ジル・コルトレーヴ、サイズ40のモデルがモードの前線を揺るがす。

Fashion 2020.10.15

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ジル・コルトレーヴ。ミラノ・コレクション、2021春夏、エトロのショーにて。photo:Getty Images

身長175センチ、サイズ40。ニューヨークからパリまで、ハイブランドのキャットウォークに引っ張りだこ。モード界を賑わすモデルとは?

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フェンディの2021年春夏コレクションより。Photo:Imaxtree

2020年3月。グラン・パレで行われたシャネルのショー。おなじみのモデルたちが新しいコレクションをまとって歩く中、この会場では見たことのなかったニューフェースが現れた。ジル・コルトレーヴ、26歳のオランダ人。ふさふさの眉、かっちり切りそろえられた黒いおかっぱヘア、そして、馴染みやすい体型。それもそのはず、彼女の服のサイズは40、つまり、(フランスモードインスティテュートによれば)フランス人女性に最も多いサイズなのだ。

2020年9月。ジル・コルトレーヴはいたるところに現れた。「ブランドやビッグメゾンからの依頼が舞いこんでいます」というのは、所属モデルエージェンシー、ウーマン・マネージメントのディレクター、ナタリー・クロス=コワトン。ジャクムスでは麦畑をドレープのミニドレスで歩き、フランス版とスペイン版のヴォーグの表紙を飾り、ミラノのファッションウィークではヴェルサーチのクロップトップシャツやフェンディの赤いルックで舞台に上がった。「パリでもたくさん見かけるはず」とエージェントは保証する。とにかく、ジル・コルトレーヴは引っ張りだこ。なにしろ、彼女が登場すれば、キャットウォークにダイバーシティが表現できるのだから。

ボディ・ポジティブを讃える声

なぜ彼女なのか?「とにかく彼女は輝いているから」とエージェントは言う。「肩の力が抜けていて、自由で、自分らしくて、自分自身をありのままに受け入れている女性。それに、彼女は声を代表している。ブランドたちは彼女のような人を求めています」。彼女の人気は急上昇中だが、同時にさまざまな反響も引き起こしている。特に、ブランド側が本当の意味でボディ・ポジティブのムーブメントに賛同しているのか、という疑問だ。「ジルは、ブランド側がプラス・サイズの動きに賛同していると思わせる要素をすべて持ち合わせています」と、あるキャスティングディレクターは言う。「彼女は崇高。でも特に、サイズ34の服を作ってきたブランドにとってとてもいいサイドキックなんです」。インターネット上では、彼女を「太め」と位置付ける見方に反発し、彼女のサイズである40が現実にはとても平凡なことを指摘する声が多くあがっている。

とはいえ、当の本人は、自分がキャットウォークを歩くことを進歩だととらえているようだ。インスタグラムで、彼女はこのテーマについてホットなリアクションを重ねている。前回のシャネルのショーの後では「今後、型にはまらない他のモデルたちともっと仕事ができるといいわ」、ヴェルサーチの後には「いつかは、と思っていたブランドの仕事ができるようになるなんて信じられないわ。同じ夢を持っていても、以前なら絶対に雑誌や広告に登場できなかった新しい世代に扉を開けるならうれしい」。

 

 

友人の手助けをしたのが始まり

オランダ南部、ヘールレンの出身。ジルは、アムステルダムのモデルエージェンシー、ザ・ムーヴメント・モデルズの創始者である親友に勧められて、モデルをやってみることにしたという。今では50人ほどのモデルを抱えるこの事務所は、モデルの伝統的なコードからはみ出たプロフィールが専門。ジルはこのエージェントと契約した最初のモデルだった。ナイキの仕事でキャリアをスタート、「完全でないことの美しさ」を讃えたディーゼルの「Go With the Flaws」のキャンペーンが続いた。

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ジル・コルトレーヴのショーデビューは、アレキサンダー・マックイーンの2019年春夏コレクション。(パリ、2018年10月1日)

2018年末にはいろいろなことが起こった。ジルは初めて、アレキサンダー・マックイーンのショーでパリ・ファッションウィークの舞台を踏む。同ブランドは「専属」として、ダイヤモンドの原石を手に入れたのだ。

アレキサンダー・マックイーンのキャンペーンの後、彼女はロンドン、ニューヨーク、パリのエージェンシーと契約し、ジョアン・スモールズ、マリアカーラ・ボスコーノやジョーダン・ダンといったモデルを要するウーマン・マネージメントに所属する。プラバル・グルン、マイケル・コース、シモーネ・ロシャ、ミュグレー…と次々にショーの舞台に登場。モード業界のモデルとクリエイティブの名鑑であるサイトModels.comは、いまや彼女を、売れっ子モデル「トップ50」に位置付けている。「彼女はとても自分らしい。それが、初めて会った時に印象に残り、ブランド側が仕事を依頼してくる」とエージェントは説明する。その証拠に、彼女が手の指の内側にタトゥーしているマントラは、「Self Love(自分を愛する)」だ。

texte:Adrien Communier, Sabrina Pons(madame.lefigaro.fr)

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