シモーン・ロシャ、クリエイションの着想源を求めて。
Fashion 2020.02.20
アイルランドをテーマに掲げた、2020春夏コレクションを紐解く。
シモーン・ロシャ|シモーン・ロシャ デザイナー
昨年9月に発表された、シモーン・ロシャの2020年春夏コレクション。ショー会場となったのは、北ロンドンのアレクサンドラ・パレスにある、19世紀のヴィクトリア朝時代の趣をいまに残す古い劇場だ。ブルーのプリントが施されたオーガンジーのレイヤードルックから始まり、床までたっぷりとあるフラワープリントのドレスがラストを飾ったコレクション。ドラマティックでロマンティックな世界観はそのまま、シモーンならではのクチュール色がより濃く打ち出されていた。
「今シーズンのコレクションのテーマはアイルランド。特に、ランボーイズ(Wren Boys)に注目しました。アイルランドでは、クリスマスの翌日の聖ステファノの日(通称ミソサザイの日)に行われる伝統行事で、少年たちが扮するのがランボーイズ。彼らはミソサザイ(英語でWren)という野鳥を捕まえに行き、衣装に身を包んで町中の家々を小遣い求めてまわり、歌って踊り音楽を奏でるのです。その麦わらの衣装と、彼らが訪れただろう家のインテリア、たとえばデルフト焼の陶器やはがれた壁紙、色あせたカーペットなどが、インスピレーション源となりました」
故郷アイルランドに思いを馳せた今コレクション。ランボーイズの麦わらの衣装や一般的な家庭のインテリアから着想したというだけあり、いつも以上に手の込んだ生地や素材が使われていた。
「ブランドにおいて、生地のデザイン製作は常に最重要であり、プリントや刺繍を施すなど、多くの生地を自分たちで開発してきました。今回のコレクションでは、素材感のコントラストがキーとなっています。デリケートなサテンのラッフルに編んだラフィアを合わせたり、チャンキーなプラットフォームシューズに複雑な刺繍を施したり。そして、ハンドメイドのクロシェ編みやラフィアのピースもいままでより多用しました。技術や手仕事というものを、以前よりさらに前面に打ち出した形です」
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表現したいのは、フェミニニティとエンパワーメント。
デビュー以降、一貫した美意識を感じるコレクションを発信し続けているシモーン・ロシャ。ただのロマンティックできれいな服ではない、芯の強さ、タフネスを彷彿させるのはなぜなのだろうか?
「コレクションに込めたのは、フェミニニティとエンパワーメントという強いメッセージ。とはいえ、遊び心も盛り込みながら。モダンな方法でフェミニニティを表現することは、女性のための服を作る女性デザイナーだからできることだと思っています。それが独特の美意識につながっているのかもしれません。デザインするうえで一番大切にしていることは、着たい、そして永遠にとっておきたいと思ってもらえる服を作ることです。サステナビリティという視点からも、一度で使い捨てられるコレクションではなく、私たちは一生着られるものをデザインしているのです」
フェミニニティとエンパワーメントが核にあるシモーンにとってファッションとは?
「ファッションは私にとって、クリエイティビティでありコラボレーションです」
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Simone Rocha シモーン・ロシャ
1986年、アイルランド・ダブリン生まれ。2008年にダブリンのアート&デザイン国立大学を卒業後、セントラル・セント・マーチンズ・カレッジを2010年に卒業。同年9月、ファッションイーストにて初のロンドンファッションウィークデビューを果たす。
text:SHIHO AMANO, photos:JACOB LILLIS(BACKSTAGE)