UTAと内田伽羅 そしてモンブラン、 手紙で繋ぐ家族の絆。
Fashion 2024.07.22
モンブランを代表する万年筆、マイスターシュテュックが今年で誕生100周年を迎える。「書く」ことで家族の絆を繋いできたUTAと内田伽羅兄妹が、マイスターシュテュックを使ってそれぞれが暮らす東京とパリから手紙を送り合った。手紙だから語れた二人の想いとは。
パリから東京へ、
文字に残したかった感謝の言葉。
「いつもポジティブなエナジーを与えてくれてありがとう」。そう書かれた伽羅の手紙は実直で温かい人柄があふれる筆致が印象的。
幼少からインターナショナルスクールで学び、 中学校から留学したUTAと内田伽羅兄妹。現在、伽羅はパリで暮らし大学院に在学中だ。12歳で入学したロンドンの学校では、授業中に万年筆を使ってノートを取ることが推奨されていたという。「インクが切れると校内のショップでインクを補充して。モンブランを愛用していた先生もいらっしゃいました」。そんな彼女に今回マイスターシュテュックの書き心地について聞いたところ、「適度な重さがあって、紙の上を滑るような気持ちよさがありますね。ペンを走らせる音も心地よくて。キャップのリングやペン先にも繊細な彫りが施されていてとても美しい。こういうクラシックな筆記具を自然に使いこなせる大人になりたいですね」と返ってきた。
幼い頃から離れて生活していたふたりだが、今年パリにいる伽羅のアパルトマンをUTAが訪ね、1ヵ月間滞在した。そんな思い出深い期間を振り返って手紙を綴った。
Dear UTA,
元気にしていますか?
ようやくパリでのひとり暮らしや大学院生活にも慣れてきて、 休みの日はマルシェや美術館などに出かけて楽しんでいます。
この前のファッションウィーク中、UTAがうちに泊まっていたのが遠い昔のようだね。中学時代から互いに別の国で暮らしてきたから、兄妹そろってパリで過ごした時間は、とても貴重に思う。ちょっとした和食を作ったり、美味しいビストロへ出かけたりして、いろいろと語り合いながら、変わらないなぁと感じたのは、聞き上手で優しいUTAの人柄です。
いつもポジティブなエナジーを与えてくれてありがとう。 これからも安らぐ存在でいてくださいね。
Love always, Kyara
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「家族の手紙は、この世にひとつしかない宝もの」
家族以外にも、大切な友人にバースデーカードを贈ったり、手書きで日記をつける習慣もあるのだそう。「友だちの誕生日にはカードを選び、相手を思い浮かべながらメッセージを書きます。SNSのテキストは間違えてもすぐに消せるけれど、手書きのカードは机に座ってじっくり書く必要がある。そのプロセスも好きなんです」
祖母・樹木希林の手紙で忘れられない思い出がある。「祖母が亡くなる少し前のことです。病床で声の出なくなった祖母は当時筆談をしていたそうですが、私の誕生日が近くなったので、母が頼んだのでしょう。A4の紙にメッセージを書いてくれて、留学中だったニューヨークに送ってくれたんです。ところがちょうど誕生日の前日に祖母は亡くなり、私はお葬式に出席するために日本へ。祖母の手紙を見たのは戻ってからでした。『誕生日おめでとう。いつもの伽羅のままでいてね』と書かれてありました。この世に一枚しかない祖母からの手紙は本当に特別なものです」
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兄から妹へ、
温かさと想いをインクに込めて。
漢字を書くのが不慣れで......と照れながらも丁寧に文字をしたためてくれたUTA。「僕は12歳から海外に留学していたので、日本語で手紙を書く機会が少なかったんですが、今回久しぶりに手書きしたのは新鮮でした。万年筆で妹の名前を書くと、ひと文字ひと文字に重みと温かみを感じますね」
父と祖母が命名した「伽羅」という字はインド原産のお香から取ったが、字画の多い漢字を書くのは集中力を要する。「携帯やパソコンでテキストを打ち込むのと違って、手書きには相手との深い繋がりを感じます」。妹への手紙には、パリで共に過ごした穏やかな日々が綴られている。
Kyaraへ
心のこもったメッセージをありがとう。ちょっと照れるね。
普段、直筆で書く機会って少ないけれど、なんだか温かみを感じて良いですね。
たしかに、パリでの二人の時間は特別でした。想像以上に大人になっている伽羅に感心したよ。こちらは本格的に演技のトレーニングに向き合っています。 難しいけれど、日々発見です。
伽羅も、自分らしく進める道をゆっくりと見つけてください。では また冬に。
UTA
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「その人らしさが表れるのが、万年筆の魅力だと思う」
兄妹で過ごしたパリでの時間を振り返って、「お互い違う場所で暮らしていたので、最初は違和感があるかなと心配していたんですが、やっぱり家族ですね。自然と打ち解けることができ、幼い頃と変わらない心地いい時間が過ごせました」と話すUTA。「大人になったからこそ話せることもあって。将来のこと、恋愛のことなど深い話もできた。どこにいてもどれだけ時間が経っても会えば落ち着く。改めて家族のありがたみを実感しました」
毎年、贈り合っている家族へのカードには、文字をアートのようにデザインして書くという。「文字の線そのものが遊んでいるような、動きのある文字を書きます。万年筆は力加減によってインクの量が変わって、薄くなったり太くなったり、いろいろなバリエーションを出せるのがおもしろい。コントロールできる良さがあるけれど、意識しないほうが遊びが生まれると思うんです」
そんなUTAの独創的な文字を気に入っていた祖母。「小さい頃、祖母の誕生日に家族全員で大きな和紙にメッセージを書いた時に、アートっぽい文字を書いたんです。祖母はそれを掛け軸に表装してくれて、いまでも実家に飾ってあります」
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家族の思い出はメッセージカードに。
別々な土地で暮らすことの多い内田家だが、家族の記念日にはメッセージを寄せ書きして贈る習慣があるという。「それぞれの誕生日や両親の結婚記念日になると、1枚のカードに全員がメッセージを書くのは我が家の伝統です。ふだんはSNSやビデオ電話などでコミュニケーションを取っていますが、手書きのカードは特別です。遠く海を越えてカードが届いた時はうれしかったですね」
エッセイストとして活躍する内田也哉子を母親に持つふたりは、手書きで原稿を書くその姿が印象に残っているという。「物心ついた時から母親の机にはいつもモンブランの製品がありました。キャップの先にデザインされた白いエンブレムは見慣れていたので、親近感があります」と伽羅。「書く」ことを通じて家族の思い出を共有するUTAと伽羅の手紙には、多くを語らずとも深い家族の絆にあふれている。
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パリシックなスタイルは赤いバッグが決め手。
ロンドン、ニューヨークを経て今年からパリの大学院で学生生活を送っている伽羅。パリでは古着屋巡りが好きで、最近ヴィンテージのレザーバッグを購入したばかり。祖母の形見であるレザーのショルダーバッグも、傷んだストラップを付け替えて大切に使っている。「出かける場所や用途によって合わせるバッグも変えるので、洋服をコーディネートする時は、まずバッグから組み立てます」。この日合わせたモンブランのソフト ミニバッグはアクセサリー感覚で使いたいと言う。
「パリの人の着こなしは色遊びが上手。明るいコーラルのバッグはクロスボディで身に着けると、シックな色合いの服に映えます。万年筆ホルダーがチャームみたいで可愛いですね。携帯電話やリップ、鍵などがコンパクトに収まるので、夜はこれひとつで出かけられそうです」
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使うほどに愛着が湧くレザーバッグ。
「レザーは長年使っているとだんだん味が出てくる。一緒に成長してくれる素材だと思います」と話すUTAは大のレザー好き。バッグやローファー、レザージャケットなど何年も愛用しているアイテムが多いという。モデルという仕事柄、いろいろな国に出かけることが多いが、ショルダーバッグはその土地のイメージに合わせたものを選んでいる。「たとえばアメリカだったらポップな色のもの、ヨーロッパは歴史のある街並みに合わせたクリーンなものといった具合です。そこにいつものアクセサリーをプラスして自分らしさを出しています
モンブランのソフト ダブルバッグについては「シンプルでどんなスタイルにも合いますね。ダブルジッパーなのでスペースも十分ある。大きすぎず小さすぎずちょうどいいサイズ。経年変化とともに使い込めば、オリジナル感が増して愛着が湧きそうです」
1997年、東京都生まれ。モデル。中学時代にスイスへ留学。高校からはアメリカへ渡り、ディビジョンIIの大学にてバスケットボールチームに所属し、精力的に活動。2018 年にフランスのモデルエージェンシーサクセスと契約し、パリ・ファッションウィークにてランウェイデビュー。現在は東京を拠点にミラノ、ロンドン、ニューヨークでモデルとして活躍するかたわら、演技の勉強にも励んでいる。
内田伽羅
1999 年、東京都生まれ。12歳でイギリスへ留学し、高校卒業後に渡米。2022年、ニューヨーク大学人類学学士号を取得。24年からパリの大学院でグローバルコミュニケーションについて学んでいる。映画『奇跡』(11年)で第26回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞、第68 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品作品『あん』(15年)に出演。