15人の目利きが選ぶ、新旧のいいモノ案内。#02 スタイリスト田中雅美が惚れたジャケットとシューズ。
Fashion 2017.07.21
ファッション好きな目利きの15人に、永年愛用してきた昔からの名品と、この秋冬狙っている新作アイテムを聞きました。
スタイリストの田中雅美さんが選んだアイテムは、ジャケットとモカシン!
田中さんがパリで運命的に出合ったジャケットとは? そして、新しく欲しいハンサムなモカシンとは?
【昔ながらの名品】ディオールのバー ジャケット
CFDA ファッション・アワードでカルバン・クラインでの功績が認められ、メンズウエア、ウィメンズウエアのデザイナー・オブ・ザ・イヤーの2部門に輝いたラフ・シモンズ。彼のクリエイションをいつも心待ちにし、発表された作品には常に胸を鷲掴みにされています。
そんな敬愛するラフ・シモンズによる、2013年春夏のディオールでのデビュー コレクション。ランウェイではパンツとのセットアップで、現代女性の芯の強さを表現しつつも、着やすく洗練されたジャケットを発表していました。
そして2013年秋冬のパリ コレクション初日、立ち寄ったドーバー ストリート マーケットで、ついにバー ジャケットに出合いました。
ムッシュ ディオールは、いまもなおファッションの礎となるような数々のシルエットを残していて、その中でも代表的な’’EnHuit(8ライン)’’は、ソフトな肩に細く絞られたウエストと、ヒップにふっくらと芯が入った、女性のふくよかな身体を立体的に包み込むラインが特徴的。
上流階級のマダムが、当時社交場になっていたパリのホテル プラザ アテネのバーで佇む姿を美しくエレガントに見せるジャケットとの由来から名がついた「バー ジャケット」も、8ラインのシルエット。
私がいま目にしているのは、あのファション史に名高いバー ジャケットそのもの?! と、感動のあまり買わずにはいられなかった、私の宝物です。ムッシュ ディオールが常に追求してきたエレガンスを引き継ぐラフの、ムッシュに対する敬意に溢れています。
【新名品】エルメスのシューズ
1990年にピエール・アルディはエルメスのシューズ部門のクリエイティブ・ディレクターに就任しました。ピエール・アルディの生み出すシューズは、まるでアート作品を見るかのよう。彼のクリエイティビティとクラフトマンシップからは、パリのエスプリを感じずにはいられません。
モダンでありながら、グラマラスとハンサムを兼ね備えた佇まい。印象的なメタルのカボションは、30年代のエルメスのファッションアクセサリーよりインスパイアされたとか。なめらかな起毛レザーは、本物という言葉が相応しいです。
モカシン「ポエジー」\132,840/エルメス(エルメスジャポン)
エルメスにとって特別な意味を持つ革を使い、エルメスならではの作り手の情熱や愛情が詰まった一足。
エネルギッシュで魅力的な創作は、エルメスとピエール・アルディの刺激ある歩みによって続けられるのであり、これこそがエルメスが古くならない理由なのだと感じます。それどころか、常に新しい。この一足と出合ったことで、改めて本当に好きなブランドになりました。
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スタイリスト
エディトリアルを中心に、広告やカタログ、女優、タレントまで手がけるスタイリングワークは多岐に渡る。トレンドを感じさせてくれるモードとエターナルな深みを与えてくれるクラシックが、ファッションにおいてのマイスタンダード。ハイジュエリーからヴィンテージまで、隔てなく広いレンジで敬愛。ハンサムな中にフェミニンさの垣間見えるスタイルを得意とし、特にエッジなトレンドと愛される名品の絶妙なミックスを日々のスタイリングテーマに掲げる。
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photos : JOHN CHAN