Fendi キム・ジョーンズと、フェンディ家の女性たち。
Fashion 2021.08.20
新アーティスティック ディレクターに就任したキム・ジョーンズが手がけた、初のレディトゥウエア。コレクションのインスピレーション源になったのは、フェンディ家の5姉妹のワードローブ。長い歴史を紡いできたフェンディ家から、現代の働く女性たちへと贈られたギフトだ。
シャツは胸下で大胆にカットし軽快なショーツと合わせることで、フレッシュな魅力が加わる。コートの裏地にあしらわれたカーリグラフィが、フェンディのルーツを雄弁に物語る。
コート¥902,000、シャツ¥151,800、パンツ¥104,500、ネックレス¥143,000、ブーツ¥198,000、ストッキング¥29,700(ネックレス以外すべて予定価格、9月発売予定)/以上フェンディ(フェンディ ジャパン)
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ピンストライプのシルクシャツは、フェンディ家の5姉妹が日常で纏っていた仕事着から着想を得たもの。胸元に一輪のローズを咲かせた。長めのカフには、新作ジュエリーラインであるフェンディ オーロックのゴールドのカフスボタンが輝く。
シャツ¥165,000、スカート¥151,800、ストッキング¥29,700、左耳のピアス¥38,500(片耳)、右耳のピアス¥38,500(片耳)/以上フェンディ(フェンディ ジャパン)
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クラシックなデザインの襟をあしらった艶やかなピンクサテンのシャツは、同素材のハイウエストパンツとセットアップで着こなして。仕上げに砂糖菓子のようなミンクのコートを羽織ることで、究極にロマンティックなワントーンスタイルが完成する。
コート¥3,410,000、シャツ¥151,800、パンツ¥165,000、サンダル(参考商品)、ストッキング¥29,700、チョーカー¥104,500、バッグ(H18×W26×D9.5cm)¥363,000(予定価格、9月発売予定)/以上フェンディ(フェンディジャパン)
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ウエストをきゅっと絞り、背面を大胆なVネックで仕上げたシンプルなドレスは女性の身体を最高に美しく見せてくれる。背面中央に深く入ったスリットでどこまでもフェティッシュに。カーリグラフィのシグネットペンダントを、あえて背中に長く垂らして。
ドレス¥165,000、ストッキング¥29,700、チョーカー¥113,300、背中に垂らしたネックレス¥74,800/以上フェンディ(フェンディ ジャパン)
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クロップト丈で仕上げたオフショルダーのフィッシャーマンズニットとペンシルシルエットのスカートのミニマムなスタイルには、グラフィカルに輝くフェンディ オーロックの力強いゴールドを纏って。
トップ¥104,500、スカート¥165,000(ともに一部店舗限定商品、予定価格、9月発売予定)、バッグ(H23.5×W32.5×D15cm)¥396,000、ネックレス¥143,000、ピアス¥29,700(片耳)/以上フェンディ(フェンディ ジャパン)
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美しいドレープを描くスカーフカラーをあしらったミニドレス。スカーフのように首元に巻いても、そのまま垂らしてボリュームを楽しんでも、ボウタイのように巻いても。ポルカドットとカーリグラフィのプリントが、エレガントなドレスにチャーミングな遊び心を添える。
ドレス¥396,000(一部店舗限定商品)、ブーツ¥396,000(予定価格、9月発売予定)、ストッキング¥29,700、ピアス¥63,800/以上フェンディ(フェンディ ジャパン)
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フェンディは、パワフルな女性のためのメゾン。
メンズファッション業界で一躍スターダムを駆け上がったデザイナーが、新しい挑戦へ一歩を踏み出した。約半世紀もの間、フェンディのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルドの後継者となることに対し、本人が気後れしている様子は微塵も感じられない。

キム・ジョーンズ
「フェンディ」アーティスティック ディレクター。ウォッシュ加工を施したミンクのベルスリーブとボンディングのスエードコート、シルヴィア・フェンディのアイコンであるシャツジャケット……フェンディ家の5姉妹のワードローブに着想したピースの数々が、モダンに表現された。1973年、イギリス生まれ。ルイ・ヴィトンのメンズ部門、ディオール メンのアーティスティックディレクターを経て、フェンディにて55年ぶりの新アーティスティック ディレクターに着任。
――あなたはメンズファッションを学び、ダンヒルのクリエイティブディレクター、ルイ・ヴィトン メンズ部門のアーティスティックディレクターを経て、現在はディオール メンのアーティスティックディレクターです。今回は初の公式なウィメンズコレクションですか?
キム・ジョーンズ(以下、KJ):そうです。ただし、まったく経験がないわけではありません。女性のワードローブはいつだって私のインスピレーション源でしたし、これまでの私自身のコレクションの多くからもヒントは得られますし、女性プレタポルテブランドをデザインしたこともあります。それから友人たちやセレブリティの服を担当したこともあります。ティーンの頃からファッションの道を志していましたが、性別を意識したことはありません。見る目があればそれなりのことができると信じています。もちろん、これは私にとっては大きな挑戦です。25年前、ウィメンズファッションからメンズファッションへ、私とは真逆の道を辿ったシルヴィア・フェンディにとってもそうだったでしょう。

創業者の孫にして3代目当主であるシルヴィア・フェンディ。メンズライクなシャツジャケットは、彼女のアイコンでもある。

左:シルヴィアと彼女の母であるアンナ・フェンディ。右:カール・ラガーフェルドが1994年にローマで撮影したシルヴィアの姿。
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――すでにディオールで重要なポジションを得ているのにフェンディを引き受けたのはウィメンズを経験したかったから?
KJ:それは理由のひとつに過ぎません。これまでの人生で、常にパワフルな女性たちに囲まれてきましたし、仕事でもそうなることは理に適っているように思います。フェンディは並外れた女性たちが創ったメゾンで、その歴史に共感します。いま、ひとつのゴールや、情熱を傾けられる対象を、誰もが必要としています。このブランドのために働くことは夢のようです。
――54年間フェンディを導いてきたカール・ラガーフェルドの後継というのはプレッシャーでは?
KJ:カールの後を引き継ぐのは、なにより光栄なことです。彼のファッション観は自分とは異なりますが、ずっと好きでした。あまり接点はなかったものの、とても親身になってキャリアを支えてくれました。ベルナール・アルノーもそうです。ルイ・ヴィトン、ディオール、そして彼がこよなく愛するフェンディと、私を常に信頼してくれています。アルノーは、クリエイティブなビジョンに恵まれた偉大な実業家。フェンディ家3代目の女性が率いるこのメゾンで、私はスターゲストのような立場だと思っています。シルヴィア、そして彼女の娘たちでジュエリーデザイナーを務めるデルフィナとレオネッタのエネルギーを、私の仕事に注ぎ込めたら本望です。カールに話を戻すと、フェンディでの彼の遺産に育てられています。彼が1993年に描いた絵をアーカイブで見つけ、ドレスのひとつを着想しました。

1965年、フェンディのデザイナーに就任したカール・ラガーフェルドが描いた“Fun Fur”のスケッチ。ここからかの有名なFFロゴが生まれた。

1986年に撮影された、フェンディ家の5姉妹と故カール・ラガーフェルド。
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――ディオールとフェンディという、ふたつの異なる世界を両立させるのは危険ではありませんか?
KJ:そんなことはありません。素晴らしいチームが何でもサポートしてくれます。それに電話がありますからその場にいなくても、目の端で見て指示したり、承認したりすればいいんです。私は物事をどんどん進めたいタイプで、フェンディチームの仕事は非常に早い。それもファッションのエネルギーだと思っています。いずれにせよ私の中にはいま、ディオールとフェンディという大きなふたつの遺産が引き継がれています。
――フェンディは伝承技術(サヴォワールフェール)を有するメゾンですが、コロナ禍においてこれは強みのひとつでしょうか?
KJ:これまで以上にそうです。ビッグメゾンのどの顧客も極めてスペシャルな作品を購入したいと思っています。旅行はできないし、イベントや体験にお金を使うこともいまはできません。ですが、友人を招いて家でディナーをする時にドレスアップすることはできるのです。
――ディオールでの経験がフェンディで生かされましたか?
KJ:両メゾンには共通点があります。文化遺産とサヴォワールフェールです。もっともイタリアとフランスの違いはありますから異なる側面もあり、それは尊重すべきものです。メゾンというのはシグネチャーであり、デザイナーは書法なのです。

ウォッシュ加工を施したミンクのベルスリーブとボンディングのスエードコート、シルヴィア・フェンディのアイコンであるシャツジャケット……フェンディ家の5姉妹のワードローブに着想したピースの数々が、モダンに表現された。
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――あなたはさまざまなブランドやアーティストとのコラボレーションに成功していることで知られています。フェンディでは誰とコラボしたいですか?
KJ:企画段階のものは教えられません。いずれにせよ、いま周りにいるのは女性たちです。フェンディとケイト・モスとの関係はひとつのコラボレーションと言っていいでしょう。彼女は次のプレタポルテのために幾つかの小物を手がけました。ケイトは確かなセンスの持ち主です。ディナーやソワレでドレスアップした姿をよく目にしましたから。アリュールを作るのにどれだけ長けているか、彼女の美意識がどれほど細部にまで行き届いているかがわかります。姿を現しただけで、すぐに特別な人だということがわかる存在感の持ち主です。デルフィナもそうです。フェンディ家第4世代である彼女もこの存在感と素養の持ち主なのです。新ジュエリーライン、フェンディ オーロックをデザインしてくれました。

フェンディ家の5人の娘たち。左から、アンナ、カルラ、フランカ、アルダ、パオラ。

1925年に5姉妹の両親であるアデーレとエドアルドがローマで設立したフェンディ。2代目となる5姉妹が、女性の力でブランドを大きく成長させた。
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――年間のコレクション数はディオールとフェンディで8回、ハードワークに耐えられると思いますか?
KJ:もちろん。いまのところ時間はたっぷりありますから、家で退屈しないでしょう。もっとも私はきっちり区別するのが得意ですけれどね。ディオールの仕事とフェンディでの仕事、それから私生活。私生活もとても重要です。
――21年1月27日に公開されたオートクチュールが、フェンディでのデビューコレクションでした。小説『オーランドー』やメゾンのイコノグラフィを盛り込んだ理由を教えてください。
KJ:オートクチュールコレクションのコンセプトはフェンディのアーカイブから出発しました。フェンディの設立は1925年。ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』が発表される3年前です。私はウルフとその姉のヴァネッサ・ベルの大ファンです。14歳の時にチャールストンの家を見学した際にもらったパンフレットをいまも大切に持っていますし、初版本を蒐集しています。ヴァネッサ・ベルはボルゲーゼ庭園やローマの彫像の絵を多く残しました。ふたりが所属していたブルームズベリーグループにも惹かれています。ジェンダーの問題をいち早く提起したグループで、サセックスのチャールストン・ファームハウスを拠点としており、私は子どもの頃、この地方に住んでいました。こうして、私の故郷であるイギリスと、フェンディのローマを繋ぐリンクを見つけたのです。
※ル・フィガロ紙2021年1月28日のインタビューより。

イベント情報
9/8から、伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージにて、キム・ジョーンズによるファーストコレクション第2弾を世界先行発売する「フェンディ2021-22年秋冬ウィメンズコレクション ポップアップイベント」がスタート。ランウェイでひと際高い注目を集めたシューズ&バッグ「フェンディ ファースト」コレクションが一同に揃う。ヒールの部分に「F」の文字を逆さまにあしらったシューズ、「F」のフレームがアイコニックな新作バッグは、エレガントかつモダンな佇まい。新アーティステック ディレクターのキム・ジョーンズによる、新生フェンディの世界観を堪能して。
フェンディ2021-22年秋冬ウィメンズコレクション ポップアップイベント
期間:2021年9月8日(水)~9月14日(火)
場所:伊勢丹新宿店本館1階 ザ・ステージ
フェンディ ジャパン
tel:03-3514-6187
photography: Hiroko Matsubara styling: Tomoko Iijima hair: Kenshin makeup: Tomohiro Muramatsu(Sekikawa Office) interview Hélène Guillaume(Le Figaro / 2021)