シャネルのクリエイションを継承する、ヴィルジニー・ヴィアールの素顔。

Fashion 2019.02.22

カール・ラガーフェルドの死去を受け、シャネルの新たなクリエイティブディレクターに就任したヴィルジニー・ヴィアール。彼女は長らく、ラガーフェルドの右腕だった。ロック、ロマンティック・ヴィンテージ、過激なアンチ・ブリング・ブリング……。そんな直感力のある女性が、シャネルのクリエイションの舵を取ることになった。その素顔を紹介しよう。

※この記事は2011年12月26日に仏「マダムフィガロ」誌に掲載されたものをアップデート

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昨年10月に開催された、2019年春夏パリ・コレクションのショーより。グランパレにビーチを出現させたショーで、カール・ラガーフェルドの隣に立つのがヴィルジニー・ヴィアール。© CHANEL

少し前から、ラガーフェルドに寄り添って、ショーのフィナーレで挨拶するようになったシックなブルネット美人。ヴィルジニー・ヴィアールは1997年からシャネルのファッション クリエイション スタジオのディレクターを務めているが、ラガーフェルドとの最初のコラボレーションは1987年に遡る。

「カールは私の人生で最大の出会いです」と、彼女は2011年に「マダム・フィガロ」誌に語っている。「初めて会った時、すぐに心が通じ合うのを感じました」。シャネルが年8回発表するコレクションのために、師のビジョンを形にする仕事。それを彼女は実に巧みに成し遂げていった。ラガーフェルド自身が彼女についてこう言っているのだ。「彼女は私の右腕であり、左腕。いまでは理解し合うために言葉さえいらない。同じ瞬間に、同じことを感じているから」

ファッション クリエイション スタジオのディレクターとして、ヴィアールはカールのすべてを知っている。ときにアイデアが稲妻よりも早く閃き、容易についていけないことも多い。そんな天才の頭の中で織り成されるものを、誰よりもよく理解している女性がヴィアールだ。

彼女の具体的な任務とは、刺繍職人からプルミエール・ダトリエに至るチームの全体が、ラガーフェルドのビジョンを完璧に形にできるようにすることである。だが、それだけではない。カンボン通りの廊下を歩き、ショーのバックステージを訪れれば、モデル選びから舞台に出る前の最後のリタッチまで、あらゆる場にヴィアールの姿がある。ツル科の植物のようにスリムで長身、16歳の息子を持つ母親は神出鬼没だ。

「私はとにかく、カールのそばで働くことに絶大な喜びを感じているの。クチュールが好き。モデルたち、ファッションショーの熱狂、コレクションのテンポ、狂気的なリズムが好き。毎日、カンボン通り29番地に来る道すがら、仕事に行きたい理由が最低3000は見つかるわ。その第一は、仕事をしてカールを喜ばせること」。

ヴィアールが口下手なのだと思ってはいけない。なにしろ、彼女の率直な物言いこそがラガーフェルドを惹きつけているのだから。「言うべきことがあるときは、はっきり言うわ!」と語るヴィアールの素顔に、19の質問で迫る。

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あなたのモードの定義とは?

今日、何もかもが歪んでいます。長く続くはずのものがトレンドを追いかけ、波のように砕け散るコレクションの連続には憂鬱になります。私は継続するモードが好き。時に刻み込まれるモードが好きです。服は結局のところ、流行ではないのです。

スタイルの定義とは?

自分に何も禁じないこと。何でも試してみて、カットや素材が自分に合うものを採用します。何もお揃いにはしません。いわゆる「ストロング」なアイテムで遊びます。服は怖くない。ロマンティック・ヴィンテージ(レースのワンピースと70年代のコンビネゾン)とロックなエスプリ(スリムジーンズとブーツ)の間で揺れています。

フェミニニティの定義とは?

フェミニニティに対して、服はあまり影響を与えません。フェミニニティはむしろ態度や姿勢に表れる。それはエレガンスと優しさのミックス、繊細で微かな状態。少しばかり香水のイメージに似ています。

グラマーの定義とは?

この言葉にはあまり何も感じません。スパンコールのついたディスコ風のルックやブリング・ブリングな態度を思い浮かべます。

必ず身近に置いているもの

ものに執着はしないタイプ。けれど、カールがプレゼントしてくれたジュエリーはよく身に着けています。

ワードローブでお気に入りのアイテムは?

モチーフの刺繍を施した防水布のシャネル・スーツ、デヴィッド・ボウイ風の白いフランネルの裾広がりのパンタロン。これもシャネルです。

最大の悪趣味

センスの問題かどうかはわかりませんが、決してミュールは履きません!

あなたの定番

ヴィンテージショップや、2週間前に行ったパティ・スミスのコンサートで買ったような、プリントのTシャツ。黒かグレーのスリムジーンズは、ステラ・マッカートニーのものが多い。ショートブーツはいっぱい持っていて、留めずに開けたまま履いています。

ハイヒールのない人生は…

全然大丈夫。ヒールは滅多に履きません。私は大柄だし、目立つのが嫌い。フラットシューズは悪目立ちしないでエキセントリックなアイテムを試すのに便利です。

あなたのアイコンは?

別々の理由から、数名。カリーヌ・ロワトフェルドは、彼女の体つきとモードへの視点が好き。カロリーヌ・ドゥ・モナコは彼女の姿勢や物腰、その自然な優雅さが好きです。そして女優としてはマギー・チェン。彼女の映画の選び方は素晴らしい。彼女の装いの大胆さもいいですね。

お気に入りの店

ショッピングは大嫌い。解決策はボン・マルシェ。何でもあるし、落ち着いて迅速に買い物ができます。いつもマルタン・マルジェラ(現メゾン マルジェラ)、ステラ マッカートニー、バレンシアガ、クロエに立ち寄ります。

最近買ったもの

カルティエの時計「ベニュワール」。70年代のヴィンテージモデルで、サントノレ通りの骨董屋さんで見つけました。ジュエリーは買わないけれど、この時計は私に合っている。眺めていても飽きません。

完璧なドレス

チュニック丈の黒いドレス。長袖でミニ丈。ベルトはあってもなくても。

好きなクリエイター

もちろん、一番にカール。ステラ・マッカートニー、ニコラ・ジェスキエール、マルタン・マルジェラ。

誘惑するための装い

シンプルに徹して! 黒いジーンズ、黒いTシャツに、小物を加えてアレンジ。これ見よがしなものは絶対に避け、真新しいものもNG! 特別な機会のために何かを買うという考え方は大嫌い。

隠している秘密

黒のスリムジーンズを何度も染め直していること。大好きなアイテムが古びて来た時に、喝を入れるいい方法。ダイロンの染色キットも持っています。

代々伝わるもの

モードはいつも私の中に流れていました。祖父は絹織物業者、母や叔母たちはファッションプレート(昔の洋服店が顧客のために用意したカタログ)から抜け出たようでした。家族が集まると、サンローラン好きのひとりを除いて、みんなソニア・リキエルに身を包んでいた。いまでもこの頃の美しいアイテムをいくつか持っています。イギリスのクリエイター、ジーン・ミューアの素晴らしいドレスもそのひとつ。

モードの最上の思い出

シャネルのメティエダールに捧げられた最初のショー。オートクチュールのサロンで行いました。ルー・リードの「Satellite of Love」の曲でモデルが歩いた。夢のようでした。

お気に入りのバッグ

大抵いつも同じバッグを持っています。シャネルのバッグは私にとってちょうどいい。黒の2.55か白いクラシック。ボーイ・シャネルもいい出来だと思います。

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texte:Peggy Frey, Leïla Smara (madame.lefigaro.fr)

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