気鋭のクリエイター、ロエベ、深津絵里がコラボレート! その「風変わり」な舞台裏にクローズアップ。

Fashion 2024.03.08

ロエベが2024年春のウォレットキャンペーンで、一粒万倍日を祝うショートフィルム『天道虫/THE LADYBUG』を公開。新進気鋭の監督、八代利季が指揮を取り、俳優の深津絵里が主演を務めたこのちょっと"風変わり"で壮大なワンシーンのような映像はたちまち話題に! フィガロジャポンではその舞台裏に迫る。 

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"幸運と遭遇"をテーマに古典西部劇の決闘シーンを想起させるキャンペーンフィルム『天道虫/THE LADYBUG』は、砂埃が舞うコンテナヤードが舞台。同シーズンのウィメンズコレクションに身を包んだ深津が、男と対峙する緊迫した空気感が印象に残る。そんな一風変わった世界を描いた八代監督は、東京生まれのアメリカ育ち。映画監督、作家、写真家とマルチに活動し、2022年には、東京で暮らす人々の日常を描いた短編映画『Tokyo Animals』(2022)が、アメリカ・ユタ州で開催されたスラムダンス映画祭2024に出品されたばかりだ。

今回、ロエベからのオファーに際し、「とてもワクワクした」と話す八代監督。「メキシコからテキサス州に移動しているときに、財布をなくしてしまったんです。それで、エルパソ空港近郊の小さなモーテルで1週間くらい足止めをされていたのですが、夜中に電話が鳴って、このウォレットキャンペーンの企画に参加しないかと連絡を受けました。私の『Tokyo Animals』を観てくださったそうで、何かの縁を感じましたね。今回の協働が正式に決まった時は、とても光栄でした」と振り返る。

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クランクアップの瞬間、拍手をおくる八代監督。

今回のキャンペーンフィルムには、深津絵里を初め、3人の登場人物が描かれる。「深津さん演じる主人公の女性とレザージャケットを着た男性はかつての同僚であり、古くからの知り合い。ともに生き方として"タフであること"が根付いているような人物なのです。女性は、レザージャケットの男性から呼び出され、スーツ姿の運転手兼相棒の男性と一緒に、かつての同僚の到着を待っている。実は、彼女は過去にレザージャケットの男性と幾度か対立し、裏切られた経験があって、そのことが女性を慎重な面持ちにしているんです」と八代監督。

「物語が"対立"というシンプルな構造だから、クリエイターである私たちは両者の関係性や背景など、映像に映らない部分にまでさまざまな遊びを張り巡らせることができました」。

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深津が演じる女性の立ち振る舞いは、"強さ"というものを表現しているとも話す。「彼女は、過去にトラブルがあった男性と再び対峙するために、あの場にやってきたわけですから。男性に面と向かって対峙するタフさを持ちながら、女性らしいフェミニンな一面も持っている人。長い年月を経て、内なるパワーを培ってきた女性なのです。男性社会の中で、徐々に地位を築いてきた。"優雅で自信に満ち溢れた女性"という理想像を胸に秘め、それに近づくために、苦い経験も乗り越えてきた。

そんな彼女は、自身の女性らしいフェミニンな一面を尊重していて、男性のように振る舞ったり、極端な行動に走らずとも、自らがタフさを発揮できると感じているのです。彼女のアイデンティティは、オープンマインドでエレガント。フェミニンでありながら強さも兼ね備えている。彼女は自分の価値を知っている女性なのです」

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ショートフィルムでクローズアップされるのはペブルのついたレザーウォレット。日本限定色の桃の花をイメージしたピンクブロッサムと幸運のモチーフであるてんとう虫が交差するシーンに思わず見入ってしまう。

このショートフィルムを通して、八代監督が伝えたかったことは何なのか?

「描きたかったのは、パワー。それはさまざまな強さについてです。深津さんの役柄は、自分に正直で実に人間的な人物。一方、レザージャケットを着た男性は、生まれ育った環境や境遇によって形成された、硬直したキャラクターを表現できればと思いました。深津さんには、他のキャラクターにはない人間くさい一面を表現してもらいたかった」。

制作にあたって数多くのプロットを考えていたという八代監督。「さまざまなジャンルの映画をもじった内容で、どれも楽しいものばかりでしたが、ユーモアがありながら日本的で西部劇のワンシーンを思わせるこの『天道虫』のプロットに絞り込みました。向かうべき方向性を明確に絞って着地させることができました。壮大な物語のワンシーンのように感じられる、独創的なショートフィルムに仕上がったと思っています」。

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主演の俳優、深津絵里が2023年9月にパリで開催されたロエベの2024年春夏シーズンのウィメンズコレクションのファッションショーに駆けつけ、話題をさらったことは記憶に新しい。彼女にとって初めてのパリコレで、フロントローを飾ったその姿に魅了された人も多いだろう。そして、今回、短編映画に主演した彼女は、八代監督が提案するスクリプトに深く関心を持ったのだとか。

「深津さんと一緒に仕事ができたことは、本当に夢のようでした。彼女はプロフェッショナルであり、偉大な功績を持つ方。『このキャラクターはどんな人なのか』、『どんなバックグラウンドを持っているのか』、『彼女は気難しい性格なのか、または通念に捉われない人なのか』など、キャラクターを深ぼる質問をいくつもしてくれ、対話を重ねることができたんです。当日の深津さんの演技は、私の想像を超えるものでした。役についても事前に熟考して下さっていたようで、私から演技に関する要望などは一切必要なく、撮影を終えることができました。彼女だけでなく、このプロジェクトに携わってくれた皆さんは本当に素晴らしく、まさにドリームチーム! すべてのプロセスが楽しく、その想いを映像から感じらてもらえたら幸せです」。

text: Tomoko Kawakami, photography: courtesy of LOEWE/Katsuhide Morimoto

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