ディオールのオートクチュールコレクション、鏡の向こうの夢と現実。

Fashion 2025.02.07

250130-DIOR-HC-SS25-18.jpg
1月27日に発表されたディオールの2025年春夏オートクチュール。@Laura Sciacovelli

ディオールの2025年春夏オートクチュール コレクションがパリ7区ロダン美術館で発表された。いつものように美術館の庭に設けられた会場の外観を包むアート作品が、内部で待つインスタレーションとショーへの期待を高める仕掛けである。今回会場のアートインスレーションを託されたリティカ・マーチャント。彼女による9枚の絵画がカリシマ・スワリ、チャーナキヤ工房、チャーナキヤ 工芸学校の手仕事によって大型のテキスタイルパネルに見事に再構築されて会場内の壁を飾り、ショーの背景となったのだ。この独創的な集合作品は世界中の女性アーティストを支援するというマリア・グラツィア・キウリとディオールのコミットメントを反映したものである。ショーの開始を待つ間、来場者たちはテキスタイルの壮大な魅力に圧倒され、近づいて細かい針目の手仕事に感嘆し、パネルを背景にセルフィーを撮って......。

250130-DIOR-HC-SS25-5.jpg
インスタレーションのメーキング光景。右がリティカ・マーチャント。©Prarthna Singh  , artwork ©Rithika Merchant
250130-DIOR-HC-SS25-4.jpg
ロダン美術館の中庭に設けられたショー会場。©Adrien Dirand ©Rithika Merchant ©Chanakya School of Craft
250130-DIOR-HC-SS25-1.jpg
このインスタレーションはショーの後、1月28日から2月2日まで一般公開された。©Adrien Dirand ©Rithika Merchant ©Chanakya School of Craft
250130-DIOR-HC-SS25-01.png
会場でいったいいくつの目がショーを見守っていたのだろうか。リティカ・マーチャントの絵画をもとにテキスタルパネルが制作された。©Adrien Dirand ©Rithika Merchant ©Chanakya School of Craft
250130-DIOR-HC-SS25-17.jpg
フィナーレより。©Adrien Dirand

世代を超えた女性たちの物語が織りなすこの没入型の視覚的風景を背景に、コレクションが発表された。カラフルな風景とコントラストをなすように、モデルたちがまとうルックは黒、白、ベージュなどほぼ無色彩だ。コレクションのインスピレーション源となったのは、『不思議な国のアリス』。マリア・グラツィア・キウリが自身のインスタグラムで語るところによると、画家ドロテア・タニングのファンタジーと現実が混じり合う作品から常にインスパイアされているそうで、そう語りながらモーツァルト作曲のセレナーデのタイトルから題名をとったタニングの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク(小夜曲)』(1943年)を写真にあげていた。この作品は『不思議な国のアリス』からタニングが着想を得て描いたものである。複数の扉、巨大なひまわり、二人の少女......。「変容と成熟の課題を描写することで不思議な国のアリスに似た混乱した雰囲気を生み出すタニングならではの才能、そして彼女の謎めいた絵画に思いを馳せながら2025年春夏コレクションをスタートしました」と。

250130-DIOR-HC-SS25-6.jpg
ファーストルック。花やイバラを羽根とレザーで刺繍したジャケット。その下はウールクレープのヴェスト。スカートには羽根で花の刺繍が施されている。
250130-DIOR-HC-SS25-15.jpg
ラストルックはバタフライドレス。グログランのシガル・クリノリンの上にレースを埋め込んだチュールが重ねられている。

今回のコレクションはアリスが鏡の中を通り抜けて自由に別の世界と行き来するように、時間の秩序を超えてファッションの過去数世紀のクリエイションのテーマが盛り込まれたコレクションである。現在と複数の時代を思いのままに往来し、鏡の国での予測不可能な出会いが連続するといった様相を呈していた。発表されたのは68ルックで、18~19世紀を象徴するクリノリンがモダンで実用的なバージョンでサイズもさまざまに多数登場。竹を籠状に編んで、そこにあしらわれた花やレースなどの装飾にはメゾンのサヴォワールフェールが満開していた。白いレースで包まれたクリノリンのルックは、少女の無垢で儚い夢のよう。

250130-DIOR-HC-SS25-8.jpg
タンクトップボディとクリノリンの上にブロドリー・アングレーズの細長いストリップが揺れるロングスカートのコーディネート。
250130-DIOR-HC-SS25-11.jpg
女性が花に。グログランのクリノリンの上にグレージュ・シルクをドレープして花が描かれた。
250130-DIOR-HC-SS25-13.jpg
アネモネの花で装飾されたチュールのショートドレス。グログランの小さなクリノリンの上にオールドゴールドの組み格子が。

時代がさらに遡り、16世紀に流行った襞襟(フレーズ)がモデルの首を取り囲むルックもあれば、17世紀によく見られた肩の部分がふっくり膨らんだジゴ(羊のもも肉)・スリーブを思わせるバルーンスリーブも印象的だった。メゾンの歴史の中でも鏡の向こうへと。マリア・グラティアは1958年にイ ヴ・サン=ローランがディオールのために生み出した「トラペーズ」ラインからも、インスピレーションを 得ている。台形の見事なコートが素材を変えて何点か登場。それらのコーディネートはブルマーパンツだ。またムッシュー・ディオールが1952~53年のクチュールコレクションで発表した「ラ・シガール」がオリジナルのモアレ織りの生地で再解釈され、ショートスカートとフィッテッドのテイルコートの組み合わせというルックや、またクリノリン・ドレスとして登場。スカート部分がセミ(ラ・シガール)が広げる2枚の羽のごとく丸みを帯び、コントラストが映えるプロポーションを強調していた。もちろん1947年のファーストコレクションの不滅のルックであるバー・ジャケットも。

250130-DIOR-HC-SS25-9.jpg
ブラックシルクタフタのトラペーズドレス。
250130-DIOR-HC-SS25-10.jpg
チュールとレースのダブルブルマーとボディーの上に、メタリックなガーズを折りたたんだジャケットを羽織って。
250130-DIOR-HC-SS25-7.jpg
黒のモワレシルクのシガル・ジャケットとスカート。
250130-DIOR-HC-SS25-14.jpg
毛先にパールを刺繍した、ブロンズとマガモ色のメタルの糸のトロンプロイユ・ファーのコート。黒のレースのブルマーがコーディネートされている。非現実的で神秘的な輝きは、ドロテア・タニングが描く女性が着ていそうなコートを想起させる。

自由、ファンタジー、遊び心に満ちたこのコレクションでモデルたちの頭を飾ったのは、スティーヴン・ジョーンズによるパンキッシュなモヒカン・ヘッドドレスである。鏡を抜けてどの時代へとゆこうとも忘れてはならないのは反骨精神! とマリア・グラッツィアの強いメッセージを掲げているかのようだった。

250130-DIOR-HC-SS25-16.jpg
フィナーレより。儚い素材の淡い色のドレスのシリーズは、カラフルなインスタレ〜ションの中に消え入りそう。©Adrien Dirand

来場セレブリティもチェック!

JISOO(ジス):K-POPグループBLACKPINKのアイコン。ディオールのグローバル アンバサダーとしてファッションとビューティーともに活躍。
Anya TAYLOR-JOY(アニャ・テイラー=ジョイ):アメリカとイギリスの俳優、代表作の『エマ』、「クイーンズ・ギャンビット」を始め、さまざまな話題作に出演。
Jenna ORTEGA(ジェナ・オルテガ):アメリカの俳優、「ウェンズデー」で世界的な注目を集め、今年にもシーズン2や「ビートルジュース2」、「クララと太陽」など多くの作品に出演。
Alexandra DADDARIO(アレクサンドラ・ダダリオ):アメリカの俳優、「パーシー・ジャクソン」シリーズで人気に。最近では「メイフェア・ウィッチズ」シーズン2や映画「ダブルブックド」で話題に。
Deva CASSEL(ディーヴァー・カッセル):モデル兼俳優、2023年に映画『ザ・ビューティフル・サマー』でデビュー。昨年にはディオール ビューティーのキャンペーンにも出演。
Elizabeth DEBICKI(エリザベス・デビッキ):オーストラリアの俳優、Netflixシリーズ「ザ・クラウン」でダイアナ妃を演じ、クリティクス・チョイス賞、ゴールデングローブ賞、エミー賞などを受賞。
Beatrice BORROMEO CASIRAGHI(ベアトリーチェ・ボロメオ・カシラギ):モナコ公室の一員でありながら、ジャーナリスト、テレビパーソナリティ、モデル、映画監督など幅広く活躍。
Laetitia CASTA(レティシア・カスタ):フランスのモデル、女優、監督を務め、『Gainsbourg (Vie héroïque)』でセザール賞にもノミネート。
Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

2025年春夏トレンドレポート
中森じゅあん2025年年運
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリシティガイド
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • 広告掲載
  • お問い合わせ
  • よくある質問
  • ご利用規約
  • 個人の情報に関わる情報の取り扱いについて
  • ご利用環境
  • メンバーシップ
  • ご利用履歴情報の外部送信について
  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • Pen Studio
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CCC MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CCC Media House Co.,Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.