『昼顔』モデル復刻! フリゾーニ&イネスが語る「ベル ヴィヴィエ」

Fashion 2017.10.12

巨匠ルイス・ブニュエルによる『昼顔』(1967年)は、映画史に名を刻む名作であるとともに、フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴをスターダムに押し上げた記念碑的な作品でもある。23歳にして、昼は高級娼婦となるブルジョワの美しい妻という物議を醸し出す役を演じきったドヌーヴの輝くばかりの美しさは格別だった。今日でも多くのデザイナーやクリエイターたちを触発する、ドヌーヴの60年代エレガンスをイヴ・サンローランの衣装とともにバックアップしたのが、ロジェ ヴィヴィエのシューズ「ベル ヴィヴィエ」だった。そして、エポックメイキングな『昼顔』の公開から50年、モンドリアンテイストのカラーリングを大胆に組み合わせた日本限定モデルが10月5日より全国で発売された。

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日本限定モデルの「ベル ヴィヴィエ」リミテッドエディション。2型あり、各2色展開。
左・中上:やや太めヒールが安定感のある一足。 (ヒール4.5cm)各¥103,680 右・中下:イメージの異なるカラーバリエーション。(ヒール4.5cm)各
100,440/ 以上ロジェ ヴィヴィエ

その記念に来日した、クリエイティブディレクターのブルーノ・フリゾーニとブランドアンバサダーのイネス・ド・ラ・フレサンジュ、ふたりに伝説のアイコンシューズについて聞いた。

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2004年にロジェ ヴィヴィエのクリエイティブディレクターに就任したブルーノ・フリゾーニ。ロジェ ヴィヴィエの精神や哲学に沿いながら、現代女性に合うモダンなデザインを多く手がける。

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2005年からブランドアンバサダーに就任したイネス・ド・ラ・フレサンジュ。ロジェ ヴィヴィエの持つ、ユーモアとファンタジーにあふれた世界観を体現する存在。

―日本限定で発売されるモンドリアンデザインの「ベル ヴィヴィエ」の創作過程を教えてください。

フリゾーニ 「サンローランとコラボレーションしていた時に、モンドリアンドレスの足元を飾っていたのが、ロジェ ヴィヴィエのブラックシューズでした。この靴は一気に有名になり、伝説となりました。映画『昼顔』でカトリーヌ・ドヌーヴが履いたことをはじめ、この靴の歴史にはいろんなエピソードがあります。今回、限定モデルを作るにあたって、モンドリアンの歴史を振り返ってみようと思いました。モンドリアンのポスターを引用したドレスとバックルシューズはシンプルな形ですが、ロジェ ヴィヴィエの世界観が詰まっています。モンドリアンはとても有名ですが、色褪せることはない。抽象的で幾何学的、シンプルな色彩で力強い。モンドリアンモチーフを蘇らせることは、ロジェ ヴィヴィエというブランドの歴史を蘇らせることにも繋がります」

―モンドリアンモチーフの「ベル ヴィヴィエ」について、どういう印象を持ちましたか。

イネス 「ひと目見た瞬間に、モンドリアンとサンローランのコラボレーションを彷彿させますね。そしてこのモンドリアンシューズは、日本の家にも似ているわ(笑)。日本の禅はフランスでも流行っているけど、そういったイメージともマッチしていると思いました」
フリゾーニ 「モンドリアンではなく、“モンド・リアン”ですね! フランス語でモンドは世界、リアンとは無の意味。つまり、無の世界(nothing)のこと。言葉遊びみたいだけど、まさに無の世界を表しているともいえます」

―映画『昼顔』や主演のカトリーヌ・ドヌーヴのスタイルが時代を経ても愛されている理由は何でしょうか? 当時のビジュアルからどのようにインスパイアされていますか?

フリゾーニ 「いまでもちょっとショックな部分もありますが、『昼顔』は公開された当時、その過激なストーリーで社会的にスキャンダルとなった映画です。ルイス・ブニュエル監督にとっても、カトリーヌ・ドヌーヴにとっても、転機となった作品。ビジュアル的な面でいうと、白と黒のモノトーンが非常に強い印象をもたらします。ブルジョワのヒロインですが、サンローランも言っていたように、ひとつ線を間違えるとエッジが効きすぎるという、すごくギリギリのところにある。そうゆう危ういところに非常に惹かれるんだと思います」
イネス 「ファッションについて言えば、シルエットがやはり非常によく作られているところが魅力ですね。当時のジャクリーン・ケネディ・オナシスなど、そういった著名人たちもみんなこういったクラシカルなシルエットのものを着ていることが多いですよね。また映画の中で、ロジェ・ヴィヴィエ自身が女性たちの着付けをしていたということも非常におもしろいと思っています。」
フリゾーニ 「クラシックっていうと、懐古主義とか昔の古臭いものだと思いがちな面があると思うんですが、クラシックと定義するためには、当時の時点で素晴らしいものでなくてはいけません。だからいまになってクラシックと言われるものは、もともと非常に価値の高いものです。映画『昼顔』がグランクラシックと呼ばれるのも、本物だからですね」

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「ベル ヴィヴィエ」1960年代オリジナルモデル。映画『昼顔』でブームに火が付いた、伝説のシューズ。©Courtesy of Roger Vivier – Year 1967

―イネスさんは、ロジェ ヴィヴィエのシューズをどのようなシチュエーションで着用されていますか?

イネス 「私のワードローブには、刺繍が入ったデコラティブなものや豪華なものはほとんどないんです。Tシャツやセーター、白いジーンズなど、本当にシンプルなものばかり。だからロジェ ヴィヴィエはシンプルな服にアクセントを与えて、高みに引き上げてくれる、重要なアイテムなんです。もし旅行の途中でTシャツがなくなったとしても、たとえばシーツを巻いてベルトを締めたり、男性のワイシャツをアレンジすればそれで服になるけれど、ロジェ ヴィヴィエの靴の代わりはきかないですね」
フリゾーニ 「僕のワイシャツも貸してあげようか(笑)」
イネス 「ワードローブの中にロングドレスを何着も持っている女性は、ほとんどいないと思うんですよね。でもシンプルな服であっても、靴とかアクセサリーがアクセントとなってドレッシーになったりリュクスになったりする。そうゆう意味で、ロジェ ヴィヴィエの靴はとても役立っています」

―日本の女性たちのファッションの印象は? どのようにロジェ ヴィヴィエのシューズを身に付けて欲しいと思いますか?

フリゾーニ 「日本人は、男性も女性も非常におしゃれですね。日本は古き良き文化を大切にしているのが、特徴だと思います。そういった古いものと新しいものをミックスして、ふたつの部分が共生しているのがおもしろい。実際、パリにいるよりも東京にいる方が、モードの影響を強く感じます。日本人は自分たちで新しいものをどんどん作っていく姿勢がありますが、一方でフランスは実はかなり保守的で、新しいものに否定的だったりもする。世界的な流行でいうと、フランスで生まれたものがまず日本で売れて、またフランスに戻ってきてやっと流行っていく。日本女性はエレガントで洗練されていてとても美しいと思う。自身で、ロジェ ヴィヴィエの自分らしい身に付け方を探して欲しいですね」
イネス 「今朝、代官山の道を歩いていたらスタイリッシュな日本女性をたくさん見かけました。みんな写真を撮りたくなったくらい(笑)。ブルーのビッグサイズのバルーン型ブラウスや、刺繍のついたブラウスを、締まった形のボトムに合わせて着ていたり、ベレー帽にちょっと広がった形のレインコートを着ていたり、さまざまなスタイル。子ども時代の思い出を彷彿とさせるようなセンスが必ずどこかに入っていて、でもそれが綺麗に着こなされていて。非常におもしろいと思いました。またモード雑誌をみんなよく読んでいて、お互いにインスパイアし合っているのだろうな、とも思いました。とても素晴らしいことですね」

●問い合わせ先:
ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン 
tel : 0120-957-940
http://www.rogervivier.com/ja-jp/

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texte : ATSUKO TATSUTA

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