クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノが、オートクチュールに相当する「アーティザナル」で提起するアイデアや技術。それがメンズとウィメンズの「デフィレ」＝プレタポルテをはじめ、すべてのラインに濾過されるという厳格なピラミッド形のデザインプロセスによって、メゾン マルジェラのクリエイティビティと価値観を描き出している。

各ショーの発表と同時に発信される、メゾンのポッドキャストシリーズ、‘THE MEMORY OF... With John Galliano’。「…の記憶」と題したジョン・ガリアーノ自らの言葉と、2019年春夏「アーティザナル」Co-edコレクションおよび2019年秋冬「デフィレ」Co-edコレクションのファッションストーリーから、コレクションの背景にある思考やメゾンのハウスコードを読み解く。

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2019年春夏「アーティザナル」Co-ed コレクション

色彩も手法も過剰に、現代のカオスを表現。

過度な飽和状態を経て、本質を見つめ直すことでやってくる新しい時代。デジタルに覆い尽くされた現代における「デカダンス」という概念を、ドレスメイキングを通じて表現した。

すべてMaison Margiela ‘Artisanal’ designed by John Galliano

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デカダンスを象徴する、クラインブルー・プードル。

人工的なクラインブルーによって染められたプードルは、ジョン・ガリアーノがデカダンスの象徴のひとつだと話すモチーフ。ニードル・パンチやフィルクッペといった、オートクチュールの伝統的手法を駆使して。

すべてMaison Margiela ‘Artisanal’ designed by John Galliano

「デカダン・カッティング」で、解体され、生まれ変わる。

解体された服が身体の上で移動し、アイテムに新たな解釈をもたらす「デカダン・カッティング」が取り入れられ、クロンビーコートがショーツに。ひとつの服の中に、もうひとつの異なる服の記憶を吹き込んだ。

すべてMaison Margiela ‘Artisanal’ designed by John Galliano

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究極のミニマルを追求した、黒いコンビネゾン。

究極に要素を削ぎ落としたコンビネゾンは、デカダンスの退廃的なムードを象徴するピース。ジョン・ガリアーノがワンジーと呼ぶコンビネゾンは、真のジェンダーフリュイドを具現化する服のひとつでもある。

すべてMaison Margiela ‘Artisanal’ designed by John Galliano

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2019年秋冬「デフィレ」Co-ed コレクション

「アーティザナル」の思想を反映する、ワードローブ。

2019年春夏「アーティザナル」Co-edコレクションでクリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノが提起した「デカダンス」という概念は、2019年秋冬「デフィレ」Co-edコレクションで別の表現によって、プレタポルテのピースに反映された。

左：ニット￥187,000、ブーツ￥192,500、ボディスーツ、ショーツ（ともに参考商品）　右：ドレス￥213,400、シャツ83,600、ニット￥94,600、シューズ（参考商品）/以上Maison Margiela（メゾン マルジェラ トウキョウ）　ソックス/スタイリスト私物

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よりリアルに、過剰さを描くピンク・フラミンゴ。

ブラックツイルドレスのバックには、ジャカードで描かれるピンク・フラミンゴのシークエンスモチーフが。「アーティザナル」から着想を得て、よりリアルにデジタル時代の過剰さを描く。

左：ドレス￥323,400、ブーツ￥192,500　右：コート￥581,900、パンツ￥94,600、ネックレス￥112,200、ブーツ￥192,500、ボディスーツ（参考商品）/以上Maison Margiela（メゾン マルジェラ トウキョウ）

*ポッドキャスト‘THE MEMORY OF... With John Galliano’の全文は、フィガロジャポン12月号に掲載。オリジナルの音声は下記URLより。
podcast : https://podcasts.apple.com
spotify : https://open.spotify.com

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クリエイション構造の理解を深める、ジョン・ガリアーノとの対話。

 

――「デカダンス」を別の言葉で表すなら？
What kind of words would be suitable to replace “Décadence”?

「衰退、腐敗、あるいは退化。
クリエイティブなプロセスの中で見えてきたのは、
デカダンスは周期的に訪れるものだということ。
言い換えるなら、デカダンスはときおり不可抗力のように巡ってきては、
積もり積もった余剰を削ぎ落としていく。」
“You could say ‘decline’, you could say ‘decay’, you could ‘reduction’. What we detected through our creative process is that décadence is a cyclical process. In other words, it comes around every so often, almost like an inevitable force, stripping down the excess accumulated by time.”

――2019年春夏の「アーティザナル」コレクションで、クラインブルー・プードルがデカダンスの象徴として登場しています。でも、なぜプードルなのでしょうか？ また、なぜクラインブルーなのでしょうか。
“Klein Blue Poodle” was the symbol of décadence in Spring Summer 2019 ‘Artisanal’ collection. But why poodle? Why Klein blue?

「プードルは、クラインブルーと同じように、
自然のものを超現実なレベルまで加工し、
変容させるという発想を体現している。
プードル犬は人が交配させ、
ポンポンみたいな形にトリミングした。
いっぽう、画家のイヴ・クラインは色をミックスし、
彼が理想とするブルーを完成させた。
そんなふたつが溶け合ったのがクラインブルー・プードルで、
人工物は、バーチャルリアリティと呼べるだろう。」
“Like Klein blue, poodles embody the idea of something natural that’s been altered to a surreal degree. Poodles were bred by man and coiffed into pompoms. Yves Klein mixed and perfected his ideal blue colour. Together, morphed into a Klein blue poodle, the proposition ends up expressing something artificial, which you might call virtual reality.”

――対して、2019 秋冬の「デフィレ」コレクションでは、ピンク・フラミンゴがクラインブルー・プードルの役割を担っていました。このアイデアはどこからきたものなのでしょうか。ポッドキャストで言及していたように、マリー・アントワネットが庭園でピンクのフラミンゴを飼っていた、というエピソードが着想源なのでしょうか。
Referring to Autumn Winter 2019 Défilé collection,“Pink Flamingo” was playing the role of ”Klein Blue Poodle” instead. Where did this idea come from? Were you inspired from the story of Marie Antoinette who kept pink flamingos in her garden?

「一分の隙もなく着飾ることを理想としていた世界に、
人間の解放を求める波が迫った時代。
マリー・アントワネットはその象徴だ。
彼女はプチ・トリアノンで、
自分の理想どおりの現実世界を人工的に創った。
デジタルの概念が生まれる何世紀も前に、
バーチャルリアリティの感覚を先取りしていたんだ。
そして、フラミンゴ――華やかなピンク色の生き物――を愛したのも、
同じ感覚の表れだったのかもしれない」
“Marie Antoinette personified an age where the ideal for preened perfection was confronted with waves of human liberation. At the Petit Trianon, she created her ideal, man made version of the real world: a sense of virtual reality centuries before the idea of digital had ever been conceived. Her love of flamingos – this glamorous pink creature – was an expression of that same sentiment.”