Dsquared2 TAOとディースクエアードが"地球"について語り合う。
Fashion 2022.02.16
イタリアブランド、ディースクエアードが2022年春夏に地球環境に配慮したカプセルコレクション「ONE LIFE ONE PLANET」を発表。双子のデザイナー、ディーン&ダン・ケイティンと、モデルやハリウッド女優、アクティビストとしての顔を持つTAOが熱い対話を交わした。
ボタニカルダイやオーガニックコットン、リサイクル素材を使い、水の量や炭素、化学物質を削減した新コレクション。自らもブランド、アボード・オブ・スノウを手がけるTAOがまず話題に上げたのは、“グリーンウォッシング”についてだった。
TAO 自然環境問題の中でいま、“グリーンウォッシング”が取り沙汰されています。企業が表向きの広告や宣伝で地球環境保護を謳い、実態は異なるという問題です。今回のコレクションのように地球環境に配慮した試みは将来的にメインコレクションまでに及ぶのでしょうか。それとも一部トライアル的に製作されたものでしょうか。
DEAN&DAN このプロジェクトは環境に配慮した素材と、製作過程に挑戦した実験のようなものだと考えています。プラスチックは1万年経っても土に還ることはないし、石油はあと50年で底をつくと言われています。そう遠くない未来に向け、循環型で持続可能な社会を作らなければなりません。私たちは、社会的および環境的な側面とディースクエアードが持つ文化的で創造的なDNAを融合する考え方を構築していきたいと思っています。そのために「ONE LIFE ONE PLANET」というコンセプトを掲げました。このカプセルコレクションは、その新しい冒険に向けての第一歩なのです。
TAO 確かにすべてを一気に変えることは難しいです。でも生産過程や素材について透明性を保つことはブランドへの信頼に繋がると思います。
DEAN&DAN その通りです。このカプセルコレクションは、環境への影響が最小限になるよう設計されています。具体的には水、炭素、化学物質を削減するために、素材をリサーチし有機およびリサイクル天然繊維やリサイクル合成繊維を調達しました。染色や仕上げの段階も革新的な方法を選択しました。
TAO 今回はボタニカルダイを使われたとのことですが、こんなに鮮やかな色をどのように染めたのですか?
DEAN&DAN イエローはウコン、グレーはメタルを潰した時に出てくる灰、ライトブラウンはカカオ、濃いブラウンはコーヒーで染めています。ピンクは地表や鉱山で発見された鉱物顔料を使いました。
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TAO 意識が高い若い層に支持を得られそうなコレクションですね。
DEAN&DAN いままでの化学染料に変わるものをリサーチした結果、天然染料のカラーバランスをとても気に入りました。80年代のムードが表現できたと思います。天然染料にない色は従来の染料に戻しましたが、なるべく人や環境に負荷をかけないものを選びました。環境に配慮することと、クリエイティブなデザインのバランスを取ることは十分可能なのです。
TAO 製造過程で水を大量に使うことが問題視されるデニムはどのように作られたのですか?
DEAN&DAN 水温を低くすることで45%の水を削減しました。またデニムコレクションの一部はオーガニックコットンと、従来の伸縮素材の代わりに革新的なストレッチ糸を使っています。その50%以上は第三者の認定を得た消費前のリサイクル素材です。つまり、このファブリックの99%以上が責任のあるリソースなのです。しかも生地の回復力は従来と変わりません。ほかにも有害物質を放出することなく数年で安全に分解されるエラストマー(伸縮素材)を使うなど、デニムは改良を重ねました。
TAO 私はファッションの未来を考えた時に、大量生産がいちばん問題だと考えています。でも一方で、企業で働く人の雇用を守りビジネスを続けるために生産量を縮小する選択も難しい。この問題にどう整合性を取り、解決できると思いますか?
DEAN&DAN まさにそれは私たちが自身に問いかけている問題なのです。考えている段階でまだ正解が出ていません。ただ言えるのは、シーズン毎にたくさんのアイテムを生産する“量の追求”ではなく、ひとつひとつの製品の“価値の追求”に焦点を当てるべきだということです。
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TAOが立ち上げたアボード・オブ・スノウは、ヒマラヤ山脈の民族的なアウターウエアを現代的に表現。大半のアイテムを日本で地球環境に配慮しながら製作する。
TAO アボード・オブ・スノウでは、ヴァージンダウンではなく製品化された後のリサイクルダウンを使っています。原材料がどこから来たのかを知ることは大切なことだと思いますが、使われているオーガニックコットンはどこで誰によって作られているのですか?
DEAN&DAN ディースクエアードのようなファッションブランドは、製品の背景に対してもっとフォーカスしなければならないと思います。すべての繊維の原産国を追いかけることは現段階では難しく、これからの課題です。でも強制労働や子どもが働き手として使われる国、人権が侵害されている国からのコットンは選ばないように努めました。
TAO 私はモデルとしてハイブランドとも仕事してきましたが、以前、生産背景を知って「もう応援できません」とお伝えしたことがあります。でも環境に配慮したアイテムが次々に発売されるようになり、少しずつ状況は変わってきていることを感じます。
DEAN&DAN クリエイティビティとファッションがいまの世界に対してどんな役割が果たせるのか示す時です。私たちの目標はこの新しい創造的な冒険に挑み、ビジョンをさらに推し進めて、時間をかけて新しい方法を根付かせなければいけません。同時にファッションは人々の表現方法ひとつで、楽しく、セクシーなもの。いまとこれからのブランドのファンとの長い関係性を築いていくために、地球の健康を損なうことなくクリエイティビティを追求したいと思います。
ディースクエアード/スタッフ インターナショナル ジャパン クライアントサービス
0120-106-067(フリーダイヤル)
14歳でモデルデビューし20歳で渡仏。アイコニックなマッシュルームヘアでコレクションを席巻。2012年には映画『ウルヴァリン:SAMURAI』で俳優デビュー。「THE LAST MAGAZINE」の発行人兼編集長でチベットにルーツを持つ夫のテンジン・ワイルドとともにアボード・オブ・スノウを手がける。自身もヴィーガンで環境や動物に関する問題を発信。フィガロジャポンのウェブサイトでは、TAO’S NOTEを好評連載中。
アボード・オブ・スノウ https://abodeofsnow.com
ディースクエアードの一卵性双子のデザイナーデュオ。1965年にカナダ・オンタリオ州に9人兄弟の末っ子として生まれる。ニューヨークのパーソンズで学んだ後、95年にメンズコレクションをミラノで発表。マドンナのPV『Don’t tell me』の衣装提供し転機に。クリスティーナ・アギレラらセレブリティとも親交が深く、カナダの大自然や北米カルチャーの影響を受けた自由でスポーティーなラグジュアリースタイルにファンが多い。
text: Maki Shibata