キコ コスタディノフのウィメンズが本格始動。
Fashion 2019.04.26
セントラル・セント・マーチンズ在学中からステューシーとコラボレートし話題を集めたキコ・コスタディノフ。卒業後の2016年にブランドを立ち上げてからは、アシックス、マッキントッシュ、カンペールとタッグを組み、破竹の勢いの中、19年春夏よりウィメンズが本格スタート。
そこでディレクターに任命されたのが、双子の姉妹ディアナ・ファニングとローラ・ファニングである。ディアナはキコの大学時代の同級生であり、ガールフレンドだ。公私ともに信頼できるチームで、新たなステージへ突入したブランドが目指すものとは? ドーバーストリートマーケット ギンザでのポップアップのために来日した3人に話を聞いた。
左からローラ・ファニング、キコ・コスタディノフ、ディアナ・ファニング。
ーー19年春夏で初となるウィメンズコレクションでは、どんな女性像を理想としたのでしょうか?
ディアナ・ファニング(以下ディアナ):力強く、フェミニンな人を描くことにした。SFやサイボーグのような非現実的なものに惹かれるので、その要素を加えている。たとえば、映画『バーバレラ』でジェーン・フォンダが纏っていたパコ ラバンヌの衣装もヒントのひとつ。スパンコールやチェーンの装飾があしらわれたタイトなボディスーツから着想を得て、異素材をかけ合わせるというアイデアを再解釈したわ。
あとは、ローラのアイデアで昔ながらの女性らしさを象徴するギャザリングの技法を、新鮮に取り入れた。ネックやスリーブだけでなく、バストやウエスト部分にも施しボディラインを強調することで、よりモダンになったわね。
ローラ・ファニング(以下ローラ):あと、ディアナは普遍的なニットを、伝統的なスタイルではなく、現代的なシルエットや色の配合で表現している。グレーやベージュに鮮やかな色をかけ合わせて、決まりきったカラーパレットからの脱却を試みたわ。私たちは、コレクションを通して女性らしさについて再定義し、議論のきっかけになるようなものを作りたいと思っているの。
斬新なカラーの組み合わせも、彼女たちの手にかかればモードな印象に。
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ーーディアナはセントラル・セント・マーチンズでニットを専攻していたのですよね?
ディアナ:5年間ニットの勉強をしたんだけど、その前は編み物すらできなかった(笑)。専門学校のようにやり方を教えてくれるわけではないから、最初の1、2年はかなり苦労したわ。
ーーメンズについても、常に革新的なアイデアで服作りをしていますよね。
キコ・コスタディノフ(以下キコ):いつも自分たちを奮い立たせてクリエイションをするようにしているんだ。今回ふたりにディレクションを依頼したのは、同じブランドでもメンズとウィメンズで指揮を執る人が違ってもいいと思ったから。
メゾンを見てみると、ディオールのキム・ジョーンズとマリア・グラツィア・キウリでまったく違うクリエイションをしているよね。ひとつのブランドでも異なった方向性とアティチュードを持っていてもいいんだ。実験的で難しい部分ではあるけど、彼女たちのデザイン力は本物だし、僕とは違った感受性やフェミニニティを感じることができると思うよ。
ラメ入りの柔らかなニットを芸術的なカラーパレットでドレスに。
ーーどうして春夏のタイミングでウィメンズを独立して始めようと思ったのでしょうか?
キコ:ディアナとローラとは長い付き合いで、卒業してから一緒に仕事することをずっと話し合ってきた。僕自身ブランドを発展させたいと思っていたし、メンズが3シーズン目を迎えて世界観がほどよく浸透してきたからこそ、ウィメンズで別の方向性を持ち込むには最適なタイミングだった。早い段階でふたりの専門性を持ち寄って、ウィメンズを本格始動することは3人にとってベストだったんだよ。
ディアナ:実は学校を卒業してすぐ、ローラとブランドを始めようとしていた。けど、キコと話すうちに、アイデアや自分の好きなものをアトリエに持ち寄ってデザインを進めるのはいいチャレンジだと気づいたのよ。
ーー方向性やアティチュードは違いますが、ブランド共通のコンセプトは話し合ったのでしょうか?
キコ:メンズ、ウィメンズそれぞれの方向性に重なる部分はあるにしても、どのように作り上げていくかということを話し合うことはないんだ。コンセプトを練ったりマーケティングを考えるより、アトリエでデザインすることに重きを置いているよ。
ディアナ:そうね。一緒に働いていくなかで、それぞれのセンスを持ち寄ってコラージュしている感じ。
仲睦まじく話すローラ(左)とディアナ(右)。
ーーでは、アシックスとのコラボレーションについて教えてください。メンズだけでなく、ウィメンズでも発表していますね。
ディアナ:キコがメンズでデザインしていたので、ブランドから提案をもらったわ。
ローラ:スニーカーは作ってみたかったから、とてもいい機会だった。
ーー今後、バッグなどの小物やアクセサリー類も増やしていくのでしょうか?
ディアナ:将来的にはあるかもしれない。ただ、サンプル製作にかなり時間がかかるから、すぐに手を広げるのは難しい状況ではあるわ。
ーーブランドを広めるためのプランはありますか?
キコ:身近な友達とか、本当に好きな人が袖を通してくれて、それを見た人が純粋に「着たい!」と思ってムーブメントになっていったらいいよね。だから、広告とかにはあまり興味がないんだ。
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photos : YUTO KUDO, texte : AYANA TAKEUCHI