「厚底靴」のブームが再び到来!その背景に隠されたメッセージとは?

Fashion 2022.04.12

ランウェイで目立ったXXLのプラットフォームシューズが、SNSにも溢れている。厚底靴のカムバックの背景には、繰り返されるトレンドを超えて、ある象徴的な意味がある。

XXLのプラットフォームシューズは、Instagramでファッショニスタたちの足元を飾っている。Instagram / @annelauremais

ヒールは15cm、プラットフォームは6cm——厚底靴が流行っている。ヴァレンティノからザラ、カルトガイアからノダレトまで、さまざまな場所、さまざまな価格で売られている。

このトレンドに火をつけたのは、ほかでもない、Z世代のSNS、TikTokだ。「ブラッツ・チャレンジ」というハッシュタグでこのトレンドが生まれたのは、ロックダウン中の2020年のこと。そこでは、2000年代前半に人気を博した人形「ブラッツ」(ジェイド、サーシャ、ヤスミン、クロエ)を意識した特徴的なメイクアップを再現した投稿が相次いだ。クロップトップ、ミニスカート、パンタロン、カーリーヘア、そして流行りのXXLプラットフォームシューズ……この流行はかなり勢いを増している。

 

 

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影響を受けて

ブラッツの装いは同時期に爆発的な人気を誇ったガールズバンド、スパイス・ガールズのコスチュームと酷似している。「彼女たちのファッションは印象的で、とても過激でした。当時のポップカルチャーは大変セクシーでありながらピュアで初々しい印象です」とウェブサイト「TDM(テンダンス・ド・モード)」の編集長、リズ・ユレは述べる。実際、スパイス・ガールズのヴィクトリアが着る服も、ブラッツのヤスミンが着る服も、そのシルエットは少女っぽさを醸し出している…ちょっとチープだけど。

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ブリット・アワードでのスパイス・ガールズ:ジェリ・ハリウェル、ヴィクトリア・ベッカム、エマ・バントン、メラニー・ブラウン、メラニー・チズム(ロンドン、1995年)photo : Getty Images

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半分過激で、半分ピュア

ブラッツは、当初は子ども向けの人形として売り出されたが、すぐに物議を醸した。セクシーすぎると見なされ、保護者たちが嫌がるようになったのだ。「彼らは下品とされるブラッツより、バービーを買いたがったのです」とリズ・ユレは説明する。しかし、小さな子どもはお構いなしに、すっかり夢中になってしまうのが難点だ。1995〜2005年生まれの子どもたちは、哺乳瓶を加えながら、美意識の中にブラッツを記憶していたようだ。

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2022年春夏ファッションウィークでヴェルサーチェのショーに登場したデュア・リパ。(ミラノ、2021年9月24日) photo : Getty Images

ネイキッド・ウルフやドールズキルといったブランドは、100%ブラッツを意識した靴を扱い、顧客がそこに集中している。しかし、この流行は一部の熱狂的なファンの一瞬のブームには留まらない。ハッシュタグ「#bratzshoes(ブラッツシューズ)」は、現在、TikTokで400万回以上再生されている。(届いた)箱を開梱する動画や今日のファッションを通して、2000年代に流行った美的感覚が再び脚光を浴びている。

2022年春夏ヴェルサーチェのショーでのデュア・リパや、ヴァレンティノなど、ランウェイで見かけるだけでなく、ファッショニスタの足元にも見られ、オリヴィア・ロドリゴはブルータルのミュージックビデオでも着用している。

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「ちょっと前まで控えめが流行っていた」

少し前までは、控えめなルックが流行っていた時期もあった。「ジャンヴィト・ロッシのアイコニックなサンダルやシャネルのキトンヒール(ローヒール)やスリングバックシューズなど、細いヒールに注目が集まっていた」と、インスタグラムのコンテンツクリエイター、アリソン・トビーは述べる。34万人のフォロワーを持つこのファッショニスタにとって、一瞬で服をドレスアップしてくれるこのXXLプラットフォームは、力強い表情、女性らしいセクシーなシルエットを可能にするという。

でも、気をつけなければならないのは、「やり過ぎないこと」。街で履くなら、アリソン・トビーが提案するように「オーバーサイズのブレザーとテーラードパンツでワーキングガール風に」、あるいは「シンプルにブルージーンズと白いTシャツ」に合わせると良い。大げさすぎず、スタイリッシュに取り入れるべきだ。ありきたりにならないこと。

インスタグラマーはすでにミニドレスバージョンに挑戦している。メリットは? 「とても、とても、とても長い脚! ヴィクトリアズ・シークレットのモデルになったつもりで、夜遊びができるわ」と、このインスタグラマーは冗談めかして言う。そして、目もくらむような高さにもかかわらず、若い彼女はその履き心地について「とても快適」と断言する。

 

 

プラットフォームシューズに、専門性の低いブランドも挑戦している。カルトガイア(ネット通販のプレミアムブランド)のデザイナー、ジャスミン・ラリアンは、ブラッツ人形に魅了されている。彼女はこの世界観をファッションに取り入れ、ドールブランドとコラボまでしている。

Acne Studioも2022年春夏コレクションでは、このビッグプラットフォームに完全にフォーカスしている。ステラ・マッカートニーもトレンドにぴったりだ。ストラディバリウスやZARAといったファストファッションブランドも参入している。「コピーするのは全然難しくないし、最も消費する世代が必ずしも大きな予算を持っているとは限らない」

2019年に誕生したノダレト・パリ(Nodaleto Paris)は、「70年代、90年代、大胆、トレンド好きの人のためのプラットフォームシューズブランドとして市場での地位を確立しています。12cmのヒールのあるブーツやベビー服はもちろん、8cmヒールの実用的なアイテムもあります」

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美の法則を打ち破れ!

この靴を履くことは、プロポーションを楽しむことであり、美のスタンダードを覆すことでもある。「自らの身体を最適化し、バランスをとることができるのです」とリズ・ユレは言う。これは、美や伝統的な女性らしさのコードを破りたいという世界的な現象の一つだ。

 

 

この靴の最後の黄金期は1970年代。「ヒールの真ん中に穴の開いた極太ヒール」や「ローラースケート靴」が生まれたのもその頃だ。1940年代にはすでにこのようなプラットフォームシューズがあり、実用化を目指していた。

中世の女性もチョピンと呼ばれる靴を履いて、道端の土に触れないように歩いたとか。「巨大に見えるものの、現代のものと全く同じです。美術館で見たら、ドラッグクイーンの靴だと思うかもしれませんね」と、リズ・ユレは冗談めかして言う。

しかし、プラットフォームシューズに込められたメッセージは、単なるファッションの域をはるかに超えている。「時代の流れの一部であり、ジェンダーの垣根をなくしたいという願望の一部でもある」と彼女は述べた。XXLのプラットフォームを持つこの高い靴は、エンターテイメントとジェンダーロール(社会的性差)の世界では不可欠な存在だ。

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高みを目指す

このシューズが再びスポットライトを浴びたことで、#Metoo運動は他人事ではなくなった。女性たちは以前難しかったパワーや強さといった外見的な属性を身につけるようになった。「そして、このムーブメントによって、人々は女性たちに対して何を言うべきか、より注意深くなりました」とリズ・ユレ。彼女たちは、男性の視線を浴びることなく、また、何が何でも男性を喜ばせようとすることなく、ありのまま官能性を発揮しているのである。「もう、自分の欲望を否定する時代ではない」

アリソン・トビーは、この靴を履くことで、すべての世代が「仮定し、挑戦し、高みを目指している」と語り、マリリン・モンローの「女性に正しい靴を与えれば、彼女は世界を征服できる」という言葉を引用している。確かにその通りだ。

text : Mathilde Seifert (madame.lefigaro.fr) translation : Hanae Yamaguchi

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