ヴァージル・アブローにモード界から追悼のメッセージ。

Fashion 2021.11.30

「大きな喪失」「胸が張り裂ける思いだ」...... 11月28日、アメリカ人デザイナーのヴァージル・アブローが、がんのために41歳で亡くなった。発表に続いて、ルイ・ヴィトン メンズコレクションのアーティスティック・ディレクターだった彼にモード界は心のこもった追悼を送った。

00-211130-virgil-ablohjpg.jpg

ルイ・ヴィトン財団主催のディナーの席に登場したヴァージル・アブロー。(パリ、2021年7月5日)photo: Christian Vierig / Getty Images

悲しみの第一報は、11月28日深夜に発表されたLVMHグループの公式声明だった。「LVMH、ルイ・ヴィトン、オフ-ホワイトは深い悲しみと共に、ヴァージル・アブローがここ数年闘病していたがんによって11月28日に永眠したことをお知らせいたします」

「この悲しいニュースにショックを受けています」とLVMHグループのCEO、ベルナール・アルノーは続けた。「ヴァージルは先見の明がある天才的なデザイナーであっただけでなく、美しい魂と偉大な知恵の持ち主でもありました」

ルイ・ヴィトンのメンズコレクションのアーティスティック・ディレクターであり、「オフ-ホワイト」の 創設者でもあるヴァージル・アブローは、同世代のファッションデザイナーの中で最も影響力のある人物のひとりだった。建築家、エンジニア、DJ、アーティストとしても活躍し、そのコラボレーションは数え切れない。彼の行動範囲、応用力、ビジョンは全方位に向いていた。常に行動し続けるクリエイティブな人物が41歳の若さで亡くなってしまうなどと、一体誰が予想できただろうか。

---fadeinpager---

「特別な人物」

モード界の反応は早かった。フランス・オートクチュールおよびファッション連盟は会長のラルフ・トレダノを通じて、追悼の意を表した。「ヴァージル・アブローは先見の明を持つファッションデザイナーでした。大きなクリエイティビティを原動力とし、ファッションのコードを刷新し、メゾンを設立して大成功を収め、その才能と鋭い感性でルイ・ヴィトンに革新をもたらしました。しかし、彼を特別な人物たらしめていたのは何よりもその人間性であり、他者に対するオープンな姿勢と寛容さ、そして障壁を打破したいという思いでした」

インスタグラムでも、グランドメゾンのデザイナーやアーティスティック・ディレクターたちがすぐに反応した。2018年にルイ・ヴィトンのメンズコレクションのディレクションをヴァージル・アブローに引き継ぎ、現在ディオール オムとフェンディのアーティスティック・ディレクターを務めるキム・ジョーンズは、「これまで出会った中で最も心優しい人物のひとり」である友人の死を悼んだ。「世界中を旅したり、ホテルの部屋でくつろいだり......日本の雑誌を眺め、笑い合い、アイデアを語り合ったりして、たくさんの楽しい時間を過ごしました。私の思いは、彼の妻シャノンと子どもたち、そして残された家族とともにあります」とディオールの公式アカウントにつづっている。

 

 

ディオール ウィメンズコレクションのアーティスティックディレクター、マリア・グラツィア・キウリは、「胸が張り裂ける思いです。彼は多くの若きクリエイターたちに道を開いた優秀なデザイナーでした」と投稿した。

---fadeinpager---

あらゆる可能性

ヴァレンティノのクリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは次のような追悼を送っている。「数年前、私たちは高橋盾(アンダーカバーを立ち上げた日本人デザイナー、編集部注)を通じて知り合いました。彼らがDJをしているパーティーに行って、『いつか3人で音楽を作ろう』と約束して別れました。いまの気持ちを表現するのに適切な言葉を探せば探すほど、この思い出がよみがえってくる。信じられないほど才能豊かな若者であり、デザイナーであり、父親であり、アーティストであり、生命力と想像力にあふれ、破壊的な好奇心と人間性とでファッションのルールを変えた彼の姿は、これからも私たちの心に残るでしょう」

 

 

グッチのクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレは、初のルイ・ヴィトンのメンズコレクションのショーに登場したヴァージルの写真とともに、「あなたの優しさが天使たちの世界を照らしますように。また会う日まで」というメッセージとともに投稿。一方、ステラ・マッカートニーは「安らかに眠り、高く羽ばたけ...あなたはいまも、そしてこれからも、恩寵と美しさを兼ね備えたスターです」と囁いた。

バルマンのオリヴィエ・ルスタンは、彼のアカウントでヴァージルを抱きしめる写真を投稿し、「あなたの芸術、あなたのビジョン、あなたの仕事を通して、すべてが可能であることはっきりと示してくれました。まだ何も始まっていない頃、パリでモードを夢見ていた頃の私たちを思い出します」とつづっている。

 

 

---fadeinpager---

“クールの探知機”

ジャンシャルル・ド・カステルバジャックは、ガーナ系移民の息子で、ストリートウェアの王者となり、フランスのファッションメゾンを率いる数少ない黒人デザイナーの一人となったアメリカ人の姿を要約したポートレートを投稿し、次のようにつづっている。「ヴァージル・アブローと出会ったのは10年以上前、ヴォーヴィリエ通りにある私の昔のスタジオでのこと。彼は、アパレルブランド『パステル』を立ち上げようとしていたカニエ・ウェストに同行していた。私たちはイメージやコンセプトについて、長い時間をかけて話し合った。ヴァージルはクールを探す探知機を持っていて、混乱の中にある『偶然』の要素、インスピレーションの源、アイデアの種を見抜く方法を知っていた (......)」

 

 

そして、こう続けた。「数年後、彼はオフ-ホワイトで、そしてその後、キム・ジョーンズがシュプリームとのコラボですでに変化を起こしていたルイ・ヴィトンの真っ只中で、ストリートに革命を起こした。彼はスケートボード、ヒップホップ、バスケットボール、スニーカーといったストリートカルチャーの象徴的な要素を、テーラリング、サドルワーク、ジャカード織りといった伝統的なフレンチスタイルの偉大な要素と融合させることで、メンズファッションのコードを破壊するという素晴らしい仕事を成し遂げた。グローバル化、そしてデジタル化する世界のために、ファッションの世界をより包括的なものにすることに尽力した。デザイン、建築、ファッション、音楽の間に橋を架けることで、ヴァージル・アブローは次世代の若者に関心と情熱を呼び起こし、彼らへのサポートを惜しまなかった。彼らにインスピレーションを与え続け、自分のイメージ通りの世界を作りたいと思わせるような息吹がヴァージルにはあった」

彼のオーラは、これからもずっとモードに残り続けるだろう。

text: Marion Dupuis (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories