アンジェリーナ・ジョリーのブランドショップがオープン。

Fashion 2024.01.17

女優のアンジェリーナ・ジョリーが立ち上げたファッションブランド「アトリエ・ジョリー」のショップ1号店がオープンした。そこはかつてアンディ・ウォーホルが所有していた歴史的な建物だ。

アンジェリーナ・ジョリーのショップは12月5日、ニューヨークのノーホー地区、グレート・ジョーンズ通り57番地(57 Great Jones Street)にオープンした。5月にファッションブランド、「アトリエ・ジョリー」が設立されてから半年、ようやく一般の人も彼女のコレクションを目にすることができるようになった。ここはニューヨークで最も人気のある地区のひとつ。2フロアで600m2強の広さがある店舗の建物は1980年代初頭、アンディ・ウォーホルが所有していた物件で、ここをジャン=ミシェル・バスキアが借りていたこともある。著名なアーティストたちが行き交った場所をアンジェリーナ・ジョリーが引き継ぐわけだ。

賃貸条件はオープンにされていないが、ハードルはなかなか高そうだ。ニューヨークのアート雑誌、「アートニュース」によると、2022年11月の時点でこの物件の賃料は月6万米ドルだった。アンジェリーナ・ジョリーは、当初10年契約を提示されたが、最終的に8年の賃貸契約を結んだらしい。「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の取材に対し、アンジェリーナ・ジョリーは「おそらく赤字でしょう。それもかなりの期間そうなる恐れがあります」と話している。そして「もしも、自分が前進だと思うことを実行できて、それで収支トントンになれば、それだけでも大きな成果です」と付け加えた。さらにファッション業界メディアの「ビジネス・オブ・ファッション」のポッドキャストに出演した際には、自分の目的はブランドの成長ではなく、このビジネスモデルがうまく行くかどうかだと語った。

---fadeinpager---

革新的なコンセプト

このショップは、女優のブランドコンセプトが反映されたものだ。客にも服の創作過程に加わってもらいたいと彼女は考えている。販売されている服はそのまま購入することもできるが、手直しすることも、完全にリデザインすることも可能だ。ショップスタッフのなかにはアートとデザインの名門校、パーソンズ・スクール・オブ・デザインの学生もおり、刺繍を加えたり、ショップで扱っている生地やボタンを選択したり、あるいは自分で持ち込むこともできる。本当に気に入った服を長く愛用することで、より良いものをより少なく消費することを目指している。「誰もが同じような服を着て流行を追いかけるのは生きている実感がしないし飽きてしまいます」とポッドキャストで女優は語っていた。

客はショップへ自由に出入りでき、「イート・オフビート(Eat Offbeat)」と名付けられた店内カフェでくつろぎながらサンプルをチェックすることも可能だ。このカフェはシリア出身のララ・ジアデら、難民や移民のシェフたちに任されており、バクラヴァ、アシュタ、ケナフェといった中東のデザートを提供している。アンジェリーナ・ジョリーが目指すのは誰もがくつろげる店。壁の一部はグラフィティ・アートで埋まっている。これは改装工事中に発見されたもので、ジャン=ミシェル・バスキアの作品だ。まさに文化遺産的な建物なのだ。

---fadeinpager---

歴史的な場所

03-240116-angelina-jolie.jpg

アンドレア・ナイトクラブでのジャン・ミシェル・バスキアとアンディ・ウォーホル。(ニューヨーク、1984年11月7日)photography: Ron Galella / Ron Galella Collection via Getty

グレート・ジョーンズ通り57番地の建物はこれまで多くの所有者の手に渡ってきた。1860年に建てられ、馬小屋、治金工場、ポール・ケリー率いるギャング団の本部として使われた後、1970年にアンディ・ウォーホルが購入した。ウォーホルはその後、ジャン=ミシェル・バスキアのメンターとなり、1983年にバスキアへ2階のロフトを貸した。ウォーホルは当時の日記にこんなことを書いている。「彼は自分がただの流れ星でしかないことを恐れている。私は心配するな、お前はそうじゃないと言った。でも時々心配になる。グレート・ジョーンズ通りの家を貸しているからだ。彼が流れ星に過ぎなくて、家賃を払うお金がなかったらどうしよう」と。この場所でバスキアは『King Zulu』や『Riding with Death』等の代表作を描いた。さらに1988年、ヘロイン過剰摂取で画家が亡くなったのもここだった。アンディ・ウォーホルの遺族たちは2年後に建物を売却する。以後、ここはストリートアーティストたちの聖地となり、バスキアへのオマージュとして建物正面にグラフィティを残す者が絶えない。

アンジェリーナ・ジョリーは建物の歴史を保存することに熱心で、グラフィティのついた建物内外の壁や正面をそのまま残すつもりだ。「自分の内にある若いパンク魂はどうやら、規範に抗って壁に絵を描きたいと感じているようです」とビジネス・オブ・ファッションのポッドキャストに語っている。ここではシンプルな15ドルのTシャツにスプレーペイントすることも可能だ。アンジェリーナ・ジョリーはウォール・ストリート・ジャーナルに「ファッションショーにもメット・ガラにも自分は行ったことがない」と語り、「ヴォーグ」誌には「偉大なデザイナーになりたいわけではありません。他の人たちがなれるような家を建てたいのです」と抱負を語った

text: Sarah Renard (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories