フェンディ2023秋冬クチュールコレクション ハイジュエリーからインスパイアされた、フェンディのクチュール。
Fashion 2023.07.16
ローマにアトリエを置くフェンディは、パリ・オートクチュール組合のコレスポンディングメンバーとして、毎シーズン、パリでクチュールコレクションを発表している。今シーズンも、旧証券取引場であるボロニアール宮で、ランウェイショーを行った。
まるでアートギャラリーのようなホワイトキューブに仕立てられた会場。クラウス・ノミが歌う「コールド・ソング」のバロック風イントロダクションが流れ始めると、最初のモデルが姿を現した。
ファーストルックは、ドレープの美しい、アシンメトリーのベージュのドレス。
左:エメラルドグリーンのサテンのドレス。
中央:真紅のミニドレスも、同色のバッグを胸に添えて。
右:ドレスと同色の小さなバッグを添えて。真っ黒なドレスの胸元にはハイジュエリーが光る。
アシンメトリーなベージュのロングドレスは、左肩から流れるドレープの造形が美しく、まるで彫像が歩いてくるような印象さえ感じさせる。続いて、艶やかに輝く、エメラルドグリーンのシースドレスや、腰回りの丸みをドレープが引き立てる真紅のミニドレスが現れる。指輪と一体になった小さなバッグを胸に次々と登場するモデルたち。シンプルな白い空間に、一体一体のシルエットがくっきりと浮かび上がる。
「今シーズンは、クチュール技法ならではの滑らかさ、流動性、そしてフォルムに集中し、これらの要素を現代のアティテュードと結びつけたいと考えました」と、アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズは語っている。どのルックでも、ドレープや立体裁断のテクニックで、滑らかに流れる布地の柔らかな表情や、ハリのある素材が生む立体的なフォルムが追求されている。シンプルに見えて、精密で厳格なテクニックだけが実現できるボリューム。クチュールのカッティングと縫製の技を駆使して、女性の体と布地が生む造形の美しさを捉えようとしたコレクションだ。
手仕事のスパンコールやビーズ刺繍が、ドレスのシルエットを引き立てる。上からコルセットをあしらったドレスも印象的。
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このコレクションは、ジュエリーのアーティスティック ディレクター、デルフィナ・デレトレズ・フェンディがイメージしたハイジュエリーのデザインがベースになっているという。「ジュエリーを身につけないルックも、コレクションのカラーパレットや装飾を通して、衣服そのものがジュエリーのアイデアに」というキム・ジョーンズの言葉通り、ブラックダイヤモンド、ルビー、サファイアやエメラルドの色で仕立てられたドレスたちは、シルクやサテンの光沢、あるいは同系色でさりげなく施されたスパンコールやビーズ刺繍の光を受けて、宝石のように輝く。
まるで大粒のピンクトルマリンを思わせる、フィナーレのきらめくセットアップ。
ラストを飾ったのは、ビジューとスパンコールに埋め尽くされたピンク色のセットアップで、まさにきらめく宝石のイメージ。1200時間もの手作業から生まれたものだという。これもまた、クチュールだけが実現することのできる、夢のルックなのだ。
フェンディの全ルックをチェック。
Photos: Fendi, text: Masae Takata(Paris Office)