シャネルの新アーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジーとは?
Fashion 2024.12.13
シャネルにビッグバンが到来した。6か月にわたる憶測の末、パリのカンボン通りにブティックを構えるメゾンブランドは新しいアーティスティック・ディレクターの名前を発表した。マチュー・ブレイジーだ。フランスとベルギーにルーツを持つデザイナー、マチュー・ブレイジーはボッテガ・ヴェネタを去り、伝説的なブランドのトップを務めたヴィルジニー・ヴィアールの後任に就任する。
マチュー・ブレイジーがボッテガ・ヴェネタを離れ、シャネルの新アーティスティック・ディレクターに就任。photography: Victor VIRGILE / Gamma-Rapho via Getty Images
ついにシャネルが新たなアーティスティック・ディレクターの名前を発表した。ボッテガ・ヴェネタの元アーティスティック・ディレクターであるマチュー・ブレイジーが、この業界で最も憧れられる役職を引き継ぐことになった。まさに「究極の夢」とも言えるポジションだ。今年6月、ヴィルジニー・ヴィアールが急遽シャネルを去ったことが大きな話題となり、その後任を巡ってモード界全体が注目していた。この6か月間、噂や憶測が飛び交い、ファッション界やラグジュアリーブランド業界をこれまでにないほど揺るがせていた。
最近数週間、マチュー・ブレイジーの名前が業界内で注目されていた。特に、11月15日に業界のバイブル「WWD」で「マチュー・ブレイジーがシャネルのアーティステック・ディレクター候補として浮上」と報じられ、噂が一気に強まった。また、マチュー・ブレイジーがシャネルの新しい公式ポートレートの撮影を受けているという話も流れ、ボッテガ・ヴェネタが次のコレクションのために新しいデザイナーを探し始めたとの情報もあった。さらに、ボッテガ・ヴェネタの新しいアートディレクターに、イギリスのデザイナー、ルイーズ・トロッター(これまでカルヴェンに在籍)が就任することが決定した。
新たな挑戦
40歳のフランスとベルギーにルーツを持つマチュー・ブレイジーがシャネルに大きな注目を浴びて登場した。ファッション業界ではすでに広く知られており、決して知名度の低いデザイナーではない。彼の名前はカンボン通りでも通じ、特にシャネルの歴史と今後の挑戦に対する期待を集めている。
ボッテガ・ヴェネタで2022-2023年秋冬コレクションを初めて発表した際、彼は大きな衝撃を与えた。前任者であるダニエル・リーがすでにブランドを上昇気流に乗せていたため、簡単なことではなかった。しかし、彼が初めて発表したコレクションは、その魅力的なシンプルさで注目を集め、瞬く間に新たなデザイナーとしての地位を確立した。レザーのタンクトップとジーンズを組み合わせ、そのシンプルさで驚きと魅力を生み出し、見る人に強烈な欲望を抱かせた。まさに圧巻だった。
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グラン・パレで開催されたシャネル2025年春夏コレクション。photography: Launchmetrics
ミラノのプリンス
エネルギー、動き、現代性、素材の洗練さ、そしてコンセプトと着やすさを結びつける才能。マチュー・ブレイジーがボッテガ・ヴェネタで発表したコレクションには、職人技と創造性が見事に融合し、特に同ブランドの象徴であるイントレチャートの革を活かしたデザインが光った。すぐにミラノ・ファッションウィークで最も注目されるショーとなり、彼の演出も大きな話題になった。特に、2025年春夏コレクションでは、動物がモチーフのチェア「サッコ」が飾られた楽しいシナリオが印象的で、セレブリティたちからも高い評価を受けた。ジェイコブ・エロルディやジュリアン・ムーアなど、彼のショーに足を運ぶ著名人がますます増えた。
シャネル2025年春夏コレクションより。photography: Launchmetrics
ユニークな経歴
ケイト・モスの大ファンだった元ティーンエイジャーが、今やシャネルのアーティスティック・ディレクターに就任した。彼は、90年代に自分の青春時代を彩ったファッション界の巨星、カール・ラガーフェルドの後を継ぐことになるとは、予想していただろうか? マチュー・ブレイジーは1984年、パリで生まれ育ったが、彼の芸術的アイデンティティはベルギーで築かれた。先コロンブス期の美術の専門家である父と歴史家の母を持つ彼は、経済学の高校卒業後、しばらくの間、美術史を学ぼうと考えていた。しかし最終的には、ブリュッセルの名門ファッションスクール「ラ・カンブル」に進学し、2006年に卒業した。卒業制作では、初めて宇宙に行ったフランス人女性、クローディ・エニュレに敬意を表したコレクションを発表した。 2007年、ラフ・シモンズは彼を自らのメンズ・プレタポルテブランドに採用した。2012年には、マルタン・マルジェラ・アルティザナルのチーフデザイナーに任命され、その後4年後、フィービー・ファイロ時代のセリーヌに加わった。 2016年から2019年にかけては、ニューヨークのカルバン・クラインでラフ・シモンズと再びタッグを組み、デザインディレクターとして活躍した。その後、冒険は突然終わりを迎えた。彼はロサンゼルスに渡り、当時ファッションコレクションを手がけていたアーティストのスターリング・ルビーをサポートすることになった。
パリの新たなキング
2020年、ケリンググループはマチュー・ブレイジーをボッテガ・ヴェネタのデザインチームに迎え、2021年11月には同ブランドのアーティスティック・ディレクターとしてその舵を握った。今や、ミラノの元プリンスはパリのファッション界で新たなキングとなった。その使命は、世界的に有名なフランスのラグジュアリーブランドであるシャネルの次なる章を築くことだ。マチュー・ブレイジーは2025年4月にシャネルに加わり、初めてのコレクションを発表予定。新たな時代が幕を開ける。
text: Marion Dupuis (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi