めてです。どうなるのか想像もつきません。わかっているのは、相手がアンティ・セッパネンさんという男性で、私は1月3日に日本を発ち、1月26日までフィンランドにいて作品を創り帰国し、2月3日に横浜赤レンガ倉庫1号館のホールでそれを発表する、ということです」

このプログラムは、1996年にスタートし、数多くの振付家を世に送り出してきた"横浜ダンスコレクションEX"が国境・文化的背景を超え、新たなアートを生み出す試み。今回は、フィンランドの"ヨヨオウルダンスフェスティバル"とのプロジェクトとなったわけなのだが、そのディレクター、サトゥ・トゥオミスト氏が白羽の矢を立てたのが川村美紀子だったのだ。
「好きなダンサーの佇まいをいってくれ、と言われ、思わず興奮気味に"限りなく中性的な男性!!"と伝えたのですが、アンティさんは写真で見る限り、深夜番組の通販に出てきそうなイケメンマッチョです」

手編みのニットに、花柄のスカート。フラワーショップの中にあるカフェで、"リラックス"という名のフレッシュハーブティーを飲みながらの取材。

川村美紀子は、いろんな顔を持っている。

私たちが目にする彼女は、地表にひょこっと頭を出したほんの一部で、地面の下にはいろんな川村美紀子がもぞもぞぐるぐる、エネルギーをたぎらせていて、それを本人もどう扱ったらいいか、考えあぐねている今がある。
それを可能性、というのかな。
可能性は、刺激という素敵な種を、私たちの心にばら撒いてくれる。

urano121217_02.jpg取材中、紙ナプキンで小鳥をつくる。

横浜ダンスコレクションEX2013 海外ダンスフェスティバル交流プログラム
フィンランド編『横浜とオウル(フィンランド)をダンスで繋ぐ』

『euphoria(ユーフォリア)』
振付・出演:川村美紀子、出演:アンティ・セッパネン
『Vimmaa(ヴィンマー)』
振付:サトゥ・トゥオミスト、出演:エレナ・ルースカネン、テーム・コルユスロン

日時:2013年2月3日(日) 
開演:16:00/開場:15:30
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
料金:一般前売り ¥3,000(当日¥3,500)/学生前売り ¥2,000(当日¥2,500)
●問い合わせ先:横浜赤レンガ倉庫1号館  Tel 045-211-1515(10:00~18:00)
www.yokohama-dance-collection-r.jp
JCDNダンスリザーブ http://dance.jcdn.org

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