ROGER VIVIER パリに誕生した「メゾン ヴィヴィエ」の魅力を紐解く。
Fashion 2025.11.28
PROMOTION
ロジェ ヴィヴィエは、去る10月2日、パリのサンジェルマン・デ・プレの中心、ユニヴェルシテ通り98番地に、アトリエやサロンを兼ね備えた「メゾン ヴィヴィエ」をオープン。クリエイティブディレクターのゲラルド・フェローニへのインタビューとともに魅惑の場所を紐解く。

メゾン ヴィヴィエは、ブランドにとって新たな拠点であると同時に、創業者が暮らした左岸への回帰でもある。
「私たちが求めたのは単なる建物ではなく、生きた物語でした」とクリエイティブディレクターを務めるゲラルド・フェローニは語る。メゾン ヴィヴィエとして生まれ変わったこの邸宅は、1729年、王室建築家ジャック・ジレ・ド・ラ・フォンテーヌによって建てられたもので、約300年にわたる歴史を映し出す。貴族の邸宅として始まり、19世紀時にはブルジョワの住居へと変化。後にフランス政府に引き渡され、フランソワ・アヴィニヨンによって礼拝堂が加えられた。丁寧に修復されたこの建物は、現在、メゾンのアトリエ、アーカイブ、サロンを収容している。
「すべての空間は、思索と創造の両方を育むために設計されました。この新しいメゾンは、過去と現在がともに息づく、私たちのクリエイティブな命の鼓動です」とフェローニは続ける。伝統から現代のクリエイションへと導く序章はここから始まる。

18世紀のオテル・パルティキュリエ(邸宅)の美しさをいまに伝える外観。伝統と創造性が対話する"生きた物語空間"には、ロジェ ヴィヴィエの精神が息づいている。
---fadeinpager---
サロン・ド・レリタージュ
メゾン ヴィヴィエのメインエントランスを抜けた先には、ひときわ優雅な存在感を放つサロン・ド・レリタージュ(遺産のサロン)がある。ブランドアンバサダーでありミューズでもあるイネス・ド・ラ・フレサンジュがキュレーションを手がけたこのサロンでは、1950年代から90年代までのアイコニックな作品と著名なミューズたちの写真が展示され、ヴィヴィエの革新的なデザインの軌跡を辿ることができる。

美術館のような展示空間でメゾンを代表する作品やアーカイブ写真を展示しているサロン・ド・レリタージュ。ここでは多感覚的な体験を通して、ムッシュ・ヴィヴィエの先見的なデザインの世界が鮮やかに浮かび上がる。
そしてサロンの空間自体も見どころのひとつ。60〜70年代の家具、ザビエル・フェアルのスチール棚、ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェア、ヴァンサン・ダレのカーペット、ピエール・フレイのカーテンなどを配した美術館のようなインテリアは、ヴィヴィエの大胆なフォルムーーヴァーギュルヒールや彫刻的なバックルを持つ「ベル ヴィヴィエ」ーーを反映している。
クリエイティブディレクター ゲラルド・フェローニのオフィス
メゾン ヴィヴィエの中心にあるル・ストゥディオ・ド・クレアシオンは、オフィスとアトリエの間に浮かぶ空間。ここでは、クリエイティブディレクターのゲラルド・フェローニと彼のデザインチームが、未来のシルエットを想像し、描き、完成へと磨き上げている。
単なる仕事場以上の存在であるこのスタジオは、フェローニの無限のインスピレーション源によって形作られた"驚きの宝物箱"。スケッチやバックルの試作品、布切れといった、フェローニの手仕事の痕跡が、アイデアの宝庫となる書籍群やアーカイブシューズなどとともにスタジオを彩る。空間は彼の折衷的なパリの感性そのもの。鮮やかなピンクとグリーンの色調が、中国アールデコのラグ、アンティークのアームチェア、デュッチョ・マリア・ガンビによる彫刻的なデスクを囲む。緻密に構築された、彼の独創的な創造世界は、映画やパリらしさ、サヴォアフェールを、ラインや色彩、質感へと昇華させ、メゾンの現在のデザインを生み出しているのだ。

棚に並ぶアーカイブの靴箱は、ゲラルド・フェローニの初期の探究を示し、アーカイブシューズは記憶を守り続ける存在として、革新を生み出す源となるレガシーを静かに語りかける。
サロン・ド・レリタージュを進むと、右手奥にサロン・ヴィヴィエが現れる。クラシックなフランス式庭園に着想を得た秘密の裏庭に面し、少し奥まった場所にあるこのサロンは、芸術とインテリアデザインに対するムッシュ・ヴィヴィエの自由奔放で洗練された感性を映し出す、穏やかな安らぎに包まれた空間。
過去にムッシュ・ヴィヴィエのインテリアデザインは、彼のシューズと同じく、多くの批評家や美意識の高い人々を魅了した。モード誌が1961年に、ヴィヴィエがオルセー河岸通りに構えた新居を取り上げ、「18世紀の空間とどう暮らすか?」という有名な問いを投げかけた。その答えは、20世紀の彫刻や絵画、ミース・ファン・デル・ローエのチェアを加え、ヴィヴィエ流に調和させること。60年代、セシル・ビートンに「今日のパリにおいて、私が最も独創的で傑出したインテリアだと考えるものを創り上げる、彼の比類なきセンス」と言わしめ、確かな審美眼を持つ人々をも驚嘆させた独自のスタイルは、サロン・ヴィヴィエの随所にも息づいている。

世界中の人々を魅了してきたムッシュ・ヴィヴィエ。
---fadeinpager---
サロン・ヴィヴィエには19世紀前半にイギリスで流行したリージェンシー様式のチェアやルイ16世様式のスツールが配され、フィリップ・イキリーの彫刻的なアームチェア、アニェス・ドゥビゼの月面のようなコンソール、マルチェッロ・ピアチェンティーニのモダニストチェアと対話する。そこにピカソの版画作品やユベール・ド・ジバンシィが所有していた中国のキャビネットなどが、ヴィヴィエの折衷的でコスモポリタンな精神、すなわちエレガントで前衛的、そして遊び心に満ちた世界を映し出す。

あらゆる時代や様式のファニチャーやアート作品をミックスさせたサロン・ヴィヴィエの空間は、時代を超越するムッシュ・ヴィヴィエのエレガンスと遊び心を反映。
アーカイブ室を一般へ初公開

初めて一般公開されるアーカイブ室はファン必見。
一般への公開は初となるアーカイブ室には1,000点以上の作品、スケッチ、雑誌、写真が保存されており、博物館レベルの管理体制のもと、デザイナーの世界観が詰まっている。ソラヤ王女のために制作された1962年のプロトタイプ、53年のエリザベス女王の戴冠式の靴に関する資料、55年のディオールのサンダル、そして65年にイヴ・サンローランのモンドリアン・コレクションのために発表され、映画『昼顔』でカトリーヌ・ドヌーヴが履いた「ベル ヴィヴィエ」ーー。すべての作品がヴィヴィエの天賦の才と、過去と現在の対話を体現している。
---fadeinpager---
世界中のファッショニスタを惹きつけてきたロジェ ヴィヴィエのコレクションの中でも、不朽の名作といえば「ベル ヴィヴィエ」。この度のメゾン ヴィヴィエのオープンに合わせて発表された「ベル ヴィヴィエ 60」コレクションは、1965年に初めて制作されたこの靴の60周年を祝うもの。スクエアバックルによって再定義されたこのモデルは、ゲラルド・フェローニによって多様な素材で再解釈され、バッグやアクセサリーでも展開。伝統と革新の両方を讃える本コレクションは、「ベル ヴィヴィエ」が時代を超えたアイコンであることを再確認するものだ。

スクエアバックルによって再定義されたベル ヴィヴィエ誕生60周年を祝うコレクション「ベル ヴィヴィエ 60」。
「『ベル ヴィヴィエ』の60周年は、構造と自由の両方をもたらしました。変わらないものを讃えながら、進化するものを再構築する招待状です。私は純粋さと表現の境界を探りながら、メゾンの最大の強みは"抑制"にあることを心に留めました。靴は過剰な装飾ではなく、そのシルエットの優雅さで際立つべきなのです」とフェローニは語る。
そして彼は日本のファンにもメッセージを贈ってくれた。「日本の皆さまへ。これらのクリエイションは、靴を単なるアクセサリーではなく、詩的で精緻で表情豊かな"パートナー"として捉える方々のためのものです。ひとつひとつのピースには、クラフツマンシップの心、驚きの自由、そして歴史を軽やかに受け継ぐ精神が込められています。すべてのカーブ、バックル、光のきらめきに、メゾンの本質を感じていただければ幸いです」
ゲラルド・フェローニ
クリエイティブディレクター

イタリア・トスカーナ州出身のゲラルド・フェローニは、2018年にロジェ ヴィヴィエのクリエイティブディレクターに就任。靴職人の家系で育ち、もともと建築家を目指していたが、父親の勧めもあり周囲の自然界を描く才能を靴に応用する道を選んだ。家族の靴工房で経験を積んだ後、世界有数のファッションハウスで研鑽を積み、現職就任前はパリの複数のラグジュアリーメゾンで靴・革製品・アクセサリーのデザインを統括。インテリアデザインの研究やアンティークジュエリーの収集、オペラ歌唱などにも情熱をかけており、これは創設者ロジェ・ヴィヴィエとも共通する。
text: Natsuko Kadokura





