ショーメが彩る、ハイジュエリーの庭園へようこそ。
Fashion 2023.07.23
ヴァンドーム広場12番地。ショーメの2023年ハイジュエリーのプレゼンテーションは、本店の2Fにあるル・グラン・サロンで行われた。サロンに足を踏み入れると、シダや苔のインスタレーションの柔らかなグリーンが目に飛び込んでくる。
今年のテーマは、「ル ジャルダン ドゥ ショーメ」、すなわち、ショーメの庭園。ナポレオン一世の皇后ジョゼフィーヌが愛した麦のティアラ、1850年代に制作されたパンジーのティアラなど、1780年の創業以来、常に自然にそのイマジネーションを求め、クリエイションの糧としてきたショーメにとって、庭園のテーマはまさにメゾンのDNAともいえるもの。4章構成で、植物たちの美しい造形を高貴なジュエリーの形に仕立て上げた。
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第一章の「森と下草」では、ヤドリギやシダ、ポプラなどの表情をとらえた。コロンビア産エメラルドを中心に、様々なカットのダイヤモンドを散りばめた葉に天然パールの珠をあしらったヤドリギは清楚な表情。ダイヤモンドとホワイトゴールドからなるシダをかたどった8点のパリュールは、いかにもショーメらしい繊細な姿を見せる。
エメラルドを取り巻くダイヤモンドと真珠が清楚な、ヤドリギのネックレス。
シダのティアラ。葉の上にきらめく朝露を表現するために、2種類の技法でダイヤモンドをセット。
第二章の「畑」では、1825年のターコイズブルーのパリュール以来、繰り返し登場している葡萄の木を、ダイヤモンドとホワイトゴールで描いた。さらにラックスピネルとルビーを加えて色づくぶどうの実を表現したネックレスは、重なり合う葉や蔓の隅々までがダイヤモンドで覆われ、立体的な造形が美しい。
5.18カラットのモザンビーク産ルビーが色づく葡萄の房を想起させるネックレス。
第三章は花。ブルースピネルで、あるいはイエローサファイアで、モダンかつグラフィックなデザインに仕上げたチューリップやカラー。一方で、ダイヤモンドにファンシービビッドイエロー ダイヤモンドやパパラチアサファイアを散りばめたパンジーでは、自然の色を写し取ったような繊細な色のグラデーションに目を奪われる。
ピンクサファイア、ブルーサファイア、パパラチアサファイアをダイヤモンドと合わせ、見事な色のグラデーションでパンジーを表現したパリュール。
最終章は、世界の花束。メゾンのもうひとつのDNAともいえる金細工のサヴォワールフェールを駆使して、ブラッシュ加工のゴールドで花びらを表現したダイナミックなマグノリアの花や、ピンクカルセドニーとダイヤモンドの花びらが深い色合いのサファイアを囲む菊の花は、凛とした、風格を感じさせるデザインだ。
15.71カラットのクッションカットのセロン産サファイア。夜空の花火のように鮮やかな、菊の花のネックレス。
ゴールドにブラッシュ加工を施し、マーキースカットとアンペラトリスカットのダイヤモンドを添えた、マグノリアの花のイヤリング。
有機的なフォルムや色のグラデーションを自然のままに再現したピースもあれば、それぞれの花の佇まいとエスプリをグラフィックなデザインで表現したものもある。希少性の高い特別なストーンを主役にしたピースがあり、細かい加工を施されたゴールドが個性を発揮する作品がある。ショーメの描く自然は、実にさまざまな表情。200年以上もの間、自然主義を掲げてきたジュエラーらしい、珠玉のコレクションだ。
text: Masae Takata(Paris Office)