BLACKPINKのリサやヘイリー・ビーバーなど、セレブに「ラブブ」が大人気! 中国発祥のキャラクラー、その大流行の理由は?
Fashion 2025.09.08
現在、大人気のファッションアイテムといえばこれ。子ども時代をほうふつとさせるぬいぐるみやお守り、ジュエリーをバッグにじゃらじゃらとつける人が増殖中だ。その心理は?
ラブブって?
ちょっと不気味な、ウサギのようなキャラクターだ。尖った歯に大きな目、長い耳を持ち、TikTokでの投稿はすでに270万件以上とSNSで大ブレイク中。Z世代の間で特に人気が高く、セレブたちのバッグの上で見かけることも多くなった。デュア・リパ、ヘイリー・ビーバー、リアーナ、キム・カーダシアン、BLACKPINKのリサだけでなく、デビッド・ベッカムやポール・ポグバといったサッカー選手まで、エルメスやヴィトン、セリーヌのバッグにラブブを1体、あるいは複数体つけている。2015年に香港のアーティスト、カシン・ローンが作り出したキャラクターを、2019年に中国の玩具メーカー、ポップマートがフィギュアとして発売した。なぜいま、パリでもニューヨークでも、このちっぽけなぬいぐるみが大人気なのだろうか。
ファッションとライフスタイルのコンサルタントであるマリー・デュパンによれば、「近年、大人向けぬいぐるみ市場は文字通り爆発的な成長を遂げました。パリのデパート、ギャラリー・ラファイエットにオープンした『ジェリーキャット・パティスリ』ではお菓子型ぬいぐるみを売っていますが、ここが長蛇の列となる人気ぶりです。社会や政治に不安を覚える時代に、人々は無邪気な子ども時代を懐かしく思っているのです。キュートなもの、かわいいもの、ピンクやふわふわがあれば気分良く過ごせるという気持ちから、日本発祥の"カワイイ"文化が広がりました。そしてファッションやラグジュアリーの世界でも、無視できないほどポピュラーになったのです」
サプライズを演出
しかしながらラブブが世界的に人気になった理由はもうひとつある。それはサプライズを演出するという現代にマッチしたマーケティング手法を採用したことだ。購入者は買った箱から何が出てくるかわからない。このインスタ映えするサプライズ感がファンに支持されている。そして人気とともに値段もうなぎのぼり。定番モデルは20ユーロで飛ぶように売れ、ヴァンズとのコラボといったコレクターズアイテムは5,000ユーロ以上で争奪戦だ。ラブブを販売するポップマートが某カンファレンスで述べたところによると、純利益188%増、売上は前年比倍増し、2024年には15億ユーロ以上の売上高を達成したそうだ。ポップマートのCEO、ワン・ニンは、いまや中国でも有数の富豪となった。
ラグジュアリーブランドも参戦
ラグジュアリーブランドからもチャームがぞくぞく登場。photography: Raimonda Kulikauskiene/Getty Images
こうしてラブブは人気のファッションアイテムとなったが、イットバッグにぶら下がっているのはラブブだけではない。各社から出ているバッグ用のチャームやジュエリーはデザインとユーモアを競い合っている。クロエからはウサギの足やアライグマのしっぽ(もちろんフェイクファー)に加えて、ラフィアや真鍮製のチャーム。フェンディからは革の筆箱やメモ帳、ロエベからはハリネズミやカササギ、ブラックベリー、カモミールフラワー、エルメスからは馬、グッチからは犬、フェンディからは折り紙風の魚やふわふわしたクラゲ、そしてミュウミュウの花やポンポン、チェーン等々。マリー・デュパン曰く、「どのブランドからも出ています。顧客(とりわけ若い層)にとっては、香水やサングラス同様、比較的"手の届く"価格であることから、高級ブランドコレクションへの入門アイテムとなっているのです」
こうしてブランドのアトリエでは職人たちがせっせと型紙を作り、ハサミで裁ち、縫製している。高級グローブブランド「アニェル」の社長、ソフィー・グレゴワールも「昨年、初めて犬や猫の頭の形をしたバッグチャームを発売しました(最初はキーホルダーとして、その後は革のストラップつきで)」と言う。同社は自社ブランド製品の他、70年以上にわたり、ディオール、サンローラン、ルイ・ヴィトン、ロエベ、セリーヌ、バレンシアガ、ジャックムスなどの大手ブランドや、リアーナ、ビヨンセ、レディー・ガガといった人気スターのための手袋製造も手掛けてきた。
ソフィー・グレゴワールはチャームの人気ぶりを次のように語る。「あまりの売れ行きに生産を増やす羽目になり、名だたるクライアントに提供するモデルをどうするか検討した結果、アトリエの部分再編を余儀なくされました。革の切れ端を利用したチャームを作るのは精緻な職人技で、時間も労力も非常に要します。ものによっては40以上の工程を経て、最大7枚の革を重ねながら、驚くほど平らに仕上げる必要があるのです」
こうしたチャームはオートクチュールの名に相応しく、ラグジュアリーの世界を大衆化するのに役立つ。売上増にもつながる。近年の革小物市場は、順調とは言えない状況だ。確かに以前は、バッグを買うときに財布やカードケース、小切手ホルダーを一緒に揃えることが多かったし、母の日や誕生日、クリスマスの定番ギフトでもあった。だがキャッシュレス決済サービスが普及するにつれ、その存在意義が(やや)薄れかけてきている。その一方でこのチャーム人気は特定の製品やブランド、卓越した職人技に対する一時的なブームということだけでは説明がつかない。むしろこれは自己表現のひとつであり、バッグの外に広がった「私」領域という側面があることを理解すべきだろう。さまざまなキャラクターやジュエリー、チャーム付きチェーン、スカーフ、そして家の鍵やメガネまで、2025年の女性たちは人生のすべてをイットバッグにぶら下げ、自分のためだけの唯一無二のバッグを作り出す。それは自分の分身、自己表現手段でもある。マリー・デュパンの分析によれば「バッグを徹底的にパーソナライズする。それこそが現在のファッションにおける新しい自己表現です。自分がどういう人なのか、内面まで伝えることができるのです」
汎用性
また、そうした側面とは別に、この流行には身近な小物を取り替えなくても雰囲気を変えたいというニーズも満たす。つまり、シーズンごとに新しい小物を買わずとも、既存のバッグをチャームなどでカスタマイズすれば新鮮な印象を得られる。マリー・デュパンは「この傾向は他の小物にも見られます」と語る。「スニーカー(ソールや靴ひものカラー等)やスマホ(ケースやソニーエンジェルのフィギュア)、メガネ(おしゃれなチェーン等)、リュックサック(例えばフランスのブランド、カバイアではポーチがついてくる)、トランク(リモワではステッカー)等々。"パーソナライズ"の魅力について長らく語られてきたものの、なかなか人気を得ることができませんでした。それがようやく経済モデルを確立したのです。そこには汎用性が重視される昨今の傾向があります。かつては仕事着と外出着、週末の服は明確に分かれていました。いまでは基本ワードローブがあり、そこに曜日や時間帯によって小物で変化をつけるようになりました。たとえば黒いクロックスに少しラインストーンをつけてキラキラさせれば夜用にもなるという感じです」
このトレンドはまさにZ世代の態度に合致している。それは洋服は最小限に、なるべく消費せず、支出せず、しかしながらおしゃれに関して一切妥協しないという態度だ。
From madameFIGARO.fr
text: Clémence Pouget (madame.lefigaro.fr)