ヴァレンティノ 2023-2024秋冬オートクチュールコレクション シャンティイ城でヴァレンティノが壮大でヒューマンなショーを発表。

Fashion 2023.07.10

7月5日、メゾン ヴァレンティノは2023~24秋冬オートクチュール・コレクションを発表。クリエイティブ ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリが会場に選んだのはパリの北部約40KMに位置するシャンティイ城で、招待状にはフランス王家の百合の紋章が描かれていた。コレクションのテーマは「Un château(アン シャトー)」で、時代も地域も特定しない’’ある城’’を意味し、「人生観の表現であり、分析され、疑問を投げかけられ、再定義されるべき象徴でもあるのです」と彼は語っている。

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シャンティイ城。アンドレ・ルノートルが設計した庭園へと降りる階段が華麗な舞台に。

シャトーが地位や権力の象徴だったのは過去のことで、今日はその歴史を否定し、新たな意味合いを持ってそこに存在している。それはオートクチュールについて人々が持つ先入観のメタファーにもなる。「シャトーの歴史が 再構成されるとき、その期待は混乱を招き、矛盾を生み出すかもしれません。建築的に複雑なシャトーと、 複雑であると認識されているオートクチュール。そうした複雑さの中に、純粋なシンプルさを見出すことができます」と。このコレクションにおいてピエールパオロを導いたのは、彫刻家コンスタンティン・ブランクージの「シンプルとは、複雑さを解消したものである」という言葉だ。一切の無駄を削ぎ落とし本質だけを捉えた具象作品として名高い『空間の鳥』を始め、ブランクージの彫刻を思い浮かべてみるとわかりやすいだろう。

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アンドレ・ルノートルが設計した庭に設けられたキャットウォークに最初に登場したカイア・ガーバーが着ていたのはオーバーサイズの白いポプリンシャツ、ガラスビーズの刺繍がトロンプロイユ効果でデニムに見えるシルクガザールのパンツ、大きなリボン付きのフラットシューズ、シャトー内を照らすシャンデリアを想起させるクリスタルのイヤリングで、そこにはシンプルさの中にパワーとエレガンスが漂っていた。オートクチュールを特徴づける卓越のクラフツマンシップに現代的でモダンな感性を反映させ、そして引き算のプロセスを経て生まれたメンズも含めて76体のコレクション。それを見事に象徴するファーストルックである。

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びっしりと刺繍されたガラスのビーズがデニム感を作り上げるトロンプロイユのジーンズ。気が遠くなどの手仕事が込められている。

優美なシャトーを背景にフラットシューズでランウェイを自由な足取りで歩くモデルたち。シンプルなドレープが体の動きに合わせて揺れ、裾が風にたなびき、ときにファブリックは軽い音を立て、モデルたちの5本の指を飾るリングが輝いて……。遠目にはプリントにみえるけれど実はクリスタルで縁取りされたカットワークだったり、城のあるシャンティイ生まれのボビンレースを思わせるモチーフがメタルとストーンで刺繍され、ギピュールレースを思わせるカシミアの花模様や、王がまとうアーミンの毛皮の黒斑のようにエコファーに施されたフェザー・ワーク、ヴィンテージのジーンズLevi’s® 501 XX Big E に刺繍されたゴールドに煌めくアラベスクなど、シンプルな中に秘められたプレシャスな表現に驚かされる。ミニマルにアレンジされたアラベスク模様をマキシムに拡大したプリントもモダンなら、バイヤス裁ちのシンプルなシルクビロードのドレスに施されたドレープは過去を今の時代に呼び覚ますよう。フューシャピンク、エレクトリックブルー、エメラルドグリーンとカラフルに展開する中に、もちろんヴァレンティノ・レッドも。ラストルックは胸もとに細かいドレープを寄せたアッシュ・ホワイトのシンプルなビュスチエドレス。暮れなずむ7月のフランスの宵、1日の終わりの優しい日の光がシャトーを照らしていた。

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人間の手仕事なしには完成しないオートクチュール・コレクション。フィナーレはモデルに続いて、ピエールパオロ・ピッチョーリとともに白い上っ張りを羽織ったアトリエの職人たちがランウェイを周り、壮大でヒューマンなショーを締めくくった。なお、このショー終了後、会場のセットや小道具は回収され、学生やあらゆる年代のクリエイターを含む10,000人以上のコミュニティに提供するリユースの取り組みを実施することになっている。

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ピエールパオロ・ピッチョーリを先頭に歩くアトリエの職人たちに大きな拍手が送られた。

16世紀に建てられたシャンティイ城は、最後の城主となったフランス最後の王ルイ・フィリップの息子オーマル公がコレクションした膨大な量の芸術作品を所蔵していることで知られている。公は存命中の1884年に城をフランス学士院に寄贈したのだが、その際に彼が展示したままの状態を守り、またコレクションの外部貸し出しを一切しないことを条件とした。それゆえに、ここまで足を運ばないと一生鑑賞できないラファエロ、ボッティチェリ、アングルたちの作品を目指して、世界のアートファンがシャンティー城に集まるのだ。

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左 夕暮れ、優美な姿が池に映り込む。中 ショー後、城内のギャラリーでコレクションが展示され、緻密で豊かな職人技を手にとれる場所でみることができた。右 城が持つ3点のラファエロの作品の1つである『三美神』(1504〜1505年) photos Mariko Omura

ヴァレンティノの全ルックはこちら。

text: Mariko Omura

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