Louis Vuitton Cruise 2025 ユートピアをランウェイに、ルイ・ヴィトン2025年クルーズコレクション。
Fashion 2024.05.26
2024年5月23日、アントニ・ガウディが手がけたバルセロナのグエル公園にて、ルイ・ヴィトンの2025年 ウィメンズ クルーズコレクションが発表された。
ファーストルックは、グエル公園の回廊にシンクロするベージュカラーのジャケット風ドレス。ガウチョハットとフューチャリスティックなサングラスがアクセントに。
1914年に完成し、現在はユネスコの世界遺産に名を連ねる公共の庭園でもあるグエル公園は、サグラダ・ファミリアに並ぶバルセロナの一大名所であり、世界中の建築ファンにとっての巡礼地のひとつ。もとはアントニ・ガウディがパトロンのエウゼビ・グエルとともに「田園都市論」に影響を受けた住宅地を作り上げようとしたこの場所は、彼らが目指したユートピアだった。
この絶え間なく変化し続ける遺産でランウェイショーを開催するというアイデアは、ルイ・ヴィトンにふさわしいもの。ショーはスペインの活気に満ちた文化に彩られ、その華麗で純粋な文化にオマージュを捧げるかのように、メゾンの厳格なスピリットはスペインの情熱的な個性を歓迎している。色彩への熱意、伝統への忠誠が芸術的表現に昇華され、明暗は矛盾することがない。クルーズ・コレクションは、異なる土地の特別さと、それを自分のものにすることで豊かになる旅の真髄(こころ)であり、発見の旅なのだ。
グエル公園内の「市場」を客席が並ぶランウェイに。
舞台演出は、ウィメンズ アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールが信頼を置くプロダクションデザイナー、ジェームズ・チンランドが担当。モデルたちは有機的なアーチが連続する回廊の奥から現れ、短い階段を降りて古代ギリシャ建築を模したドーリス式の柱が並ぶ「市場」内の空間の曲線に沿って配置された客席を歩いた。サウンドトラックは、ゲイリー・ニューマンの「Music for Chameleons」とマルコム・マクラーレンの「Madame Butterfly」。クライマックスへ向かうところから聴き慣れたアリアのサンプリングが響き、ショーを盛り上げた。
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スペインの文化へ敬意を表し、オマージュを捧げた今回のクルーズ・コレクションだが、すぐに目で見て認識できるようなスペイン的な要素はあまり見られない。とくにトップから続く前半のルックで表現されているのは、ビッグショルダーに代表される80年代なオーバーシルエットが表現する自由さや若々しさ、ウエストを絞ったスーチングやコートドレスに見られるストイックな厳格さだ。
カラーパレットはガウディの建築物を連想させる淡いベージュや石畳のグレーといったニュートラルなカラー、それにブラックとホワイト、時にネイビーが主流。シックでクールな印象を与える。
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絵画や映画、建築など、スペインから得たインスピレーションは、そのまま取り入れるのではなく、メゾンのコードに落とし込みながら、ラグジュアリーなツイストと独自のデザイン解釈で昇華。水玉モチーフをレースに刺繍した構築的なドレスや美しいモザイク画のようにビーズや刺繍をあしらったラッフルドレスは、フラメンコの衣装を想起させる。また、ガウディ建築に見られるタイルやオーガニックなラインをデザインに取り入れているのも特徴のひとつ。そのほかスペインの伝統工芸のレースや司祭のローブにオマージュを捧げたようなシリーズも。
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スペインから南米へと渡った人々の末裔たちのスピリットが、ガウチョハットやポンチョ風のトップ、ジョッパーズ風パンツ、ディテールではフリンジとなって表現されている。
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フィナーレへ向かって、ガウディ建築的な曲線は、より有機的に3Dのバルーンシェイプと変化。バルーンは変形し、ドレープはうねりとなり、"服のかたち"という既成概念を覆しながらも美しさやラグジュアリーの本質を啓示する。奇想天外な大胆さ。スペインという国からニコラ・ジェスキエールがイメージしたのは、そのスピリットなのかもしれない。
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今回はすべてのルックにバッグが付いていたわけではなかったが、それでもアイコンバッグの新色など、気になる新作が盛りだくさん。
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ストロー素材のガウチョハットと80sのムードを表現したサングラスは、クルーズ・コレクションを象徴するアクセサリー。そのほか彫刻的で大胆なフォルムのイヤリングも目を引いた。シューズはブーツが主流で、なかでもアンクルブーツやフリンジブーツはファッショニスタのitアイテムに。
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フロントローにはアナ・デ・アルマスとレア・セドゥの姿。
世界各国からセレブリティがグエル公園に集結。アンバサダーのジェニファー・コネリー、レア・セドゥ、アナ・デ・アルマス、シアーシャ・ローナン、ソフィ・ターナーのほか、Stray Kidsのフィリックス、フレンド・オブ・ザ・ハウスを務めるローラ、そして大坂なおみや中田英寿などの豪華ゲストが来場した。
text: Natsuko Kadokura