ユニクロ×イネス、8シーズンを迎えた服作りの裏側。

Fashion 2017.09.19

8シーズン目を迎えたユニクロとイネス・ド・ラ・フレサンジュのコラボレーション。今秋冬には、待望のメンズコレクションも登場し、より心地よい時間に寄り添ってくれる服を提案する。今回、イネス・ド・ラ・フレサンジュと、このプロジェクトの立ち上げからデザインディレクターを務める滝沢直己氏に話を聞いた。

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ジャケットのようにも着ることができるトレンチコートは、イネスの一押しアイテム。

—最新作について、聞かせてください。

滝沢「イネスと一緒にいるときに、広告か何かの写真を一緒に見る機会があって、そこには母と娘という親子の設定の女性がふたり、写っていたのですが、そのふたりの姿が僕たちには喧嘩をしているように見えたというか、そのふたりの間に温かい空間が広がってなかったんです。それで、もっと母子にしかできない温かい表情ってあるよね、と話していたら、そういう空気感を服を通して表現したい、とイネスが言って、“ヒュッゲ”という単語を口にしたんですよ。
最先端のモードを追いかけていると表面上のことだけになってしまいがちだけど、イネスはもっと内面的なことをファッションに投影しているんですね」

イネス「長く生きていると人生の中での大切なものが変わってくるわ。時を重ねることで、あるものは重要性が増し、あるものは失われていく。そんな中、人々は、幸福、友情、暖かさを求めるようになる。“ヒュッゲ”とは、世界一、国民が幸せな国、デンマークの言葉。そこに込められた、愛する人たちと過ごす大切な時間に感じる気持ちに寄り添う服が作りたいと思ったの。
着ている服というのは、その人たちが求めるものを反映していると思う。だからこそ、幸福感が得られる服を作りたかった。私にとって、ヒュッゲな時間とはいま、この瞬間よ。一瞬一瞬、現在を楽しむことが大切だから。それが服とどう関係するか? 着る服によって、より自信が持てて、心地よくいられることは幸福感につながるわ。それぞれ、着る方のパーソナリティを高めることが服の役割だもの。

今回、初めてメンズウエアを発表したけど、女性たちにもぜひ、トライして欲しい。メンズラインの中にも女性が着ることができるものがたくさんあるから。女性は、居心地よく過ごすためには多くのものを持たなくてはなならない、と思う傾向にあるけれど、私はよいものを少しだけでいいのよ、ということも伝えたい。だからこそ、今回のコレクションで作ったツイードのジャケットのような長く着ると素材に風合いが出てきて、どんどん自分のものになってくる服を選んでみてはどうかしら?

イネスのコレクションには、組み合わせが簡単にできるものが揃っているわ。私も直己さんも、私たちの仕事は女性たちに解決法を提案することだと思っているの。着る側にモード知識がなくてもおしゃれに決まることが重要だわ。たとえば、今回のショートトレンチ。これはジャケットのようにも着られてモードっぽいけれど、クラシックでもある。そんな簡単に着こなせて、着心地とモード感を併せ持った服たちができあがったわ」

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メンズコレクションの発売を記念したイベントには、イネスも来日。スペシャルゲストとして、モデルの栗原類さんも登場。

随所に、着る側への愛情を忍ばせた服作り。

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「いまは、長い間一緒にいるカップルのような気分よ」とイネス。滝沢さんとイネスの関係は、お互いを尊敬し合う古い友達そのもの。

—イネスとユニクロのコラボレーションが始まって8シーズン。どんな気持ちで、このコレクションに取り組んでいますか?

イネス「このコレクションでは、タイムレスで流行に左右されず、長い時間をかけて、着る人が自分のものにしていける、そんな服を作っていきたいわ。モード界でのさまざまな経験を経て、自分のどんなスタイルにもマッチして、末長く愛用できる服という、理想にたどり着いたの。一瞬だけ、気持ちが上がるものではなく、多くの国で多くの人に長く愛してもらえる服を作りたいという気持ちがだんだん強まってきているわね。そして、このイネスとユニクロのコラボレーションラインでは、それが実現できていると思う。それを可能にしてくれる、パートナーの直己さんには本当に心からお礼を言いたいわ」

滝沢「気がつくと、あっという間に8シーズンって感じ。イネスが考えている服、いろいろなものを見てきている彼女の視点がもたらす新しさがお客様にとっても新鮮に映るから、8シーズンもの間、続けて来られたのだと思います。デビュー当時から、着た時にちょっとふわっとした感覚がある、楽な気持ちになる、そんなことをいつもイネスと僕は考えてフィッティングをしています。たとえば、セーターの襟ぐりとかジャケットの袖付けとか、とても小さなことなのですが、着るひとに対しての僕らの愛情を忍ばせて。皆さんにもそれを感じて着てもらえればと思いますね」

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今回のキャンペーンにはイネスの意見が反映され、プロのモデルだけでなく、学生や俳優なども登場している。

—イネスさんと滝沢さんの共同作業はどのように進められるんですか?

滝沢「月に1度はパリで会って、まずは会話から。イネスが、僕にこんな服を作りたい、こんなものはどうか、とたくさんのアイデアを提案してくれる。それからふたりでテーマを決めて、それを料理していく感じです。毎回、変わらないことはイネスが着る服であり、かつ、みんなでシェアできる服を作るということ。この点はデビュー当時と一緒です。あと、イネスがその都度、考えるフレッシュなことや、空気感をプラスすることで、毎シーズン、新しい何かを生み出すことができていると思います」

イネス「いまや付き合いが長いカップルのような気分になってきたわね。直己さんは私のことをよく分かってくれているの。ミーティングの前に、各自、いろいろと用意をするのだけど、それを見せ合ったときに、チョイスがすごく似ていたりして、ふたりで笑ったりすることも。そんな説明のつかない偶然は何度もあったわ。直己さんは、ポケットやボタンホールなどの細かいディテールを提案してくれ、私を喜ばせてくれるのだけど、私はいつも価格のことを気にしてしまって。こんなに凝ってしまうと高くなってしまうのでは?と言うと直己さんは、大丈夫、できる、と返してくれるので、心強いのよ。だから毎回、細部までこだわったものが作れているわ。直己さんは、忍耐強くて、とても優しい人。そして、ラグジュアリー、エレガンスに対する考え方や、服を作るときに要求する度合いが同じなので、彼との仕事はとてもスムーズよ」

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トラッドな印象のダッフルコートには、どことなく素朴な印象の柄入りニットをコーディネート。メンズのツイードジャケットは、長く愛用できるオーソドックスなデザインも特徴的。

—ふたりでコラボレーションする楽しさは?

滝沢「イネスと仕事をすると、いろいろなことが学べて、本当に楽しいです。たとえば、最新作のテーマである“ヒュッゲ”にしても、そんな視点があるんだ!と驚かされることも多い。彼女が選ぶ言葉は、表現がとても美しくて、彼女と会話していると心がふわっとして、気持ちに花が咲くみたいな感じがします。そこから、イネスが何を望んでいて、どんな服を作りたいのかってところにつながっていくんです。毎シーズン、ちょっとずつ、僕もパリジャンに近づいているような気がしています。

クリエイティビティや美意識が日本にだけにいると煮詰まることがあるのですが、パリに行って、愛にあふれたイネスといる時間によって、自分が触発されているような気がしますね。本当に数少ない、美を作り出せるクリエイターだと思います。イネスのこだわり、そして彼女の服に欠かせないディテールを必ず実現するということは、それを着るお客様の幸福感につながってくると思うんです。それを可能にすることは、僕たちの大切なミッションだと思っています」

—今後の展望は?

イネス「今後はもっとイブニングっぽいものを作ってみたいの。それは必ずしも夜にだけ着る服ということではなく、ちょっと洗練された素材を使ってね。今回は、ベルベットのブルゾンをデザインしたのだけれど、そんな感じで、ファッションビクティムにはならないけれど、モードの香りがするものも加えていきたい。私自身、イブニングっぽいものをデイリースタイルに取り入れるのが好きだから、そういう提案ができたらと思うわ。

そして、私には大きな夢があるの! ぜひ、このコレクションの延長で、子ども服が作りたい。そして、すべてのコレクションを網羅したファッションショーを開きたい! さまざまな年齢の人たちにモデルになってもらってね。それが実現したら、イネスとユニクロのコラボレーションの可能性はさらに広がって行くと思う」

滝沢「僕は、毎回、お客様に新しい発見や驚きを与えたい。時代が急速に移り変わる中で、毎シーズン、何か新しいものを感じられる服作りをしたい。今回、初めてのメンズコレクションをイネスと一緒に手がけて分かったのとは、このラインを家族で楽しめるものしたいということ。イネス自身、そういう考えを持っているのでぜひ、ベビーから中学生、高校生まで楽しめるコレクションを提供できたらと思います。仕事量は増えるけど、イネスと一緒の仕事なら楽しくできるから、僕は大歓迎ですよ」

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細身のシルエットながら、アームホールなどはゆったりと設計されているアウターは、イネスらしいアイテム。中でも、ネイビーのツイードジャケットはイネスのお気に入り。ダッフルコート¥13,932、ツイードジャケット¥10,789(ともにユニクロ一部店舗のみで販売) / ともにユニクロ/イネス・ド・ラ・フレサンジュ(ユニクロ)

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インタビューにも登場した今季の注目アイテム、ショートトレンチとベルベットブルゾン。コットンツイルショートトレンチ¥10,789、ベルベットブルゾン¥10,789(ともにユニクロ一部店舗のみで販売) / ともにユニクロ/イネス・ド・ラ・フレサンジュ(ユニクロ)

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赤のステッチを効かせたウエスタンシャツも今季を象徴するアイテム。ツイードパンツとの相性も抜群。コットンツイルウエスタンシャツ¥3,229、ツイードパンツ¥5,389(ともにユニクロ一部店舗のみで販売) / ともにユニクロ/イネス・ド・ラ・フレサンジュ(ユニクロ)

●問い合わせ先:
ユニクロ tel : 0120-170-296
www.uniqlo.com
ユニクロ/イネス・ド・ラ・フレサンジュ特設サイト www.uniqlo.com/inesparis

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texte : TOMOKO KAWAKAMI

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